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スコアアップ工房 ゴルフクラブ、買い替えのベストタイミングは

クラブデザイナー 喜多和生

4月11日(日本時間12日)、ゴルフの祭典マスターズ・トーナメントが開幕します。毎年、マスターズの中継を見ると、「いよいよゴルフシーズン到来」という気持ちになります。そして「新しいシーズンは新しいクラブで」と、春の陽気に誘われて店頭を訪れるゴルファーも多いはずです。

伸び悩む売り上げ補う様々な仕掛け

みなさんはどんなとき、クラブを買い替えますか。「新製品が出たから」「古臭くなってきたから」「有名プロが使っているから」などという理由が多いのではないでしょうか。

新しいクラブにすれば、スコアがよくなるのではないかという期待を持ってショップに足を運ぶ人もいるでしょう。

ゴルフクラブの売り上げはここ数年、伸び悩んでいます。グラファイトシャフトやチタンヘッドのような画期的な素材開発がなく、技術面でも飛躍的な材料が乏しいことも一因です。

これを補うため、メーカー各社はいろいろなコンセプトや仕掛けを打ち出しています。確かに新しい理論や新しいデザインのモデルを見ると、使いたくなるのはゴルファーの常です。その意味ではメーカーの販売戦略にうまく乗せられているという見方もできます。

ボールを打つのは自分自身

ここで問題なのは、ズバリ「自分がない」という点です。メーカーの宣伝であれ、シングルさんのアドバイスであれ、他人からの情報に振り回されています。

クラブでボールを打つのは自分自身です。すべての原点はここです。自分自身にクラブを呼び込まなければいけないのに、自分からクラブにすり寄ってしまう。

別の言い方をすれば「自分が主人で、クラブを選ぶ」のか、「クラブが主人で、自分をクラブに合わせる」のか。この違いはとても大きいのです。

確かに「気分転換」のためにクラブを替えるのも、ひとつの考え方です。契約先が変わり、セットごと替えるプロがいますが、これも気分転換の意味があります。

自分のゴルフに明確な目標を

しかし、そこで欠かせないのが、自分のクラブを知り、自分のゴルフをどう変えたいのかというはっきりとした目標があるかどうかという点です。

例えば「球筋をどう変えたいのか」「どのようなミスを減らしたいのか」などへの処方せんを書くためには、今使っているクラブのスペック(仕様)について分からなければ、どういうクラブを選べばよいのか分かりません。まして、そのゴルフを実現するためのシャフト選びなどおぼつきません。

だからこそ、自分のクラブのスペックを計測して、自分のゴルフの望む方向を決めることが、自分に合ったクラブと出合うためには必要だ、と何度も強調しているわけです。

そうでないと、自分の求める方向と違う性格のクラブを購入して、さらに悩みを深めてしまうケースがないとも限りません。

調子が悪いときは違いが分からない

では、クラブを買い替えるベストタイミングはいつでしょうか。ズバリ「ゴルフの調子がよいとき」です。

なぜなら調子のよいときにはクラブの違いが分かりますが、調子が悪いときには何を打っても違いがわからないからです。

ある程度経験のある人ならお分かりでしょう。調子のよいときは心技体いずれもが充実しています。次に目指すべき目標もはっきりしているので、どのようなクラブが必要なのかも感じられるからです。

ところが調子が悪いときに新しいクラブを手にすると、「飛距離が伸びた」「球筋が安定した」ような気分になります。俗に言われる「新車効果」です。

古いクラブに染みついていた悪いイメージがなくなるうえ、新しいクラブだと新鮮な気持ちで無欲で丁寧に扱うなど心理的な側面が大きいのです。

時間がたてば再び同じ症状が…

「これは飛ぶよ」と友人が言うクラブを打つと、「確かに飛ぶね」と思ったことがありませんか。それと似ています。

しかし、当初は「これで大丈夫」と思ったクラブでも、時間がたって慣れてくると、以前と同じような症状が出ることが多いのも事実です。アベレージゴルファーのほとんどは、こうした経験があるでしょう。

こうなると「自分はクラブの違いなんか分からないから、いつ買い替えても同じだよ」という声が聞こえてきそうです。

しかし、そんなことはありません。ゴルフの調子がよければ、自分が求めているクラブ、やさしいクラブは実際に打ってみれば分かります。

今使っているクラブを持参して

プロが常に求めているのは、一番やさしく打てるクラブです。技術レベルは違っても、アマチュアにも同じことが当てはまるのです。

買い替えるときに必ずやっていただきたいのが、今使っているクラブをショップに持っていくことです。クラブを見れば、使い手がどんな癖があるのか、何が問題なのか、ほぼわかります。

それがわかれば、次のクラブが見えてきます。それを踏まえた上で、クラブ選びを手伝ってくれるショップに行くべきです。

ちょっと立ち寄っただけなのに「これならお客様にぴったりです」といったセールストークで品物を買わせようとするショップは避けるべきです。大枚をはたいて、今よりも合わないクラブを押し付けられかねません。

クラブ選び、手間を惜しまずに

夕方の駅でクラブとおぼしき袋を抱えて、いそいそと家路につくビジネスマンを見かけます。これが一番いけません。

気になるクラブがあったら、自分のクラブのスペックをきちんと計測したうえで、日を改めて出直した方がよいのです。確かに手間はかかりますが、「自分に合ったクラブ」に出合うためには、そのくらいの手間を惜しんではいけないと思います。

 きた・かずお 1966年ミズノに入社、クラフトマンとして中嶋常幸、鈴木規夫、岡本綾子らトッププロのクラブを手がけた。90年にゴルフクラブ工房の「ジョイメニィー」を設立。「クラブがスイングを創る」をテーマにプロ担当経験を生かし、アマチュア向けクラブも製作する。92年に製作したドライバーがクラフトマンモデルとしては世界で初めて、英セントアンドルーズゴルフクラブにあるR&A(ロイヤル&エンシェント)のゴルフミュージアムに展示されている。

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