梅の実が膨らみを増し、そろそろ収穫する季節になる。香りのよい梅の実を漬け込んだ梅酒は清涼感があり、疲労回復によいとされる成分も含んでおり、これからの季節に楽しみたい一品。さわやかな味わいの梅酒を専門家に試飲してもらい、評価した。
1位 布袋福梅河内ワイン(大阪府羽曳野市) 1190ポイント
まるで"飲む梅"
濃厚な味わいのにごり梅酒。大阪のワインメーカーが、自社のブドウ畑で収穫したブドウなどから造ったブランデーをベースにし、南高梅を1年半漬け込んだ。
完熟した南高梅のピューレを加え、梅のジャムを隠し味とし、うまみを余さず引き出している。とろりとした飲み応えのある仕上がりで、上品な甘さが口いっぱいに広がる。大きめの氷を使ってロックで飲むのがお薦め。
存在感があるのでデザート感覚でチョコレートと合わせても楽しめる。「エビス福梅」や「大黒福梅」など七福神を題材とした他の商品も味わってみたい。「自然の香りがそのまま。まるで"飲む梅"」(畔田隆弘さん)、「かき氷やヨーグルトにかけてもおいしい」(北仁子さん)(1)1575円(2)梅酒屋 06・6925・8240、umeshuya.com 2位 梅香 百年梅酒 すっぱい完熟にごり仕立て明利酒類(水戸市) 1120ポイント
すっぱさ際立つ
梅酒造りを始めて約50年。この極めて酸っぱい梅酒は、「百年梅酒」など人気の商品を手がける水戸市の酒造会社が「挑戦的な試み」として昨年発売したもの。ホワイトリカーに肉厚な白加賀梅を長期間漬け込みフランス産ブランデーと蜂蜜を加えた。
完熟梅の果汁や果肉をたっぷり加え、梅のすっぱさと華やかな香りを際立たせている。すっきりしており、甘めのお酒が苦手な人も楽しめるほか、中華料理など脂の濃い料理との相性もよい。「梅の爽やかな酸味が初夏にぴったり。イワシなど煮魚の隠し味にも使える」(藤原浩さん)、「飲んだ瞬間に口の中に爽やかさが広がる。夏のサラダやそうめんに合う」(川名祥史さん)、「夏本番にロックで飲みたい」(野崎貴之さん)(1)1650円(2)明利酒類 029・247・6111、www.meirishurui.com 3位 とろりんうめこ菊の里酒造(栃木県大田原市) 980ポイント
ソーダ割りがオツ
酒蔵の裏側に広がる自社の梅林などで栽培した白加賀梅と、契約農家が作る南高梅を日本酒に漬け込み、仕上げにジャムのように梅肉を凝縮した梅のペーストを加えた。酸味を生かすため砂糖は控えめ。よく冷やしてロックにするかソーダ割りにし、豆腐や中華料理と合わせたい。
「とろりとした優しい質感で、のどごしが良好。ソーダ割りで飲みたい」(岡田良一さん)、「極限まで甘みを抑えており、すっきり爽やか。刺し身やカルパッチョと合わせたい」(明星智洋さん)(1)1470円(2)増田屋本店 0282・82・0161、www.rakuten.co.jp/mashidayahonten/ 4位 エクセレントチョーヤ梅酒(大阪府羽曳野市) 860ポイント
高級さを醸す正統派
同社が国内で展開する約20ブランドの商品のなかで、2番目に高級な梅酒。和歌山県産の南高梅のなかでも直径3.7センチメートル以上の大粒を厳選して使った。フランス産ブランデーに漬けており、アルコール度数も14%と高め。コクとまろやかな味わいに涼しげな梅の風味が香る。ロックか、冷やしてストレートで飲むのがお薦めだが、ソーダで割っても梅の味わいをしっかり楽しめる。「これぞ梅酒という正統派。ロックにして冷ややっこと味わいたい」(小松めぐみさん)(1)1576円(2)チョーヤ梅酒 www.choya.jp 5位 かれんプラム市島酒造(新潟県新発田市) 710ポイント
爽やかなリンゴのような香り
新潟県の指定文化財「市島邸」の梅林から社員が1粒ずつ手で摘んで収穫した梅を使用。純米酒「かれんsilk(シルク)」に3カ月間漬け込んだ。軽くあっさりしておりアルコール度数も8%と低め。白身魚のカルパッチョや冷ややっこなどと相性がよいほか、食後のデザート酒にもなる。「爽やかなリンゴのような香り。アルコール度数が低めなので、世代を問わず楽しめる。梅の良さを素直に引き出している」(藤原さん)、「果実そのものを味わっているような優しい味わい」(野崎さん)(1)1260円(2)市島酒造 www.ichishima.jp 6位 子宝 大吟醸梅酒にごり楯の川酒造(山形県酒田市) 700ポイント
デザート酒にも向く
