金融緩和競争、影響は? 円高なら景気へ打撃も

ニッキィの大疑問
2019/10/5 3:00
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日銀は従来より緩和に前向きな姿勢を示しつつある(9月19日、金融政策決定会合後、記者会見する日銀の黒田総裁)

日銀は従来より緩和に前向きな姿勢を示しつつある(9月19日、金融政策決定会合後、記者会見する日銀の黒田総裁)

世界的に金融緩和の動きが強まっているようだわ。米連邦準備理事会(FRB)が7月、利下げに踏み切ったのがきっかけで、景気の下振れを未然に防ぎたいようね。生活への影響はどうなるのかな。

世界の政府や中央銀行の取り組みについて、井原幸子さん(46)と小沢麻里子さん(52)が清水功哉編集委員に聞いた。

――FRBは7月に続き、9月も金利の引き下げを決めました。

米中貿易戦争の激化で世界の貿易が滞るなど、グローバル経済は減速しています。その影響による国内景気の悪化に備えようというのが、FRBの基本的な考えです。

実際、回復を続けてきた米国の景気は減速しています。消費者物価上昇率についても、FRBが目標とする2%の安定的な実現が難しくなっています。そこで、いまのうちに金利を引き下げ、景気が後退局面に陥るのを防ごうとしているのです。経済を刺激できれば、物価にも上げ圧力がかかると判断しています。

トランプ米大統領も利下げを求める発言をしてきました。大統領選挙を来年に控え、再選のために景気悪化は防ぎたいと考えているからです。こうした政治面の動きもFRBの判断に影響を与えている可能性があります。

――米国だけでなく世界的に金融緩和が広がっています。

アジア、オセアニア、中南米などに拡大しています。欧州中央銀行(ECB)も9月、マイナス金利を深掘りし、量的金融緩和も再開するなどの対応を決めました。米中貿易戦争の悪影響が世界に広がっているためでしょう。

米国の利下げ開始も各国の行動に影響を及ぼしています。新興国だけで緩和を決めると、自国通貨が世界の基軸通貨であるドルに対して急落し、経済が混乱する恐れがあります。しかし米国が金利を下げ始めた結果、そのリスクが低下してきました。金利面でドルにも下落圧力がかかるためで、安心して動きやすくなったのです。

むしろ、金利を下げないと、自国通貨が上昇し、輸出面から景気の足を引っ張る恐れがあります。結果的に、通貨高を防ぐための緩和競争が起きやすくなったといえます。

――日銀の対応はどうですか。

政府・日銀もFRBの政策変更による円高圧力を警戒してきました。実際に7月末の米国の利下げ決定の後、8月に円相場は一時1ドル=104円台前半に上昇、1月以来の高値となりました。円高は株安要因となり、景気に負の作用を及ぼす懸念があります。

このため日銀は金融政策決定会合の後に出す声明文で、従来より緩和に前向きな姿勢を示すなどして、市場の円買いをけん制しています。ただ円高防止のために日本の当局にできることには、限界もあります。

まず金融緩和の余地はかなり狭くなっています。日銀の短期政策金利はマイナス0.1%で、長期金利(10年物国債利回り)もマイナスになっているからです。これ以上の利下げは金融機関の収益に打撃を及ぼすなど副作用が強まることも、軽視できません。政策金利(上限)が2%であるなど米国の利下げ余地は日本より大きく、緩和競争になると日本は不利です。

政府による外国為替市場での円売り介入も、かつてに比べ難しくなっています。米政権が他国の通貨安誘導に厳しい目を向けているからです。

――円高になると、暮らしにはどんな影響が出ますか。

海外旅行が割安になるなどの利点はありますが、やはり景気への悪影響が心配です。輸出企業の業績が悪化し、ボーナスが減るなどの動きが広がる可能性があるからです。消費増税によって消費にマイナスの影響が及びそうな状況だけに、景気に対してさらに打撃になる心配があります。

日銀が6月に調べたところ、日本の大企業・製造業が事業計画の前提とする想定為替相場は109円程度です。円がこれより高い水準で推移するなら業績悪化懸念が強まるだけに、要注意です。

■ちょっとウンチク 米利下げ局面の円安も

米国の金利低下は円高圧力を生みやすいが、米利下げ局面でむしろ円安になることもある。今回を除く過去25年間の4回の米利下げ局面を振り返ると、うち2回は円相場が下落した。具体的には1995年7月~96年1月と2001年1月~03年6月の時期だ。ただし留意すべきなのはその期間に日本側が円売り介入や金融緩和を実施していたことだ。もちろん介入や緩和をしても円上昇が止まらないこともあるが、一定の意味は持つ。

一方、現在は介入が簡単でないし、日銀の追加緩和余地も限られる。日本の当局が、円高を警戒するのは自然だろう。

(編集委員 清水功哉)

■今回のニッキィ
小沢 麻里子さん 英語通訳・翻訳業。旅行先でパワースポットに足を延ばすようにしている。最近は長野県伊那市のゼロ磁場の分杭峠を訪れた。「りんとした雰囲気に身を置き、気分転換できる」
井原 幸子さん コンサルティング会社勤務。ダイエットのため出勤前に週2回程度、スポーツジムのランニングマシンなどで汗を流す。「ライブ鑑賞に備えるという目標があり、励みにしている」

[日本経済新聞夕刊 2019年9月30日付]

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