航空機の設計を効率化、JAXAが新システム完成
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8日、開発してきた航空機設計の新システムを完成させたと発表した。実験設備から得られるデータとパソコン上のシミュレーション解析を、遠隔地からでもほぼリアルタイムで閲覧できる。短期間で効率よく開発でき、精度も高まるという。今後生産が本格化する国産ジェット旅客機『MRJ』の改良にも貢献するとみている。

開発したのは「デジタル/アナログ・ハイブリッド風洞(DAHWIN)」。JAXAのスーパーコンピューターを使った流体数値シミュレーション(CFD=Computational Fluid Dynamics)から得られるデータと、航空機の小型模型に風をあてる風洞実験設備からのデータを組み合わせて表示する。機体にかかる空気の圧力の高さを色分けして、数値シミュレーションと実験設備のデータを並べて見られ、設計や実験担当者が迅速に確認できる。

菱友システムズなどがシステム開発を担当した。開発費は5年間で6億円。数値シミュレーションで予測した数値をもとに、風洞実験の計画を立てやすくなる。小型の航空機模型を支えるための支持装置や実験設備の壁などの影響を排除でき、より高精度での開発につながる。開発を統括したJAXA航空本部・風洞技術開発センターの渡辺センター長は「風洞実験での期間を約2~3割、精度は2倍に向上できる」と説明する。

これまでは実験とシミュレーションの数値のフォーマットが別々だったほか、数値シミュレーションの結果を受けた後で風洞実験設備での準備が始まるというように手間と期間がかかっていた。機体の設計者や実験担当者が同じデータを確認しながら、連携して作業することができる。
将来は国産ジェット旅客機「MRJ」や国内初の実験用ジェット機「飛翔(ひしょう)」で収集した実際のデータなども活用、地上の風洞実験や数値シミュレーションを組み合わせ、航空機が実際に空を飛んでいる時の状態を再現できるようにしていくことも目指す。
(電子報道部 杉原梓)