2019年2月18日(月)

地震の直前予知が実現する日(年頭仮想ルポ)

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2013/1/3 3:30
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東日本大震災から10年あまり、大地震のたびに批判されてきた地震学者たちが、発生直前に予知できるまでにこぎつけた。震源地を特定できて地震発生の時間もおおよそわかるという。だが、いざ警戒宣言が出ると混乱が生じた。予知情報が出てから地震発生まで、都内の企業で事業継続計画(BCP)の担当部長を務める男性が見たものは……。

■秩序ある備えへ大車輪

 「国民のみなさまに重大なお知らせがあります」。夕食をとっていた社員食堂のテレビで、首相の緊急会見が始まった。「一両日中に南海トラフを震源とする巨大地震が起こると予知されました。警戒宣言を発令します」。昨年、地震予知が実用化されたというニュースを覚えているが、とうとうその日が来たのか。

みなテレビを見入っていた。静岡から九州沖に延びる南海トラフで、マグニチュード(M)9級の巨大地震がいずれ来るといわれていた。異変がいくつか見つかった段階で「地震注意情報」が出るはずだ。最悪の事態か。画面の首相は「落ち着いて行動してください」と繰り返していた。

「部長、どこですか」。部下からの電話に、一斉メールを送るよう指示した。「家族の安否を確認し、業務を終えたら帰宅する。ただ、交通機関の渋滞を避けるため、時差退社するように」。自宅が近い社員は歩いて帰り始めた。

静岡市の実家に帰省している妻の携帯電話に電話した。「インターチェンジにいる」。東名高速道路から東京へ向かうという。元市役所職員の義父は防災訓練慣れしており、避難に必要な非常食や道具を自家用車に積んで備えていた。しばらくして、義父の声が聞こえた。「小田原付近で渋滞し始めた。途中で降りよう」。車で避難する人は高速道路に殺到しているようだ。

大阪で就職した息子から「こっちは大丈夫」と電話がかかってきた。大学生の娘はスマートフォン(スマホ)のアプリで知ったらしい。「電車が動いているうちに帰る」

西日本の太平洋側にある事業所のBCP担当に電話した。震源に近い静岡、愛知東部、三重南部、和歌山、高知の事業所は閉鎖し、津波の恐れがある海沿いの工場は操業を止めた。東京の本社とともに、名古屋と大阪に対策チームを置く。担当者は会社に残ってもらうことにした。

保守部門の社員には、地震の後に顧客へ向かってもらうよう電動アシスト自転車を支給している。ガラスを踏んでもパンクしないタイヤを使っている。顧客が被災したら対応するよう再確認してもらっった。内勤の社員はしばらく自宅勤務だな。

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