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走りのマンネリ打破、短い距離の練習で質高める

ランニングインストラクター 斉藤太郎

「一定ペースを保って走り続けることが良い練習」「長い距離をずっと走り続けないと力が付かない」――。真面目なランナーほどこうした固定観念に縛られて、効率良い練習ができなかったり、トレーニングを楽しめなかったりすることがあります。無理にペースを上げて走ってケガをしてしまうケースもあります。

ペースは変動させても構いません。長く走ることが厳しいなと感じた日には、一度に走り続ける距離を短く区切って、何回かに分けて走る「インターバル」という練習を取り入れてみましょう。

一度に走り続ける距離を短く区切って、何回かに分けて走るインターバル走を取り入れよう

新鮮で前向きに取り組めますし、練習スタイルを日々変えることで飽きがきません。気の向くままにコントロールしてください。ランナーのレベルに応じた練習メニューの組み立て方を紹介します。

ビギナーは歩く・走るのミックスから

ランニングを始めたばかりの方が、いきなり長い時間走り続けるのは禁物です。ランニング時の1歩の着地衝撃は体重のおおよそ3倍、ウオーキング時は1.5~2倍といわれます。筋肉や関節の準備がまだ整っていない段階で長時間走ると、膝などを痛めてしまう可能性が高くなります。

初めのうちはウオーキングを中心に計画を立ててみましょう。そうすることでランニングの着地衝撃に耐えられる体をつくっていきます。段階的にウオーキングとランニングをミックスし、練習時間・距離に占めるランニングの割合を少しずつ増やしていきます。

たとえば1回30分の練習時間を確保できるようでしたら、初めは「25分ウオーク+5分ラン」、体が慣れるに従って「15分ウオーク+15分ラン」「5分ウオーク+25分ラン」といった具合です(図A)。

走る前に歩くことは筋肉を芯から温め、パフォーマンスの向上と併せてケガの予防にもなります。

15分ウオーク+15分ランの際にはまとめて15分走り続ける必要はありません。あくまで割合で考えてください。「1分歩く」と「1分走る」を交互に15セット繰り返す方法で計30分でも効果的です。

ランニングを始めて体が慣れてきた時期は、徐々にペースが上がり心地よく走れるようになります。同じことを単純に繰り返しているだけで体は絞れてきます。ところがしばらくすると停滞期が訪れます。

単調な練習がダイナミックな走りを妨げる

いつもの練習が「毎回30~50分」「○○公園を1周5キロ」など、距離・時間・スピードがだいたい固定されてしまっている方も多いようです。このようにあまり変化のない単調なランニングを重ねていませんか?

同じペースで同じような時間のランニング、毎回が同じテンション。そんな習慣に、私たちの体はできる限り無難な動き(ランニングフォーム)でこなそうという反応をします。ランニングフォームは腰が落ちた小さな動きになります。

体幹に眠る大きな筋肉をメーンに使うことができず、体の末端になる小さな筋肉に頼って走るので、腰や肩の筋肉に疲れがたまることもよくあります。

別の例え方をすると、「10」の動きをするために「10」より大きな動きをすることが無い。やがてフォームは「9」「8」「7」……と小さくなっていきます。このような場合にはスピードにメリハリをつけ、体に適度な刺激を入れましょう。

たまには「15」くらいの大きな動きで速いペースを取り入れてあげることで、私たちの体には刺激が入ります。

表1のような練習方法を織り込むことで、例えば同じ30分の時間でも効率が上がります。いつもよりも速い動き、大きなフォーム。心拍数を上げ呼吸を適度に荒くすることで体に刺激が入り、ゴール後にはスカッとした爽快感を得られることでしょう。

練習を積んで、日ごろの成果を発揮するレースに参加するようになると、「自己ベスト記録を更新したい」「もっと安定したペースで走りたい」……と気持ちが膨らんでいくものです。

目標とする大会を控えた1カ月前などに、本番を想定して普段の練習よりも速いペース設定で長い距離に挑戦することがあります。

インターバル走でレースペースに近づく

例えばビギナーの方ならば10キロ走、ある程度のキャリアの方ならば20キロ走や30キロ走などへの挑戦です。このような大切な練習に何の準備もせず気持ちだけで挑戦しようとしても、体はなかなか言うことを聞いてくれません。

