/

双子のライバル J1広島 森崎和幸・浩司(上)

いつもそばに自分とうり二つの存在がいた。サッカーボールを蹴り始めたときも、仲良く20歳以下(U-20)代表に選ばれたときも。2012年、広島が初めてリーグ優勝をつかんだ瞬間も、2人一緒にピッチで喜んだ。二卵性双生児。Jリーグ広島の森崎和幸・浩司(31)のような兄弟は、めったにいるものではない。

双子ならではの苦労も経験

同じ小・中学校、広島ユースを経て、00年に広島に同期で昇格。そこからともに広島一筋、今季も一緒に14年目を迎える。

小さいころ、片方が風邪を引けば、間もなくもう片方も風邪を引いた。深いところでつながっている2人。そう感じざるを得ない場面に周囲は出くわしている。

ただ兄、和幸は語る。「双子でなければ、しなかったであろう苦労もあった」

幼い2人の前に敵はいなかった。ともに技術とセンスが突出、攻撃好きだったから、2人を擁するチームは点を取りまくった。2人で勝つのが楽しくて仕方ない、無垢(むく)な時代。

ただ、2本のレールのように、まるきり平行のまま歩み続けることをプロの世界は許さない。微妙な違いが現れるのはユースに昇格したころ。兄がボランチ、弟は攻撃的MFと持ち場が分かれた。

比較されることから逃れられず

「ユース以降はどちらかが調子が良ければ、もう片方は良くないというときが多くて」と和幸。早々とトップチームで出場し始めた和幸に対し、ケガもあった弟は出遅れた。浩司が振り返る。「同じはずなのに、なぜ僕は駄目なのか……。悩みましたね」

利き足は違うものの身長はともに177センチ。そっくりな顔立ちなど遺伝的な肉体の特徴は似通っている。比較されることから逃れられないように思えた。近すぎる存在のライバル。相方を通じて自分を眺め、評価してしまう。その意識は折に触れて2人を苦しめた。

04年アテネ五輪。今度は弟が代表に選出され、兄は候補に名を連ねながら最終的に選に漏れた。

「初めて立場が逆転したというか。自分への悔しさも含め、親にも申し訳なくて」と和幸は回想する。同じではいられない現実のなかで、複雑な思いは2人とも同じだったかもしれない。

「自分と向き合わねば始まらぬ」

経験を重ねて成熟した今はともに自立してお互いを見つめることができる。「カズ(和幸)を意識しても意味がない。自分と向き合わないと始まらないとよく分かった。今はカズを一人の選手としてみられる」と浩司は語る。

「苦しみもあったから今があるといえる。苦しさがなければこう考えもしなかった。いい経験ができ、双子で良かった」

和幸も同じ心境にいる。「双子といってもやはり違う一人の人間なので。苦しみもしたけど、2人でJ1を優勝できたとき、2人で続けてきて良かったと心の底から思うことができた」

小さいころ、家では自然なのに、外では周囲の視線を感じるあまり「一緒に並ぶのは苦手だった」2人。「ヘンに意識しなくなったいまの方が仲が良い」と浩司も和幸も笑う。

違いを前提としても、違いと親近感は共存できる。ともに同じ考え方へたどり着いた2人は、やはり似たもの同士なのだろう。

=敬称略

〔日本経済新聞夕刊2月18日掲載〕

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン