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投資初心者でもプロの技 FX自動売買に盲点は

個人投資家が手掛ける外国為替証拠金(FX)取引で、コンピューターのプログラムに従って自動的に通貨を売買する自動売買(システムトレード)が広がっている。FX業者が投資やプログラミングの知識の乏しい初心者を対象にしたサービスを相次いで導入。手軽にプロの技術を活用できるようになっている。利点や注意点をまとめた。

売買判断はソフト任せ

システムトレードは「シストレ」の通称で呼ばれる。一定のルールを組み込んだ売買戦略プログラムに従い、コンピューターシステムが自動的に取引する。かつては投資のプロが自分で戦略を考えてプログラミングし、自分たちで使うのが一般的だった。

最近はプロのディーラーやファンドマネジャーが考案したプログラムが次々とパッケージ商品になり、専門的な投資戦略やプログラミング技術を持たない個人でも、手軽に利用できるようになっている。

代表例がイスラエルのトレーデンシー社が開発したソフトである「ミラートレーダー」だ。戦略プログラムを世界中のディーラーなどから募り、テストに合格したものを運用成績順に表示。好きな戦術を選べる。

取引の要領はサッカーチームを率いるのと似ている。サッカーの監督は11人の選手を選び試合に臨む。調子が悪い選手がいれば、控えの選手と交代させてチームの活性化を目指す。

ミラートレーダー上でも、個人は戦略プログラムをいくつか同時に選んで取引する。戦略ごとに投資する金額を変えることも可能だ。成績が思わしくない戦略を別の戦略に入れ替えることもできる。投資家自らがいわば「選手」として自分の判断で売買に参加する裁量取引とは大きく違う。

「初心者向き」と評価

最近、人気なのが相場の流れに乗る「順張り」投資が特徴の「サードブレインFX」という戦略プログラムだ。精緻な計算をもとに売買のタイミングを計り、とくに「オーストラリアドル・円」の通貨ペアへの投資で好成績が続く。スイスの資産管理会社、サードブレインSAが作成した。

ミラートレーダーを導入している日本のFX業者は9社。2011年11月に提供を始めたインヴァスト証券では、今年4月半ばに口座数が4万口座を突破した。ひまわり証券のように、自社開発のソフトを導入している業者もある。

プログラミングの知識があれば自分で戦略を作成できるソフトもある。たとえば「MT4」はFXトレード・フィナンシャルやアヴァトレード・ジャパンなどの業者が導入している。プログラミングを代行する企業もある。リクイディティインターナショナルはMT4上で使う戦略の作成をオーダーメードで請け負う。鈴木博達代表は「シストレは個人投資家層のすそ野を広げる」と意気込む。

シストレの利点は投資の腕前に自信がない個人にとって手軽にプロの技術を使えることだ。「初心者向き」との評価も多い。取引コストは自分自身の判断による裁量取引と同じように、売値と買値の差(スプレッド)が実質的な手数料としてかかるのが一般的だ。

裁量取引だと、含み損を抱えても将来の値上がり期待を捨てきれず取引をやめられない人も多い。自動取引なら感情は入らず、心理的な負担は軽い。損失が一定額で収まることも多く、金銭的な負担も少ない。

急変動で損失も

一方、導入に慎重なFX業者も少なくない。「経済や為替相場を研究しながら投資する楽しさが味わえない」とみるためだ。システムに任せっきりでは相場や経済の知識が身につかず、投資の腕前はいつまでたっても上がらない。

好調な運用成績が続いたとしても、プログラムも予想できない相場の急変動が起きた場合、損失を被ることもないとは言えない。もちろん損失の責任は投資家にある。自動売買だからといって放置せず、定期的に運用状況をチェックする心構えは最低限必要だ。

FX業界では「シストレで個人の取引を手助けするのは投資助言業に該当するのでは」との声も出てきた。金融庁は「金融商品取引法に照らし、それぞれの商品設計を個別に判断する」(市場課)として明確な判断を示していない。仮に登録が必要となれば、撤退するFX業者が相次ぐ可能性もある。行政の動きも気に留めておいたほうがいいかもしれない。

(宮崎真)

<まめ知識>個人けん引、売買高急増
 米金融調査会社アイテ・グループの予測によると、世界の外国為替市場の売買高に占めるシステムトレードの割合は2014年に21%に達する。7%程度だった10年から急伸する。同社アナリストのハビエル・パズ氏は「最近の盛り上がりは個人投資家の貢献が大きい」と話す。
 日本では外為証拠金(FX)取引の中堅業者や外資、ベンチャーがシストレに積極的。大手が通常の取引で実質的な手数料引き下げ競争を繰り広げるなかで独自の戦略を模索している。
 トレーデンシー社の代理店としてミラートレーダーを日本のFX業者に販売するインディ・パの本郷喜千代表は、日本でのミラートレーダーの利用者数は近く10万人に達すると見込む。

[日本経済新聞朝刊2013年5月15日付]

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