2019年8月21日(水)

高年俸いつまで…プロ野球、危うい"楽観体質"

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2012/12/20 7:00
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何より、89年のオフ、本社から反対されていた野村克也さんの監督就任を自分の「クビ」をかけて押し通した。つまり、相馬社長なしでは90年代のヤクルトの黄金期は語れない。とっつきにくい人だったが、芯の強い人間味のある人だった。

部長の「それはダメです」の言葉に社長が「広澤は球団の功労者だ」と一喝してくれた。感動のあまり言葉を失った。相馬社長は2005年に他界されてしまったが、伝説の社長であり、今でも、感謝している。ヤクルトを常勝チームにした陰の功労者だ。最高の球団社長だった(93年のヤクルトの日本一を見届けて勇退した)。

あの頃は、一枚の紙の契約書にも血が通っていた。人間味があった。今の契約交渉を見るとビジネスという感じが強い。信頼関係とか人情とか昔の野球界にあった人間味が薄い。

■激変する経営環境、阪神にも異変

私はヤクルト、巨人、阪神と3球団を経験した。どこの球団も本当に緻密に査定をしていて、調停となりコミッショナーの裁定になっても絶対負けないだけの材料をもって更改に臨んでいる。そして、球団側が2人、3人と複数で交渉の席につくのに対し、選手は自分1人。選手側が圧倒的に不利なわけだが、たまには球団も言うことを聞いてくれた。ひと昔前の査定は「どんぶり勘定」と批判されたものだが、このいかにも日本的なやり方で、丸く収まっていたのだろう。考えてみれば牧歌的な時代だった。

時代は変わった。私と球団の攻防は球団経営にまだ余裕があったころのこと。「球団はもうかっているんでしょう。税金を払うくらいなら、年俸として選手に還元して下さい」という言い方ができた。

今黒字なのは12球団中2、3球団くらいだろうか。野球界のなかの噂だから、アテにはならないかもしれないが、球団を売却したがっているところもあると耳にする。

選手会の発表によると2012年の平均年俸は3816万円。5年ぶりに下がったというが、ダルビッシュ有ら高額選手のメジャー移籍の影響もあるといい、野球界はまだまだ恵まれている。1億円プレーヤーがまだ78人もいるのだ。

球団経営の実態と言えば地上波の中継がほとんどなくなり、特にセ・リーグにはその穴埋めができていない球団が多い。選手は気づいていないかもしれないが、野球界は危機的状況なのだ。選手の年俸を全球団で一律何パーセントカット、というような荒療治が必要なくらい球界全体でみれば苦しい。現在の高額な年俸水準が、近いうちに選手自身の首を絞めることになる。

比較的余裕があったとみられる球団にも変化が出始めた。中日は観客動員アップを目指し、OBを中心とした首脳陣に切り替えた。監督、コーチ陣の人件費も大幅に下がった。

これまで盤石の動員力を誇っていた阪神にも変化がある。私は阪神を取材する機会が多く、関連のブログも発信しているため、トラファンの声がよく聞こえてくる。

昨季まで7年連続1位だった観客動員が今年は5.9パーセント減で、巨人にトップの座を明け渡した。事実上の消化試合となってから、金本知憲の引退試合で何とか客席を埋めたが、この「特需」がなければもっと減っていた。

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