自分の走りをレース想定ペースに近づけていくためにはもう少し計画的に階段を上る必要があります。

一度に長い距離を走り続ける前に、複数本の短い距離に区切った練習をこなし、1本の長い距離へ段階を踏んで進める。距離は短くても、だれることなく集中力を維持して走り切ることで高い効果が得られるのがインターバル走です。

1本1本の質を高め、ゆとりあるフォームで消化します。数週間かけて段階を踏み、1本の長い線へと近づけていきましょう。

表2のメニューに従って、練習の進め方の一例を紹介します。「1キロ×10本」では、ハーフマラソンペースで1キロ走り、そのまま足を止めることなく2分間ゆっくりしたジョギングで呼吸を整えます。

これをリカバリージョグと呼びます。大きく息を吐き、限られた時間内で最大限の疲労回復に努めます。そして次のスタートを迎えます。

この流れを10回繰り返してください。はじめはリカバリーがつらく感じるかもしれませんが、何度か経験するうちに要領よくこなせるようになるはずです。

「2キロ×5本」では、リカバリーは3~4分間。1キロ×10本よりも負荷は高くなりますが、完全に足が止まってしまうことは避けましょう。

足を止めないで筋肉の伸縮を繰り返しながら回復させる習慣が、実際のレースでも上り坂などで呼吸が一時的に上がった後の状況で生かされます。

徐々にペースを上げるビルドアップ走も

「5キロ×2本」では、1本の中で徐々にペースが上がるような走り方をします。ビルドアップ走と呼ばれる練習です。ゆとりあるペースから入り、体が温まって筋肉がほぐれるにつれてペースを上げていきましょう。

スタミナがついているランナーは、一汗かいた2本目の方がさらにペースが上がっていきます。リカバリータイムは5~7分が目安。ゆっくりジョグでつなぐことが理想的ですが、5キロの場合には歩いて次に備えるやり方で構いません。

以上のような段階的にレベルを高めていく計画で1回の練習をゆとりを持って消化できると、「次はもう少し速いペースで走れそうだ」「次はもう少し長く走り続けることができそうだ」といった前向きな感覚が残ります。次に取り組むときには体は要領を覚えて、さらにうまく走ることができるはずです。

<クールダウン>サッカー審判の威厳ある立ち振る舞い
 サッカーの国際審判は1試合90分間で8~12キロ走るといわれます。単純に走力だけではなく、ポイントを押さえたポジショニングも大切ですが、走ることに関しては、効率、美しさ、威厳ある姿勢と立ち振る舞いなどが求められ、日々トレーニングを積んでいます。
 マレーシアのクアラルンプールでこのほど開かれたアジア・サッカー連盟(AFC)の審判講習会にランニングインストラクターとして参加。各地から集まった審判たちが自国へ帰ってそのままできそうなエクササイズを紹介してきました。
 筋肉にもスタミナにも自信がある方が多いのですが、どうしても力んだり姿勢がゆがんだりする傾向があります。「keep straight posture(背筋を伸ばして)」「look ahead(前を見て)」「relax」というフレーズをよく使いました。
 講習会を担当したのは今回で3回目。多くの審判たちの顔と走り方とが一致してきましたし、徐々に改善されてきたのがわかります。
各地からサッカー審判が集まったAFCの講習会

さいとう・たろう 1974年生まれ。国学院久我山高―早大。リクルートRCコーチ時代にシドニー五輪代表の志水見千子選手を指導。2002年からNPO法人ニッポンランナーズ(千葉県佐倉市)ヘッドコーチ。走り方、歩き方、ストレッチ法など体の動きのツボを押さえたうえでの指導に定評がある。300人を超える会員を指導するかたわら、日本サッカー協会の委嘱を受け、レフェリーにも走り方を講習している。「骨盤、肩甲骨、姿勢」の3要素を重視しており、その頭の文字をとった「こけし走り」を提唱。著書に「こけし走り」(池田書店)、「42.195キロ トレーニング編」(フリースペース)など。

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