大吟醸酒をベースに果汁を配合した同社のフルーツリキュール「子宝」シリーズの一つ。大粒で肉厚の南高梅を漬け込み、引き上げた梅をすりつぶしてペースト状にしたものを加えた。ペーストは全体量の30%を占める。食前酒や食後のデザート酒にも向く。「日本酒大吟醸の香りを楽しめる数少ないにごり梅酒。ぜいたくな時間にゆっくりと味わいたい」(関敏之さん)(1)3150円(2)酒蔵直送ドットコム 0234・52・3252、sakaguratyokusou.com 7位 あらごし梅酒梅乃宿酒造(奈良県葛城市) 620ポイント
西吉野の複数種の梅漬け込む
奈良県の西吉野地方で採れる梅の実を使う。品種も完熟度も違う複数の種類の梅を5~12カ月間漬け込んだ日本酒ベースの梅酒。完熟の実だけを厳選し、果肉をすりつぶして加えた。ロックやソーダ割りにしてかんきつ類の果汁を加えるほか、冬は温めてもおいしい。「ベースのお酒の質の良さを感じる。焼いた豚のバラ肉など食事のお供に向く」(梶田泉さん)(1)1470円(2)梅乃屋本舗 0120・713・550、www.umenoya-honpo.com/ 8位 八海山の原酒で仕込んだ梅酒八海山(新潟県南魚沼市) 615ポイント
白身の刺し身と合う
新潟県を代表する日本酒、八海山の原酒に国産の梅を漬け込んだ。よく冷やしてストレートで飲むとよりおいしく飲める。梅の自然な酸味と八海山ならではすっきりした味わいのバランスがよく、食事にも合わせやすい。「キレがよいのでタイやカレイなど白身の刺し身と合う」(岡田さん)(1)1365円(2)八海山お客様相談室 025・775・3866 9位 うぐいすとまり 鶯とろ山口酒造場(福岡県久留米市) 550ポイント
ロックがおすすめ
焼酎に大分県大山村で採れた酸味の強い青梅を漬け込み、氷砂糖を重ねて2年間熟成させた。梅のピューレも加えており、青梅の新鮮な香りととろりとした飲み口が心地よい。ロックがおすすめ。「疲れた夜に飲むと癒やされる心地よさ」(梶田さん)(1)1554円(2)山口酒造場 0942・78・2008、www.niwanouguisu.com 10位 紀州のゆず梅酒中野BC(和歌山県海南市) 450ポイント
アイスとも相性よし
和歌山県産の南高梅を漬け込んだ梅酒に四国産のユズ果汁をたっぷり加えた。ユズとあいまったさわやかな香りが印象的だ。「イタリアの果実酒、リモンチェッロのように、ストレートや、バニラアイスにかけても良い」(小松さん)(1)892円(2)中野BC 0120・050・609、shop.nakano-group.co.jp/ 表の見方 数字は選者の評価を点数化。(1)720ミリリットル入り1本の価格(送料別、5、10位は500ミリリットル入り)(2)取り寄せ・問い合わせ先の電話番号やホームページ(頭のhttp://は省略。記事中のリンクは掲載時のものです)
味わいスッキリ、甘さ控えめ
最近の人気は「にごり系」と呼ばれるもので、梅酒に漬け込んだ梅の果肉をすりおろして入れたり、裏ごしした梅のピューレを加えたりしている。グラスに注ぐととろりと重く、果肉の繊維などでにごってみえる。
口当たりは柔らかいが、味わいはすっきりしているものが多い。「梅酒は甘い」という印象を持たれがちだが、梅独特の酸味を生かし、甘さを控えたものが増えた。
梅酒は家庭などではホワイトリカーに梅を漬けて造る。市販のものは日本酒やブランデーなども使い、風味が豊かだ。アルコール度数は8~15%程度で、ビールよりは高いが、冷やしてソーダで割ると、口当たりが軽くなる。
日本洋酒酒造組合(東京都中央区)によると、酒類全体の消費量は減少傾向にあるものの、梅酒の国内出荷量は昨年は10年前の約2倍と増えている。アルコールではあるが、「疲労回復に効果があるクエン酸や、抗酸化作用のあるポリフェノールを多く含む」(医師で梅酒研究会会長の明星智洋さん)。甘さも控えめにし、健康志向の高い人にも受けている。
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調査の方法 全国の百貨店や量販店、もしくは取り寄せて購入できる梅酒の中から売れ筋や専門家の推薦などで23商品を候補に選出。実際に専門家に試飲して選んでもらった。選者は次の通り(敬称略、五十音順)。
岡田良一(日本料理店「分とく山」板前)▽梶田泉(シニアワインアドバイザー)▽川名祥史(「梅酒ダイニング明星」マイロプス代表)▽北仁子(ザ・リッツ・カールトン東京シニアソムリエ)▽畔田隆弘(三越伊勢丹銀座店食品営業部マネジャー)▽小松めぐみ(フードライター)▽関敏之(梅酒マイスター)▽野崎貴之(フードアナリスト)▽藤原浩(日本フードアナリスト協会常任理事)▽明星智洋(「梅酒研究会」会長兼医師)