ファーガソン監督は怒鳴っても…体罰問題を考える
サッカージャーナリスト 原田公樹

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2013/2/20 7:00
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香川真司が所属するマンチェスター・ユナイテッド(マンU)のサー・アレックス・ファーガソン監督は、選手をひどく怒鳴り散らすことで知られる。日本ではよく「瞬間湯沸かし器」というが、これになぞらえて、英国ではファーガソン監督の激怒のことを「ファーギーズ・ヘアドライアー・トリートメント」と呼ぶ。だが決して、監督は選手に手を上げることはない。これはマンUに限ったことではなく、どこのクラブでも、ユースレベルでも、どんな競技でも同じだ。欧州のスポーツ界は、「体罰」とは無縁なのである。

欧州では体罰はほぼあり得ない

私はこれまで軽いゲンコツや軽く棒で尻をたたくといった程度の体罰なら、あってもいい、と考えていた。おそらく日本国内でもそう考える人はいたのではないか。私もこの取材を始めるまで、そういった緩やかな体罰の容認派だった。私自身、幼いときから何人かの指導者らから体罰を受けた経験があり、それによって多少、根性がついたかもしれない、と思っていたからだ。

ところが、大阪市立桜宮高校のバスケットボール部男子生徒が体罰を苦に自殺した事件をきっかけに、いま住んでいる英国スポーツ界や教育の現場ではどうなっているのか、取材を始めた。すると英国では、体罰はまず存在しないことが分かったのである。

英国ばかりではない。欧州各国でプロ、ユース、教育界を問わず、すべてのカテゴリーで選手や生徒、児童が指導者や教育者から体罰を受けることは、ほぼあり得ないという現実が見えてきた。

「ルーニーが体罰を受けたことがあれば大問題」

それなのに欧州の各スポーツ界では、プロ、アマ問わず超一流の選手が育っている。精神的にも肉体的にも強く、人としても尊敬を集めるアスリートたちが大勢いる。サッカーでいえば、マンUで香川のチームメートであるイングランド代表のFWウェイン・ルーニーや、オランダ代表のロビン・ファンペルシーも、おそらく一度も体罰は受けたことがないはずだ。

本人に確かめることができなかったから、断言はできないが、クラブ関係者や担当記者に聞くと、一様に日本の現状に驚き、「いまも昔も選手同士の喧嘩(けんか)はあるが、体罰はあり得ない」「もしルーニーがコーチから体罰を受けたことがあったなら大問題だ」「欧州のスポーツ界で体罰は聞いたことも、見たこともない」と話していた。

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