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驚異の制球力…上原、レッドソックスで新たな挑戦

スポーツライター 杉浦大介

貴重な救援投手としてメジャーで着々とその地位を築いてきた上原浩治が、今季から名門レッドソックスの一員として新たなスタートを切る。再建途上にあるチームはやや戦力不足という見方も多いが、実はブルペンは粒ぞろい。ヤンキースやレイズなど強豪ぞろいのア・リーグ東地区で予想を覆して勝ち抜くために、上原はどんな貢献ができるか。そのために必要なことは何なのか。

昨年は防御率1.75の好成績

メジャー4年目だった昨季の上原はレンジャーズの一員として37戦に登板、36イニングを投げて防御率1.75、奪三振43、与四球はわずか3という好成績を残した。

右広背筋痛でシーズン途中、離脱を余儀なくされたものの、マウンドに立ちさえすれば素晴らしい活躍だったといってよい。

今オフには複数のメジャー球団が獲得に名乗りをあげたが、その中からレッドソックスを選んで1年425万ドルで合意した。比較的故障が多いことから、やや割安の感じもする金額だが、それでも一定の条件をクリアすれば2年目も自動更新されるオプション付きという悪くない契約である。

主に中継ぎという役割だけに注目度は決して高いとはいえないが、実は上原は日本人メジャーリーガーの中で有数の実績を残してきた1人である。

09年にオリオールズでメジャーデビューして以来、通算157試合に投げて5勝9敗14セーブ、防御率2.89。特にリリーフに転向した10年以降の実績は秀逸で、11年の後半こそレンジャーズに移籍してやや戸惑った感じもあるが、それでもすべてのシーズンで2点台の防御率を残してきた。

上原が成し遂げてきたこと

昨年12月にはセイバーメトリクスを駆使した分析で知られるウェブサイト「ベースボール・プロスペクタス」のサム・ミラー記者が、「上原が成し遂げてきたこと」と題したブログ記事を発表。

その中では、以下のように主に上原の驚異的なコントロールに関する様々なデータが紹介されている

(1)レンジャーズ時代の約1年半で66奪三振、4四球

(2)初球ストライクの後は通算132奪三振、6四球

(3)1、2球目もストライクだった際には通算106奪三振、1四球

実際に上原の制球力はメジャー史に残るレベルであり、オリオールズ時代の10年には7月16日を最後に、それからは1つの四球も出さずにシーズンを終了。翌年まで続く36試合連続無四球というメジャー歴代3位の記録を樹立している。

奪三振率も高い数値

同時に奪三振率も高く、昨季に残したK/BB(奪三振を四球で割った数字)14.33は、年間35イニング以上を投げた投手の中では98、99年にデニス・エカーズリーが残した数値に次ぐメジャー3位の記録だった。

近年は「日本人投手が力を出せるのはだいたい3年目まで」とささやかれるようになったが、上原の場合、4年目の昨季も好成績を残したのも特筆に値する。

こういった数字、実績を並べて行く限り、今オフにかなり多くのメジャー球団が獲得を望んだのも当然。この右腕に、もっと脚光が当たらないのが不思議なくらいだといってよいだろう。

そして、今季から所属するレッドソックスは、上原をはじめとするリリーフ投手たちの大きな貢献が必要となりそうなチームである。

新監督にファレル氏を迎える

ヤンキースとともにアメリカン・リーグ東地区に2強時代を築いたのも今は昔。10~11年と2年連続でプレーオフ進出を逃したレッドソックスは昨季、ボビー・バレンタイン監督を新指揮官に迎えたが、69勝93敗で地区最下位と散々な結果に終わった。

レッドソックスはシーズン後にバレンタイン氏を解雇し、人望の厚いジョン・ファレル監督をブルージェイズから引き抜いて、13年は新たなスタートを切る。

しかし、前途は必ずしも明るいとは言い難い。シェーン・ビクトリノ、ジョニー・ゴームス、デビッド・ロス、マイク・ナポリ、スティーブン・ドリューといった野手を新加入させたが、彼らはいずれも全盛期にいると言い難く、大きく戦力アップしたかどうかには疑問符が付く。

