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ポスト金本・藤川は…阪神、リーダー不在の危うさ

2年連続でセ・リーグのBクラス(2011年は4位、12年は5位)に終わり、クライマックスシリーズ進出を逃した阪神が転機を迎えている。金本知憲と城島健司がケガとの闘いの末、昨季限りで現役を引退。抑えの藤川球児も海外フリーエージェント(FA)権を行使してカブスと契約、念願だった米大リーグ入りを果たした。強烈な個性でチームを牽引(けんいん)してきた役者が次々に去った今、リーダー不在の混迷の時代をどう乗り切るのか。

投手陣を引っ張ってきた藤川

昨年、阪神の投手キャプテンを務めた藤川のリーダーシップの一端について、吉田康夫バッテリーコーチ(現在は2軍担当)がこう語ったことがある。

「若い捕手と組むと、球児の方からサインを出して逆に捕手をリードする。1手も2手も先を読んで、自分で配球ができるからね」

同僚を奮い立たせる役目も担った。2位に終わった10年。最終的にリーグ優勝した中日との9月7日からの首位攻防3連戦で、初戦と3戦目に登板。各2イニングを投げて無失点に抑えた。1試合に1イニングが基本のストッパーが、これほどの短い間隔で複数回を投げるのは異例。ほかでもない、藤川の志願によるものだった。

この年は開幕当初から1イニング超の登板がしばしばで、疲労の蓄積は明らか。それでもペナントレース終盤の首位攻防戦とあって、7日の試合後は「自分の最大の仕事はこの3つ(3連戦)。どんな状態でも投げると決めていた」と話した。さらには「ほかのリリーフ陣にはいい刺激になったでしょう」とも口にした。

12年に背負った投手キャプテンの肩書はあくまで"後付け"。とうの昔から、誰もが認める投手リーダーだった。

金本の勝利への姿勢はナインの強烈な刺激に

投手陣を引っ張ってきたのが藤川なら、野手陣の大黒柱だったのが03年にFA移籍で広島から加入した金本。

たゆまぬ鍛錬と、主軸を打ちながらも「勝利への近道」といって進塁打もいとわない姿勢は、ぬるま湯につかっていたナインには強烈な刺激となった。

「タイムリーを打つのが勝利への一番の近道だけれど、そんなに打てるもんじゃない」と金本。だから、状況によっては次善の策として進塁打などの「確実な道を選んできた」。

チーム打撃をすれば自身の打率は下がるが、「いつでも取り返してやるわ、という気持ちでいた」という。きっぷの良さもあり、ナインだけでなく熱狂的なファンの支持も得た。

たとえ凡打しても全力疾走を続けた結果、1002打席連続無併殺打のプロ野球記録を樹立。同じ前人未到の記録でも、1492試合連続フルイニング出場より誇りに感じるという。

投手への格段の気遣い見せていた城島

そして、「日本人初の大リーガー捕手」の称号を引っ提げて10年にマリナーズから加入した城島は、持ち前の明るさを前面に出して、すぐにチームに溶け込んだ。

リードは「打者が苦手とする球で抑えにいく日本流と、投手に投げたい球を投げさせるメジャー流」(吉田コーチ)の"合体版"。

ただし、自分の考えを他人に押しつけることはなく、経験の浅い投手でもサインに首を振ることを容認、むしろ奨励した。捕手任せにしないことで自分なりの配球論を身につけてほしいとの"女房心"だった。

吉田コーチが特に感心したのが「投手への気遣い」。11年の開幕戦の後、勝利した喜びもそこそこに「明日投げる投手はまだ開幕していない。1週間後に初めて投げる投手もいるから、気を使いながら……」と語っていた。

人一倍投手思いだった城島。引退会見では「同じチームの投手が取ったタイトルは全部、自分の宝物。一生懸命投げてくれた投手たちに捕手として感謝したい」と涙ながらに話した。

チームの屋台骨だった3人が一度にいなくなった今、新たにリーダーとなるのは誰なのか。

鳥谷は新リーダー候補の一人だが…

筆頭候補は今オフに海外FA権を行使せずに阪神に残留した鳥谷敬だろう。レギュラー野手では数少ない生え抜きで、昨季は野手キャプテンを務めた。だが、リーダーの資質を十分に持ち合わせているかとなると、心もとない。

球団関係者の話。「赤星(憲広)が選手会長だったころ、何かあったときは赤星に言えば選手にしっかり伝わった。でも、鳥谷はそういう風に周りを引っ張る選手ではない。ロッカーが隣だった城島はよく鳥谷をもり立てていたけれど……」

プロ球界で功成り名を遂げた選手には、坂本勇人(巨人)からの弟子入り志願を受け入れた宮本慎也(ヤクルト)のように、敵味方を問わず自身の自主トレーニングに若手を招き入れ、技術やプロとしての心構えを伝授する人が多い。

対して鳥谷は毎年、7つ年上の井口資仁(ロッテ)について自主トレを行ってきた。将来の大リーグ行きも視野に入れる身としては、メジャー経験豊かな井口と行動をともにする意義は深いだろうが、もう31歳。独り立ちして多くの門弟を引き連れるぐらいの気概がほしい。

新井貴は主軸の座を失いかねない状況

表だったリーダーシップという点では、新井貴浩の方が上か。自軍がピンチになると、よく1人でマウンドにいって投手を激励してきた。

東日本大震災が発生したときには、電力事情や被災者感情に鑑みペナントレースの開幕延期を強く訴えるなど、日本プロ野球選手会の会長時代のリーダーシップも記憶に新しい。

ただし、その統率力が今年、チームで発揮できるかは別問題。故障で衰えた金本に代わって10年途中から4番を任されてきたが、昨季は好機でことごとく凡退。首脳陣とファンの信頼を失い、8月上旬に4番の座を弟の良太に明け渡した。もはやリーダーどころか、主軸の座も危うい状況だ。

昨季限りで引退した金本が、かつて衝撃を受けたことがあるという。03年に星野仙一監督の下でリーグ優勝を果たしたが、04年に岡田彰布監督に代わると、全力疾走を怠るなど、選手たちに気の緩みが感じられるようになったそうだ。「星野さんがいなくなったら、ここまでたるんでしまうのかと思った」

こわもて監督が去った途端に野球への取り組みが変わるあたり、「ダメ虎」と呼ばれた暗黒時代の甘さが残っていたということなのだろう。

桧山「生ぬるい環境がここ数年ある」

昨年12月に契約更改した生え抜きのベテラン、桧山進次郎は「生ぬるい環境がここ数年ある」と話した。

前監督の真弓明信氏、そして現職の和田豊監督と優しいトップの下で、さらに緩んできているのであれば、やはりたがを締める強力なリーダーシップを持つ選手の存在は不可欠といえる。

球団は昨季終了後、ツインズを退団した西岡剛にオリックスからFA宣言した日高剛、さらにはカブスなどで活躍した福留孝介と立て続けに補強した。

資金力があるからとはいえ、こうも外部に人材を求めては、将来リーダーとなるべき若手が一向に育たず、誰がチームの軸かがぼやけてしまう。チームにおける若手育成の手腕も磨かれない。

ライバル巨人は、坂本や長野らが育つ

ライバルである巨人はFA補強で杉内俊哉らを獲得する一方で、自前で一から選手を育ててもいる。主将・阿部慎之助に続けとばかり、坂本勇人や長野久義といった将来のリーダー候補が着実に成長。昨季、独走でセ・リーグを制した上での日本一は、こうした路線の成果ともいえるだろう。

長期的な視座で強化を目指すようになった宿敵の姿勢に学ばない限り、阪神はリーダーの人材難が解消されないばかりか、さらなる弱体化を招きかねない。

(合六謙二)

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