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女子ゴルフ、ルイスが目指す「米国勢復権」

ゴルフライター 川野美佳

日本で唯一の米女子ゴルフ(LPGA)ツアー公式戦であるミズノクラシック(三重県近鉄賢島CC、4日まで)は、ステーシー・ルイス(米)が最終日、7ストロークの大差をひっくり返して大逆転優勝を飾った。

7ストローク差を逆転し優勝

最終18番パー4。ルイスが放った第2打は、グリーンはとらえたもののバーディーチャンスとは言い難かった。

距離にしておよそ6~7メートル。右から左にゆるやかに切れるフックライン。慎重にラインを読んだルイスは思い切りの良いストロークを繰り出した。

白球は彼女が思い描いた通りに転がり、ど真ん中からカップに吸い込まれた。

「イエス!」

ほおを紅潮させながら力強く右の拳を握りしめ、ルイスは心の中でそう叫んでいた。16番から上がり3ホール連続バーディー。しかもそのすべては5メートル以上のロングパットを沈めたものだった。

17番で首位を行くイ・ボミ(韓国)に並び、18番のバーディーで逆転に成功。スタート時点の7打差をひっくり返す本人も予想だにしなかった逆転劇。

「これはパットで勝ち取った勝利」

そう思うとうれしさが沸々とこみ上げてきた。

試合中も2時間のパット練習

ショットメーカーとして名をはせ、今季もパーオン率75.6%と高い数字を誇るルイスが「自分に欠けているのはパッティングだ」と気づかされたのは、くしくも「パットが上手な(宮里)アイと一緒にラウンドしたときのこと」だったという。

精度の高いショットでチャンスを広げることはできても、最後はやはりパットが入らなければスコアにはならない。

シーズン中盤のエビアン・マスターズで朴仁妃(韓国)との優勝争いに敗れたのも「パットの技術がその水準に達していなかったから」。その反省から、ルイスは試合中も2時間のパット練習を自らに課してきた。

「ステイシーはどこまでストイックなの?」「彼女の完璧主義には頭が下がる」。ツアー仲間はルイスの徹底した練習ぶりに舌を巻いた。

ウイークポイント克服し優勝

そんな努力を積み重ねてきただけに、ウイークポイントだと自認していたパットを決めて勝ったことが何よりもうれしかったのだ。

成績をポイントに換算するプレーヤー・オブ・ザ・イヤーのポイントランクは、2位の朴に58ポイントの大差をつけ1位の座を守り、「一番欲しい」タイトルに王手をかけた。

年間を通して好成績を挙げなければ取れないタイトルだけに、宮里藍をはじめ選手は賞金女王よりむしろプレーヤー・オブ・ザ・イヤーの方を欲しがる。

「LPGAツアーではアニカ(ソレンスタム)、カリー(ウェブ)、ロレーナ(オチョア)らアメリカにとっては外国勢が長い間トップに君臨してきました。今回もし私がプレーヤー・オブ・ザ・イヤーのタイトルを取れば、1994年のベス・ダニエル以来18年ぶりにアメリカ人が年間女王に輝くことになります。それをどうしても達成したいのです」。ルイスは切実な声をあげる。

同じ質問に答えるのは飽き飽き

「どこへ行っても『アメリカ人はどうしたの?』『アメリカ勢はなぜ弱いの?』と言われ続けています。もうその質問に答えるのは飽き飽き。早く『アメリカ勢は弱い』という印象を払拭したいのです。外国勢が席巻するツアーから強いアメリカ復権を目指したい」

こう固い決意を語ったルイス。そんな彼女は難病を克服したプレーヤーのひとりである。

それは彼女が11歳になったある日。学校で行われた健診で背骨が左右に湾曲する脊椎側湾症であることが発覚した。

以来18歳で手術を受けるまで1日18時間、コルセット状の矯正器具を装着する日々をルイスは送った。

失意の日々と苦しいリハビリ

それでも背骨が改善される見込みはなく湾曲の大きさが50度に達しようとした頃、周囲の勧めでスクリューなどを挿入し脊柱を矯正する外科手術を受けることを決意する。

「痛みはありませんでした。でもそのまま放っておくと背骨で肺などの内蔵が圧迫され日常生活に支障をきたすことになってしまう」と言われて手術を受け入れたルイスだが「二度とゴルフはできないかもしれない」という悲痛な覚悟の上での選択だった。

しかも術後は激痛が伴った。「なぜ手術してしまったのだろう?」と後悔の念にさいなまれたのは1度や2度ではなかった。

失意の日々と苦しいリハビリを乗り越えた彼女は1年後、大学のゴルフに復帰。3年後には米ゴルフダイジェスト誌が選出する全米ナンバーワン・アマチュアにも輝いた。

ゴルフをできる喜びかみしめる

2009年にプロデビューした当初は思うような成績が出せず苦しんだが、11年に最強の名をほしいままにするヤニ・ツェン(台湾)との優勝争いを制してクラフト・ナビスコ選手権でツアー初優勝。メジャーチャンピオンに輝いた。

12年はミズノを含め4勝を挙げ、悲願のプレーヤー・オブ・ザ・イヤーにあと一歩のところまで迫っている。

今でも彼女の背骨にはチタンのボルトが埋め込まれている。だがそれは一度はゴルフを諦めることを覚悟した彼女にとって「ゴルフができる喜びを教えてくれたステキな相棒」。彼女の頑張りは同じ症状に苦しむ多くの人々の励みになっている。

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