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WBC・山本監督「3連覇へ憎らしい野球」

野球の国・地域別対抗戦ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の第3回大会が3月、開催される。大リーグでプレーする選手の参加辞退で、日本代表は国内選手だけで候補を固めざるを得なかった。「侍ジャパン」が第1回、第2回に続き、3連覇を達成するカギは何なのか。山本浩二監督は「選手たちの気持ちを1つにまとめること」を条件に挙げ、そのためには自分から選手の懐に入っていきたいと抱負を語った。

3連覇に向けて「選手の気持ちを一つにまとめることに力を割きたい」と山本監督は話す

大会までの準備を万全に

――明けましておめでとうございます。大会まであと2カ月に迫った今の気持ちはいかがですか。

「徐々に気持ちが高ぶってきています。時間がたつのは早い。あっという間に大会が来るでしょうから、WBCに入るまでの準備を万全にしたいと思っています。選手がゲームで普段の力を発揮できるような雰囲気づくりを(2月15日からの)代表合宿前にはやっておきたいのです」

「具体的には、山本浩二という人間をそれまでに選手に少しでも知っておいてもらうことです。オフにも会う機会はあります。こちらから選手たちの懐に入って話しかけていきます。2月1日にキャンプに入れば全球団を回りますので、そうした話ができればいいですね」

「代表合宿の初日から普通に練習できる雰囲気、これが一番大事じゃないでしょうか。合宿期間は短く、壮行試合もあります。そのまま(本戦に)入っていくわけですから」

「やってやろう」の気持ち強く

――第1回大会(2006年)の王貞治監督、第2回(09年)の原辰徳監督と連覇した今までの監督は現役監督として自分のチームを持ちながらの采配。山本監督が初めてOBという形で選手を率います。

「(広島の監督を退いてから)ずっとネット裏から野球、選手たちのプレーを見てきました。もちろん、ネット裏から見る目線とベンチから見る目線は全く違いますが、試合の雰囲気などは(監督時代と)同じような気持ちでネット裏から見ていました」

――監督就任に迷いはありませんでしたか。

「大変光栄なことです。しかも大役です。初めは『えらいことになったな』と思いましたが、野球人としてこんな大きな大会で監督就任の要請を受けるのは光栄です。やってやろうという気持ちの方が強かったですね」

侍ジャパン代表候補(投手)
選手名所属チーム
投手
(16人)
杉内俊哉巨人
内海哲也巨人
山口鉄也巨人
沢村拓一巨人
山井大介中日
吉見一起中日
浅尾拓也中日
前田健太広島
今村猛広島
能見篤史阪神
牧田和久西武
涌井秀章西武
摂津正ソフトバンク
大隣憲司ソフトバンク
森福允彦ソフトバンク
田中将大楽天

「厳しい戦いになるというのは分かっています。国際舞台で2連覇しているわけですから。(3連覇は)そう簡単にいくものじゃないですが、野球人としてユニホームを着たいという思いは誰でも同じでしょう。体が若返るものならプレーしたいぐらいの気持ちです」

親善試合で勝負師の本能取り戻す

――12年11月のキューバとの国際親善試合は代表監督としての初陣でした。

「キューバ戦の2試合はすごくプラスになりました。いきなり2月の練習試合から始まる場合と違い、11月に2試合経験したのはやはり大きいですよ。一緒に戦ったことで、勝負師としての本能というか、勘をすぐに取り戻したつもりですね」

――北京五輪代表の守備・走塁コーチ以来の国際試合になります。国内の試合とは別物ですか。

「別物というか、開幕戦がずっと続く感じですね。シーズン開幕戦は目いっぱいいくでしょう、力以上のものを出して。だから次の日に筋肉痛が出てくるわけです。それがずっと続くんじゃないですか」

――しかもWBCはトーナメント方式で戦うことになります。

「第1ラウンドは総当たりのリーグ戦ですが、第2ラウンドからは『ダブルエリミネーション方式』が採用されます。2回負ければ終わりです。一戦一戦が非常に大事になってきます」

「まだ米国(での対戦)のことは考えていませんから。まずは初戦から、ブラジル戦から一試合一試合を目いっぱいいくという感じですね」

まずキューバ戦まで目いっぱい

――第1ラウンドから気の抜けない試合が続きます。

「もちろんです。前回までは第1ラウンドはアジアの予選をやって、第2ラウンドから間隔が空いて米国でやっていましたね」

「今回は第1、第2ラウンドとそんなに間隔を空けることなくやるわけですから。今までと違い、ローテーションの問題などいろんなことが出てくるでしょうね」

――対戦相手の中で注意すべきチームはどこですか。

「やはり第1ラウンドA組の初っぱな当たるブラジルです。日系人が多くいるという話ですね。予選の勝ち上がり方も投手陣が好投していたというので、投手力はたぶんいいのでしょう」

