ルール&マナー マナーの小道(8) どこに置く? バンカーレーキ
バンカーレーキの置き方には、バンカーの外に置く「外置き」と、レーキの櫛(くし)の部分だけバンカー内に入れておく「内置き」がある。どちらにするかはコースによってマチマチだ。キャディーに聞けば良いが、セルフプレーではそうもいかない。前の人が置いた通りに置くしかないが、前もってマスター室で確認しておくとよいだろう。

実質的にゴルフルールの世界基準を決めているロイヤル・アンド・エンシェント・ゴルフ・クラブ・オブ・セント・アンドリュース(R&A)も、日本ゴルフ協会(JGA)も、実は「外置き」を勧めている。
もともとバンカーは、英国のリンクスに代表されるような窪(くぼ)地やタコツボ形状になっている。ただでさえ狭いバンカー内のレーキは、邪魔物以外の何物でもない。結果として「外置き」にするのが昔からの習わしだった。
ところが、ゴルフ場設計の鬼才、ピート・ダイの登場とともに「幅50ヤード、長さ100ヤード」のような「とてつもない大きさのバンカー」が米国に出現してきた。この大きさのバンカーに打ち込むと、プレーヤーが外からレーキを持ってボールにたどり着くのが一仕事、ということに相成る。
それなら最初からバンカー内にレーキを置いた方が合理的、ということで「内置き」が登場した。いわば巨大バンカーに限っての"特例措置"だったはず。しかし、これがいつの間にか通常のガードバンカーでも適用されることに。これでややこしくなった。

「内置き」が好ましくない最大の理由は、運・不運を左右する要素を増やす危険があるからだ。バンカー中にレーキを置くと、レーキの重さで砂面がくぼむ。レーキは「動かせる障害物」だから取り除けるが、ボールがそのくぼみに入っていても直せない。「レーキがなければ、良いライから打てたのに」と思う瞬間だ。
「外置き」がもたらす不幸の例として「ボールがレーキに当たってバンカーに入る」というケースがある。ただ、その様子は打ったプレーヤーにも見えていることが多く、"現場"に行く前に覚悟しておける。
これに対して「内置き」ではボールに行ってみて、初めてくぼみとご対面ということになる。まるで不意打ちを食らったような気分になるだろう。
レーキの置き方で一番大切なのは、柄の方向をボールが飛んでくる方向と同じにすること。飛球線を横切る格好だと、ボールがぶつかりやすいからだ。

次に、グリーンの花道に置かないことだ。せっかくグリーンに乗りかけたボールの邪魔にならないように、という気配りだ。あなたのボールがレーキに当たったら、「あんなところに置くからだ!」といい気持ちはしないだろう。ほかのプレーヤーも同じだ。
最後にバンカーの"土手"の高い側に置かないこと。レーキが高い側に置いてあると、それを手にしたプレーヤーはついそこからバンカーに入ってしまいがち。高いところから入ると、土手を崩すなどコースを傷めかねない。第6回で説明したように、バンカーにも"入り口"があって、高い側から入るのは禁物なのだ。
レーキを低い側に置いておけば、自然とそこから入り、出るときも自分の足跡を消しながら、低い側から出るようになる。

レーキは1本あれば十分なので、一カ所にまとめて置かないように。入りやすいバンカーには、2本のレーキが割り当てられていることもある。出る時に周りを見渡して、適当な間隔でレーキを置こう。
バンカーから一度で出せず、何度もたたくと、アタマの中が真っ白になる。そんなときこそ、こうした気配りをしてみてはいかがだろう。違うところに意識を向けることで、気持ちを切り替える効果がある。
もちろん、一発でバンカーから脱出するのがベストだが。