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ザックジャパンの新戦力候補を探る 今年期待の4選手

サッカージャーナリスト 大住良之

FIFAワールドカップ2014ブラジル大会のアジア最終予選で、サッカーの日本代表は昨年までに8戦のうち5戦を終え、4勝1分けという圧倒的な成績で出場権獲得をほぼ確実にした。2013年は1年半後となったワールドカップ決勝大会に向け、どれだけチーム力を上げられるかが大きなテーマとなる。その大きな要素が「バックアップ層の底上げ」だ。

12年に行われた最終予選の5試合を見ると、日本代表の主力メンバーが固まりつつあるのが分かる。しかし、これからの1年半でさらにチーム力を伸ばすには、新メンバーが台頭し、主力のポジションを脅かすことが非常に大切。その候補として、私が大きな期待をかけるのがこの4人だ。

広島のMF青山、攻撃面で大きく成長

広島のMF青山敏弘は1986年2月22日生まれ、ことし27歳になる。04年に岡山県の作陽高校から広島に入り、今季でプロ10シーズン目を迎える。「若手」とはいえないが、着実に成長し、昨年の広島のJリーグ初優勝に大きく貢献した。

Jリーグの全34試合すべてに先発出場し、中盤の中心となった。ダブルボランチを組むMF森崎和幸は、広島がボールを保持するとDFラインに入って最後尾から組み立てる役となるが、青山は中盤にとどまり、攻撃時には「4-1-5」の形になる布陣のなかで、チーム全体の要となっている。

一昨年までは、ミドルシュートの威力こそ知られていたものの、どちらかといえば守備力にストロングポイントがあるMFという評価があった。

しかし、昨年のJリーグでは、キープ力、パスで組み立てる能力、そして機を見て前線の選手たちの間に割り込んで相手の守備を突破する役割など、攻撃面で大きく成長したところを示した。

遠藤、長谷部に近いタイプのボランチ

日本代表のボランチは、遠藤保仁(G大阪、32歳)と長谷部誠(ウォルフスブルク、28歳)がザッケローニ監督の圧倒的な信頼を受け、その信頼に足るプレーを続けている。

そのバックアップ第一候補は、ドイツのレバークーゼンで活躍する細貝萌(26歳)だ。さらにFC東京の高橋秀人(25歳)も、昨年1年間で信頼を高めた。

しかし、細貝と高橋は守備力に特徴をもつ選手。遠藤か長谷部のどちらか1人が欠けると、攻撃力が低下する恐れがある。

現時点の日本人選手で、青山は遠藤あるいは長谷部に近いタイプで、最も力のある選手ではないだろうか。昨年12月のFIFAクラブワールドカップで見せたプレーは、その可能性を裏付けるものだった。

174センチ、73キロと上背には恵まれていないものの、体格の大きな選手にも当たり負けない強さは、正確なパスワークとともに非常に印象的だった。

昨年、鳥栖を躍進させたFW豊田陽平

そして、私が現在の日本代表で最も不安視しているのが、4-2-3-1システムのワントップ、FWだ。現時点では前田遼一(磐田、31歳)が第一候補だが、ワールドカップクラスのセンターバックを相手にするといかにもひ弱で、持ち前のテクニックと周囲を生かす能力をどれだけ発揮できるだろうか。

前田以外のワントップ候補は、194センチの長身を誇るハーフナー・マイク(フィテッセ、25歳)と、昨年の後半はケガで日本代表を離れていたものの、一昨年の後半にはエース格だった李忠成(サウサンプトン、27歳)である。

しかし、いずれも決定的な力があるわけではなく、このままなら、ワールドカップ本戦では現在トップ下でプレーしている本田圭佑(CSKAモスクワ、26歳)をFWに使う形になる可能性も十分ある。

そこで注目したいのが、昨年のJリーグで19得点をたたき出し、J1昇格1年目の鳥栖を5位に躍進させたFW豊田陽平だ。1985年4月11日生まれの27歳。185センチ、79キロという大型のFWだ。

体を張ってゴールを奪う「ワイルドさ」

右足、左足、そしてヘディングと、三拍子そろったゴールゲッター。とにかくゴール前に詰めるときの迫力が素晴らしい。相手の当たりにひるまず、体を張ったプレーでゴールを陥れようとする。そして相手ボールになると、間髪を入れずに猛烈な守備に入る。

その闘志は、ときとしてラフプレーになり、イエローカードも少なくない(昨季のJ1での唯一の欠場は、警告累積による出場停止だった)。しかし、190センチクラスのセンターバックが並ぶワールドカップの舞台では、このくらいの「ワイルドさ」はほしい。

豊田は石川県の星稜高校(1年下に本田圭佑がいた)から04年に名古屋に加入、出場機会を求めて07、08年に山形、09年には京都、そして10、11年には鳥栖と、J2のクラブを渡り歩き、J2得点王(23得点)のタイトルをひっさげて昨年ようやくJ1の舞台に戻った。