侍ジャパン代表候補(野手)
選手名所属チーム
捕手
(3人)
阿部慎之助巨人
相川亮二ヤクルト
炭谷銀仁朗西武
内野手
(8人)
村田修一巨人
坂本勇人巨人
井端弘和中日
鳥谷敬阪神
稲葉篤紀日本ハム
松田宣浩ソフトバンク
本多雄一ソフトバンク
松井稼頭央楽天
外野手
(7人)
長野久義巨人
大島洋平中日
糸井嘉男日本ハム
中田翔日本ハム
内川聖一ソフトバンク
聖沢諒楽天
角中勝也ロッテ

「(第1ラウンド3戦目の)キューバと戦うまで連勝でいけば、第2ラウンドには行けます。ただ、それまでに(第2ラウンドで対戦する)B組の韓国、台湾の順位まで考えないで、キューバ戦までは目いっぱい戦っていきたいです。第2ラウンドも同じように連勝しなければいけないわけですから」

少ない得点でも勝てる形に

――具体的な戦い方は。

「短期決戦を勝ち抜くためには、やはり投手を含めた『守り』が必要です。ペナントレースもそうなんですが、点を与えなければ勝つ確率が高くなるわけですから、余分な点を与えないようにしたい」

「少ない得点で勝つという形になればいい。連打で大量点で勝つのが一番いいんですが、そんなに点は取れないのが今までの国際試合です」

「やはり、1点を与えない守り、1点を取るための『足』も欠かせません。盗塁しなくても、次の塁を狙う姿勢があるだけで違ってきます」

――「一つ先の塁」という思いが点につながります。

「そうです。投手にしても、1人ずつ打ち取っていく思いですね。いかにストライクを先行させて打ち取れるか、落ちる変化球でボール球を振らせるか。そういった基準で投手を選んだつもりではいます」

――代表候補34人に日本人大リーガーは含まれていません。

「これは成り行きでね。(辞退した大リーガー)本人にとっても苦渋の決断だったと思います。(参加を打診する)電話をしたときでも、みんな喜んで『前向きに考えさせてもらいます』と言ってくれました」

普段のプレーできる環境に

「でも、所属球団での立場などいろんな事情があるでしょう。こちらが悔やんだり、お願いしたりはしません。前向きにもっと進んでいかないといけないわけですから」

「国内の選手もいい選手がそろっています。純然たる国内産の侍ジャパンも捨てたもんじゃないぞと思わせたいのです。それだけの力を持った選手を選びました」

――純国産の良さをどのように出していけるか、監督の腕の見せどころになります。

「はい。何回も言うように、普段のプレーができる環境が一番大事。準備が大事ですね」

――各球団としても自信を持って選手を送り出してきていると思います。

「選考するときは、チームをほとんど考えずに選手だけを見ました。その結果、巨人のように選手が8人もいるチームもあれば、1人も選ばれなかったチームもありました。でも各球団の監督が本当に快く送り出してくれて、感謝しています」

チームの柱は円熟期の阿部

――選考の基準となったのは。

「やはり、守りと足ですね」

――過去2大会もそういう戦いで勝ち抜いてきました。

「スモールベースボール。これがニッポンの野球でしょう。つなぐ野球とはいいますが、つないでずっとヒットを打ち続けられるかといったら、そんなことはできません」

「でも、代表候補に選んでいる選手は、それだけのものをみんな持っています。クリーンアップが一番頼りではありますが、下位打線でも力があって十分に頼りになる選手はいます」

――チームの柱を任せる選手はだれですか。

「それはもう(阿部)慎之助ですよ。(昨季のような)活躍はなかなかできませんよ。ものすごい集中力。心技体が全てそろっていました。特に集中力があった気がしますね。円熟期ですね」

「だからWBCでも、チームをまとめるキャプテン、4番を任せようという考えも当然あります。ただ、負担をかけすぎてはいけませんから、サポートするベテランの存在が重要な役割になってきます」

