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新たな金満球団ドジャース 大盤振る舞いの裏事情

スポーツライター 丹羽政善

今の時代、「大人買い」とでも呼ぶのだろうか。ドジャースのお金の使い方が、なんとも豪快である。

例えるなら……。昔、友人に金持ちの息子がいた。社会人1年目でアウディの新車に乗っていた。

本当はメルセデスベンツを買いにディーラーに行ったという。しかし、欲しいモデルがなく、そのときふとアウディに目が留まった。

「じゃあ、こっちでいいや。これちょうだい」

昨年春、大リーグ史上最高額で球団買収

いってみれば、これが今のドジャースの金の使い方、選手補強の仕方である。

はたから見れば、耳を疑うような話ばかり。ただ、今後、観客が1人も入らなくとも、チームが低迷しようとも、彼らには長期にわたって最低でも毎年2億~3億ドル(約180億~270億円)という莫大な収入源がある。

どうしてなのかは追って説明するが、そもそも、昨年春に発表された買収額が破格だった。

金額はなんと20億ドルで、これまでの売却最高額だった2009年のカブスの8億4500万ドルの倍以上となった。それだけではなく、かつて米プロバスケットボールのNBAで活躍したマジック・ジョンソン氏らの新オーナーグループは、ドジャー・スタジアムの周辺施設などに対し、1億5000万ドルもの大金を別途支払ったのである。

昨年春の買収後にドジャースが獲得した主な選手
マーリンズよりトレードで
ラミレス6年総額7000万ドル(09~14年)
レッドソックスよりトレードで
ゴンザレス7年総額1億5400万ドル(12~18年)
ベケット4年総額6800万ドル(11~14年)
クロフォード7年総額1億4200万ドル(11~17年)
フリーエージェントで
グリンキー6年総額1億4700万ドル(13~18年)

注)カッコ内は契約期間、トレードで獲得した選手は前球団の契約を引き継ぐ

大型補強を次々に敢行

そして、買収直後からチームはお金をばらまくかのごとく、コストのかかるトレードを次々に敢行。このオフも、09年のサイ・ヤング賞投手でフリーエージェント(FA)の最大の目玉だったエンゼルスのザック・グリンキーと、右投手としては史上最高額となる6年総額1億4700万ドルで契約を交わしている。

ESPNによると、これまで年俸総額の史上最高額はヤンキースが08年に記録した2億910万ドル(開幕時ベース)だったが、ドジャースの13年の年俸総額はすでにその額を超え、最終的には2億2000万~2億3000万ドル近くに達する見込み。12年が9300万ドル余りだったことを考えれば、その急拡大ぶりは驚くばかりだ。

では、どこにそんなお金があるのだろうか。前代未聞の買収費用に加え、2億ドルを超す選手予算は、どう捻出するのか?――ということだが、実のところ、お金の出どころはオーナーではなく、テレビ局というのが真相だ。

テレビ局と超大型の放映権契約?

現在、ドジャースはFOXと12年間で3億5000万ドルという放映権契約を結んでいる。しかし、これが来季で切れるため、今まさに14年以降の契約交渉が大詰めを迎えている。

その額は、伝えられるところによると、総額60億~70億ドルの25年契約になるという。年間に直せば、2億4000万~2億8000万ドル。ロッキーズやレイズの年間放映権料が2000万ドル程度なのでその10倍以上。これだから、財布の紐(ひも)が緩むわけである。

しかも資金源は、地元放送局との契約料だけに限らない。

昨年、リーグ機構はESPNなど3局と新しい全米中継の放映権を結び、その分配金が13年から毎年5000万ドルほど各チームに入る予定なので、ドジャースは、ちょうど同じ年から始まる新しい地元放送局との契約金と合わせて、年間3億ドル前後を手にする予定なのである。

さらなる"からくり"も

ドジャースの場合、さらなる"からくり"があるとも報じられている。

現在の労使協定では、収入分配制度のルールとして、各チームは純収入の34%をリーグに納めなければいけないことになっているが、ドジャースには特例が適用されると、昨年12月に伝えられた。

リーグ機構は、前オーナーのフランク・マッコート氏にチームの売却を迫る過程でドジャースの放映権料を8400万ドル(年4%ずつ上昇)に設定し、8400万ドルまでは課税対象だが、それを超える分には無税という条件で合意していたというのである。

その通りなら、たとえば年間の放映権料を2億5000万ドルとした場合、8500万ドルが本来納めるべき税額となるが、課税の上限が8400万ドルなので、2856万ドルしか支払う必要がない。ここで5600万ドル以上が浮く計算だ。

どうしたら"節税"できるか

8400万ドルという上限金額は年間4%ずつアップするが、それでもある試算では、ドジャースは25年で10億ドルほど節税ができるのでは、としている。

違う見方をすれば、買収額が20億ドルにまで跳ね上がったのは、そうした裏事情があるのだろう。

ただ、このことが報じられてから、リーグは特例の無効を示唆。そのことが昨年末には合意するとみられていたドジャースとFOXの放映権交渉がここまでずれ込んでいる理由の一つとみられる。

どうしたら"節税"できるか。ドジャースは今、その手段とされる自前の放送局立ち上げも視野に入れながら、模索を続けている。

いずれにしても、ここでうかがええるのは、日本では想像できないような数字が飛び交う大リーグの活況。

これはなにも、ドジャースに限ったことではなく、エンゼルス、レンジャーズも同様で、次々と大型補強を進める裏には、テレビ局との巨額放映権契約が背景にある。もはや、放映権が年間1億ドルを超えることも珍しくない。

ただ、その一方で大きな契約を結べない小さなマーケットのチームもあるわけで、今、その格差がますます広がっている。

次回はそれが分かるように、メジャーの各チームが結ぶ放映権の内容とその差を比較しながら、全体像をまとめてみたい。

(次回は2月4日掲載予定)

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