打線が相手チームを恐れさせるには、デービッド・オルティス、ダスティン・ペドロイア、ジャコビー・エルズベリーといった実績ある主軸の爆発が必要になってくるだろう。

そして何より先発ローテーションが不安定だ。昨季はいまひとつだったジョン・レスター、クレイ・バックホルツ、フェリックス・ドゥブロン、さらにはア・リーグでの実績に乏しい新加入のライアン・デンプスターがどこまでやれるか。

先発投手に大きな不安

ヤンキース、レイズに加え、大型補強を成し遂げたブルージェイズ、昨季15年ぶりにプレーオフ進出を果たしたオリオールズといった強豪が居並ぶア・リーグ東地区では依然として高レベルの争いが必至。そんな中で、現在のレッドソックスは決して楽観できる状態ではあるまい。

「オフシーズンの補強策は悪くないが、それでもバランスの取れたア・リーグ東地区では4位または最下位で終わるかもしれない。何より、先発ローテーションが2流であり、そういったチームは2流のシーズンを送るのが通例だ」

FOXスポーツのジョン・ポール・モロシ記者が記した今季のレッドソックスの展望に、いまのところ同意せずにいられないというのが正直なところだ。

救援陣は充実

ただ、そんなチーム内で明るい材料といえるのがブルペン陣である。

「ジョエル・ハンラハン、上原の獲得によって、ブルペンは近年最高の層の厚さを誇るに至った。ハンラハンはすでにクローザーに任命され、アンドリュー・ベイリーがセットアッパーを務めることになりそうだ。上原はア・リーグ東地区でクローザーを務めた実績もあり、K/BBはメジャー史上有数。そして田沢純一も昨季は44イニングを投げて防御率1.43と大活躍だった」

「プロビデンス・ジャーナル」紙のティム・ブリットン記者はそう記す。

確かにパイレーツで11年に40セーブ、昨年は36セーブをマークしたハンラハンと上原が加入したおかげで、もともと悪くなかったブルペンに2本の新たな芯が通った。

今季もブルペン陣に大きな比重?

ブリットン記者が挙げた4人以外にもアルフレド・アセベス、ダニエル・バード、クレイトン・モーテンセンといった右腕、クレイグ・ブレスロー、フランクリン・モラレス、アンドリュー・ミラーといった力のある左腕がそろう。

昨季のレッドソックスは先発の平均防御率5.19、ブルペンは同3.88と対照的な数字だったが、今年もその傾向は続くかもしれない。

特に強力打線を擁するヤンキース、オリオールズ、ブルージェイズといった地区内のライバルたちを相手に、強力ブルペンがどう立ち向かうかは最大のポイントといって良い。

そんなチームの中で、上原も存分に力を発揮することができるか。

ケガ無くシーズンを過ごせるか

昨季も得点数でメジャー3位、本塁打数で10位という記録が示す通り、レッドソックスの本拠地フェンウェイパークは打者有利で知られるスタジアム。被本塁打の多さが最大の難点である上原にとって、必ずしも最高の環境とはいえないかもしれない。

ただ、上原はこれまでオリオールズ、レンジャーズ時代にも打者優位と言われる球場で投げてきていて、新たな環境でリズムを崩すことはないはずだ。

だとすれば、最大の懸念材料はやはりコンディション、ケガの多さということになるのだろう。

前記通り、メジャー入り後の上原は実は素晴らしい成績を残しているが、一方で毎年のようにケガをしていることも事実。評価、名声が高まらなかった理由もそこにあったといってよい。

「上原はとても役に立つ投手だが、彼が過去に所属したチームは連投での起用に注意深くならねばならなかった」

「ボストン・グローブ」紙もそう記し、体調面への懸念を示唆している。

早くもブルペン入り

熱狂的でせっかちなファンが多いボストンでは、早い時期からある程度の結果を出すことが不可欠だし、ケガで長期離脱でもすれば早々に忘れられかねない。今季のようにブルペンに多くの駒がそろっていれば、それはなおさらだろう。

そんな状況下で迎えるボストンでの開幕に向け、37歳の右腕は24日には東京都内で早くもブルペン入りを果たしたといった報道も聞こえてきている。

早めにコンディションを整え、春からボストンのファンを喜ばせ続けることができるか。前評判の高いといえないチームを、ブルペンから支えられるか。上原のメジャー5年目の挑戦が始まろうとしている。

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