視線の先は常に世界 J1仙台監督・手倉森誠(上) - 日本経済新聞
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視線の先は常に世界 J1仙台監督・手倉森誠(上)

2008年にJリーグの仙台の監督に就任した際、手倉森誠(45)は大勢の前で「5年以内にACL(アジア・チャンピオンズリーグ)に出る」と大見えを切った。当時の仙台は4年連続でJ2に定住するチーム。新人監督が掲げる公約としては相当むちゃだが、本人は大まじめだった。

大風呂敷広げ、5年で公約達成

「その頃はクラブもサポーターもとにかくJ1に上がりたい、ばっかりで。自分はベガルタをJ1昇格で満足するクラブにしたくなかった」

監督が広げた大風呂敷をチームは着実に畳んできた。1年目は3位に終わったが、2年目にJ2優勝と昇格を決め、3年目以降はJ1に定着。14位、4位、そして昨季は2位と順位を急激に上げてきた。

リーグ優勝こそ広島にさらわれたが、3位以内に与えられるACL出場権は得た。「優勝して出るつもりだった」と本人は笑うが、見事な公約達成だろう。

クラブワールドカップ(W杯)のアジア代表を決める、そのACLの戦いが26日に始まる。仙台の初戦の相手はタイのブリラムだ。1次リーグは韓国のFCソウル、中国の江蘇と同居する。

今季は精度高め、戦術に柔軟性も

Jリーグ開幕は3月2日だが、ACLに臨む仙台は始動も早め。鹿児島から延岡、宮崎と続いたキャンプはけが人は出たものの順調に消化できた。

堅守速攻を土台に監督就任5年目の昨季は高い位置からのプレスにショートカウンターという武器も身に付けた。今季はその精度をさらに高めた上で戦術に柔軟性を加味したいという。

「ボールを握る(保持する)、引いた相手をどう動かすかの2点。ボールに人の意識が集まるのなら、わざと集結させて(薄い部分を)崩す。それを選手が分かりだせばベガルタのサッカーの幅は広がる」

昨季、優勝争いを経験したチームに監督は手応えを感じているが、ACLと掛け持ちしながらJリーグの覇権を狙うには、人的にも資金的にも相当な厚みがいる。

いばらの道がチームの成長促す

地方のクラブにとって、いばらの道が予想されるが、手倉森はそれがさらなる成長を促すと歓迎する。

「レッズとか強豪といわれるクラブはそこを乗り越え強くなった。ベガルタも今年がそうなるためのスタートの年。サッカーは世界的なスポーツでJだけでいいと思った時点で成長は止まる。自分も常に世界を意識した指導者でありたい」

毎年深く関わってきたというチームのスローガン作り。今年は「Vision」に決めた。アジアに挑戦する節目の年に仙台というクラブにどんな未来を託すのか。自分も含めて、選手、サポーター、フロント、みんなで考えていこうという願いを込めて。

そのビジョンには東日本大震災からの復興のシンボルであり続けたいという思いも含まれる。「もうこれくらいでいいのでは」という空気が生まれつつある時期だからこそ、さらに力を注ぎたい部分だと。

「厚い壁、高い壁を打開し続ける姿勢を被災地に届けたい。復興の、東北のシンボルになるという意志をこの地に響かせたい」

(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊2月25日掲載〕

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