「これが稲葉篤紀(日本ハム)であり、井端弘和(中日)でありますね。彼らも自分のことよりチームのことを思う選手ですから」

――両ベテランにはプレーでも期待がかかります。

「もちろん。頼りになるスーパーサブ。守備だろうが、代打だろうが、どんな場面でも信頼できる選手ですね」

田中には先頭に立ってほしい

――投では前回は松坂大輔(FA、来季の所属は未定)という大黒柱がいて、岩隈久志(マリナーズ)、ダルビッシュ有(レンジャーズ)が脇を固めました。その役割は誰が担いますか。

「先発要員は合宿に入ってみないと分かりませんが、マーくん(田中将大、楽天)は経験もあります。先頭になってやってもらいたいという気持ちはあります。前回は杉内俊哉(巨人)がいい活躍をしていましたね」

「球数制限があります。やはり1試合に2人、先発投手を使うようになると考えています。あとはリリーフ経験がある投手もいます」

打順はすでに頭の中に

「純然たる抑えがいませんが、十分抑えの役割をできる投手はたくさんいるわけです。キャンプで適性を見てという形となります」

――田中と同い年の前田健太(広島)ら若手にも期待がかかります。

「そう、そう。前田ら若い投手が張り合うことはいいことです。みんなライバルと思っているわけですから、お互いが成長してくれればいいですね」

「若い選手が伸び伸びやってくれればいいですね。戦力面ではメジャーの選手がいるといいかもしれませんが、若手が遠慮する面もあるでしょう。純国産で行くのはチームが早い段階で一つになる確率が高くなると思います」

――打者の顔ぶれを見ると、打線を組むのが楽しみではないですか。

「打順はもうある程度、頭の中に入っていますが、2月に入ってコーチ陣と相談します。できれば打順は固定し、ジグザグ打線が組めればなおいいと考えています。球数で投手が代わるケースがたくさんあります。右投手でいくか左投手でいくかで当然相手も迷うでしょうね」

「ただ、固定しようとしても状態の悪い選手が出てくるかもしれません。前回、イチローは青木宣親(ブルワーズ)と入れ替わりました。打順は今はまだ言える状態ではありません」

6人ふるい落とす作業つらい

――ジグザグ打線にもバリエーションがありそうですね。

「いろいろね。4番の阿部が左打者だから、1番が右打者から入れば2番は左打者、3番は右打者になるでしょう。そういうことを考えたら、誰を選ぶのがいいのか悩むところでもあります」

――大会本番での登録は28人となります。

「(代表候補には)投手が16人、野手が捕手を含めて18人。そのうち投手、野手を3人ずつふるい落とさなければなりません。これが一番つらいですね。その6人に通達するのもつらいことです」

「頭の中ではこの守備位置に誰を入れてなどと何通りも考えますが、それぞれのケースで落ちる選手も出てきます。いろんなことを考えて結構悩みますね」

――目指す野球はどういう野球ですか。

山本監督は「黙っていても選手が動いてくれる雰囲気づくりが必要」とみる

隙のない野球を実践したい

「『守り』と『足』というと、自分がやってきた野球。やっぱりカープの選手時代、昭和50年代の広島の野球でしょうか」

「監督が古葉竹識さんで、何も言わなくても選手が状況を分かっていました。この場面はこうすべきだと状況を読んで打席に入り、守っていました。あの当時、選手みんなが分かってやっていましたから」

「これが監督の指示でああしなさい、こうしなさいと言わなくてもできるチームです。それがわれわれが学んできた野球だし、一番やりたい野球なのです」

「結局、相手チームにとってはすごく憎らしいわけです。監督時代もそうだったのですが、憎たらしいと思う選手がいるチームほど強いのです。隙のない野球をやっているということですね」

――連覇している日本野球を相手が研究して臨んでくると予想されます。

「マークは当然されるでしょう。こちらもデータを採り入れますが、それ以上に対戦相手は研究してくるかもしれません」

ミスはチーム全員でカバー

――3連覇に向けた「秘策」はありますか。

「秘策は気持ちを一つにすること。それしか道筋はありません。ミスは当然出るでしょうが、いかにそのミスを全員でカバーして少なくするかがカギでしょう」

「これだけの選手が集まるのです。特別に何かをするというよりも、何もしない方がいいのかもしれません。黙っていても選手が動いてくれるような雰囲気、環境づくりが必要ですね」

「勝つためには気持ちを一つにすること一番ですからね。3連覇を目指すというのは当然分かっていますが、そこまで考えずに一戦一戦勝っていきます」

(聞き手は伊藤新時)

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