その間、08年には北京オリンピックに出場し、ナイジェリア戦で日本のこの大会唯一の得点を決めている。

早いうちから才能を認められていた後輩の本田圭佑とは違い、「大器晩成」の感がある豊田だが、パワフルで破壊的なシュート力を持つ豊田が日本代表のなかでスムーズにプレーできるようであれば、日本代表チーム自体が大きくステップアップするのではなかろうか。

国際経験豊かなDF鈴木大輔

期待の選手3人目は、今季、新潟から柏に移籍したDF鈴木大輔だ。1990年1月29日生まれで、間もなく23歳になる。星稜高校では豊田陽平(そして本田圭佑)の後輩に当たる。08年に新潟に加入し、11年からレギュラーのセンターバックとなった。

日本のファンになじみ深いのは、昨年のロンドン・オリンピックでの活躍だ。「オーバーエージ」で参加した日本代表の吉田麻也(当時フェンロ、現在サウサンプトン、24歳)とコンビを組み、スペイン、モロッコ、ホンジュラス、エジプトと4試合連続で無失点に抑えた立役者の1人となった。

関塚隆監督率いるロンドン・オリンピックに向けたチームがスタートした10年のアジア大会(広州)からずっとポジションを守り続け、国際経験も豊富に積んできた。

吉田とのコンビネーションがアドバンテージ

181センチ、78キロ。今日のセンターバックとしては「小柄」な部類に属するかもしれない。しかし、ヘディングの競り合い、1対1の強さ、ポジショニングの良さ、そして前線への球出しと、現代のセンターバックに必要とされる要素をしっかりと備えている。

日本代表のセンターバックは、今野泰幸(G大阪、29歳)と吉田のコンビがファーストチョイス。バックアップはヘディングの強い栗原勇蔵(横浜M、29歳)とカバーがうまい伊野波雅彦(磐田、27歳)だが、オールラウンドな能力をもつ鈴木がこの2人を抜いて、一挙にポジション獲得に近づく可能性もある。

吉田とのコンビネーションは、すでにオリンピックの6試合で磨きがかかっている。G大阪のJ2降格で負担のかかるシーズンになると予想される今野のバックアップとしても、いま最も期待がかかるセンターバックだ。

スピードが売り物のFW永井謙佑

そして4人目の期待の選手は、名古屋のFW永井謙佑だ。50メートル5.8秒というスピードが売り物のストライカー。ロンドン・オリンピックでは4-2-3-1システムのワントップとしてプレーし、モロッコ、エジプト戦でそのスピードを遺憾なく発揮、ゴールを挙げた。

1989年3月5日生まれの23歳。3歳から8歳までブラジルで暮らし、北九州市の九州国際大付属高から福岡大を経て11年に名古屋に加入した。タレントぞろいのチームで1年目は苦しんだが、2年目の昨年には24試合に先発(交代出場6試合)。クラブトップの10得点をマークした。

今回取り上げた4人のうちではただ1人代表歴をもっているが、出場は1試合で、若手だけで戦った10年1月のイエメン戦。ザッケローニ時代になってからは、11年8月のトレーニングキャンプに参加しただけで、試合への招集はない。

ライバルは宮市?

オリンピックではワントップでプレーしたが、本来は「サイドFW」が最も力を発揮できるポジション。名古屋でも左サイドでプレーすることが多い。

現在の日本代表の主力の「サイドFW」は、岡崎慎司(シュツットガルト、26歳)がゴールに向かっていく独特のプレースタイルをもっているが、香川真司(マンチェスター・ユナイテッド、23歳)、清武弘嗣(ニュルンベルク、23歳)、乾貴士(フランクフルト、24歳)はいずれもテクニシャンタイプ。

ただ1人の「スピード突破型」が宮市亮(ウィガン、20歳)だが、所属クラブではなかなか試合に出ることができていない。

そうしたなかで、オリンピックで実力を証明済みの永井の存在は大きいはずだ。そのスピードは、攻撃面だけでなく、前線での守備においても相手に大きな脅威を与えるだろう。

日本代表に活力を与える4人

10年にザッケローニが監督に就任して以来、日本代表は見違えるように整備され、結果を残してきた。チームとしても成熟し、総合的な力において史上最強のチームであることは間違いない。

しかしその一方で、かすかな不安もある。主力メンバーの固定が、ワールドカップを前に少し早すぎたのではないかという不安だ。

代表に限らず、サッカーチームの活力は、チーム内の競争の激しさに比例する。どんな試合でも、またどんな短時間の出場でも、最高のパフォーマンスを見せないとポジションを失うという危機感がなければ、チーム力は上がっていかない。

Jリーグで活躍し、そのまま日本代表のレギュラーを脅かすような選手が、どのポジションにも出てきてほしい。

今回挙げた4人はその有力な候補だ。彼らがどれだけ現在の主力クラスを追い上げるかで、ワールドカップ2014ブラジル大会の日本代表の活躍が決まってくるといっても過言でない。

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