/

スコアアップ工房 良いクラブとは(1) スッとアドレスできてこそ

クラブデザイナー 喜多和生

最初に質問です。「あなたは何を基準にゴルフクラブを選んでいますか」。「飛ぶ」と評判のブランドですか。憧れのプロが使っているクラブですか。それとも値段でしょうか。基準は人それぞれですが、私が考える良いクラブとは「プレーヤーに余計なことを考えさせないクラブ」のことです。

リズムが毎回変わるようでは…

わかりやすく表現すると「アドレスした後、何も考えずにスッとテークバックできるクラブ」と言い換えられると思います。

アドレスして、ボールを打とうとした瞬間、「フェースの向きはこれでいいのかな」「グリップはこうして……」とあれこれ考えてしまうクラブではいけません。

私が長年クラブを調整している中嶋常幸プロは、良いクラブの条件として「アドレスのリズムが変わらないクラブ」と言います。

ゴルファーは誰でもアドレスに入るリズムが違います。目標を定めて、スタンスを取り、ワッグルを1、2回してテークバックを始めます。

そのリズムが毎回変わってしまうようでは、良いクラブとは言えないわけです。

目標への合わせ方は人それぞれ

それでは、アドレスのとき、どのような要素から余計なことを考えてしまうのでしょうか。

例えば「フェースを目標に合わせる」と言いますが、プレーヤーによってヘッドのどの位置を目標に合わせるのかは違います。

ウッドの場合、フェース面、リーディングエッジ、トップラインで合わせる人がそれぞれいます。特にフェース面、トップライン、リーディングエッジが目標に合っていないクラブは、とても使いづらいものです。

構えたときに「どっちかな」「これかな」とやっていると、それだけでスイングのリズムは崩れてしまいます。目標に合わせるという余計な作業が加わるだけで、スッとアドレスに入れなくなってしまうからです。

アイアンのライ角を考えてみましょう。ライ角とはソールを真っすぐ構えたときにシャフトとの間にできる角度ですが、ボールのとらえ方に大きく影響します。

僅かな違和感、ミスの原因に

一般には、スライスが多いゴルファーには角度が大きいアップライトなクラブが、反対にフックが多いゴルファーには角度が小さいフラットのクラブが向いているといえます。

わずか0.5~1度の違いですが、ゴルファーは構えた瞬間に「このクラブはちょっとアップライトかな」と感じただけで、グリップを持ち上げてしまい、いわゆるハンドアップのアドレスになります。

クラブの特性に合わせ、自分本来のアドレスを変えているわけですから、どこかに無理があります。

すると、スムーズにテークバックに入れず、スイングのどこかで無意識のうちに微調整しようとします。これがミスショットにつながるケースが多いのです。

それ以外にもあります。グリップのゴムが厚くなっていて真っすぐ握る際の目安になるバックラインも「ちょっとずれているかもしれない」と感じれば、グリップが不安になります。

「どうもフェースのデザインが目標に合わせにくい」となれば、ピンに向けてボールが飛んでいくイメージを描きにくくなります。

リズム崩せばゲームに影響

ゴルフというゲームで、リズムはとりわけ大事です。いろいろな原因でリズムが崩れるということは、即座にゲームに影響するのです。

「そんなことを気にするのは、シングルクラスのゴルファーだけだろう」という声が聞こえてきそうですが、そんなことはありません。わずかなリズムの違いで、ミスショットになった経験はどなたもお持ちのはずです。

アマチュアが「良いクラブ」と思い込んでいるのは、メーカーの広告宣伝を額面通りに受け取って、何となく「これが良いクラブではないか」という印象を持っているケースが多いのではないでしょうか。

ゴルフクラブは異性に似ていると思います。好みのタイプは人それぞれです。他の人が「あの人はいい」といっても、自分の好みでなければ合いません。

自分のゴルフの羅針盤に

ゴルフクラブも同じです。いくらプロが「飛距離が出る」「コントロールしやすい」「顔が良い」と言っても、あなたの好みに合うとは限らないのです。

良いクラブは自分のゴルフの羅針盤になります。私の持論は「クラブがスイングを創る」というものです。どのようなクラブを使うかで、スイングは変わってきます。

この考えはヘッド素材がパーシモンからメタル、チタンに変わり、シャフトがスチールからグラファイトに変わった今日でも変わりません。逆に進化しているからこそ、もっとゴルフクラブについて知るべきだと思います。

なぜ良いクラブを求めるのか。それは、良いクラブでなければ、良いスイングをしたときに良いショットにならないからなのです。

使っているクラブによっては、良いスイングをすればするほど変な球になってしまったり、知らず知らずのうちにクラブに合わせた特殊なスイングをしていたりするケースを目にすることがあります。

データに振り回されないで

最近気になるのは、多くのゴルファーが雑誌などに掲載されるクラブのデータをうのみにして、そのデータに振り回されている点です。

メーカーが公表しているデータはクラブの「設計数値」であって、あなたが店頭で手にしたクラブの数値ではありません。

ですから、そうしたデータをもとにクラブを比較してもまったく意味がないのです。どうしてなのか。次回はその理由について考えてみます。

 きた・かずお 1966年ミズノに入社、クラフトマンとして中嶋常幸、鈴木規夫、岡本綾子らトッププロのクラブを手がけた。90年にゴルフクラブ工房の「ジョイメニィー」を設立。「クラブがスイングを創る」をテーマにプロ担当経験を生かし、アマチュア向けクラブも製作する。92年に製作したドライバーがクラフトマンモデルとしては世界で初めて、英セント・アンドルーズゴルフクラブにあるR&A(ロイヤル&エンシェント)のゴルフミュージアムに展示されている。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません