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ゴルフが突然うまくなる頭の使い方(2)

 ゴルフ歴4年半。『下町ロケット』で直木賞を受賞した作家の池井戸潤さんは、多忙な執筆活動の合間に年間40ラウンドをこなす。ドライバーの平均飛距離240ヤード、年間の平均スコア90プラマイ3の腕前だが、このところやや低迷気味だとか。「方法を変えるとゴルフは突然うまくなる」という「Sメソッドゴルフ」の佐久間馨さんに一日入門した。今回はレッスン第2弾――。(日本経済新聞出版社「書斎のゴルフ Vol16」から)

池井戸 いままでで、いちばんうまくいった練習法は何ですか?

佐久間 最初からあまり練習をしたことがないんですけど、あえて言えばハンズアイコミュニケーションかな。

ボールの位置を変え、目で見て「このくらい」という感覚を養う練習。転がってくる球を打つわけじゃなくて止まっているボールを打つのだから何十発も打つ練習は一切しません。朝イチの練習もしない。1打目から当たるものだと思っています。

池井戸 1番ホールで10メートルくらいのスネークラインをOKに寄せて、楽々パーを取ったでしょう。どこかで1時間くらいパットの練習をしてきたに違いないとささやいていたんですよ(笑)。

佐久間 パットの練習もしません。そのほうが潜在能力を発揮できると思っています。

小学生くらいの子供が小川を跳び越すとき、朝練をして臨むとか、走り幅跳びの砂場で1メートル飛べるようになったから、この小川は跳び越せるという判断をしますか? しないでしょう。

「頭を使うゴルフ」とは事前によく観察し、風も含めた状況をよく見て、様々な想像を膨らませることという

「このくらいなら跳び越せる」と目で見て判断して走り出す。人間にはそんな潜在能力が誰にでも備わっているのです。

池井戸 でもまったく練習をしないで、1発目からあんなふうには寄らないでしょう?

佐久間 寄るものだと思って打つと寄りますよ(笑)。パットはストロークの強さと当て方の問題です。こうやったらこうなるというものがある。

パターヘッドを真っすぐ引いて、真っすぐ当てろという人がいる。それを几帳面にやるには練習が必要かもしれないけど、僕はそんなことはしない。

フェースを被せてストロークすると順回転がかかり、ファーストバウンドが前に転がる。だから球足の長い転がりになる。

フェースを少し開いて上から入れるとスライス回転のボールが出て止まりやすい。それを上りのラインか下りのラインかで使い分けています。

インパクト時のフェースをイメージ

佐久間 ショットも同じです。ボールの弾道は、スイング軌道とフェースの向きで決まります。

スイングではなく、インパクトの2センチでフェースがどうなっているかが重要と佐久間さんは説く

スイング軌道が打ち出す方向を決める。アウトサイドインに振ると左方向に飛び出す。そのときに少しフェースを開いてやればボールにはスライス回転がかかる。

逆にインサイドアウトに振ればボールは右に飛び出す。そのときフェース面を少し被せて当てるとフック回転のスピンがかかる。ごく単純な物理学です。

池井戸 本当に佐久間さんは簡単に打ちますよね。先ほど、最初から刻むなという話が出ましたが、短いパー4でドライバーを打つときは、どのように打つんですか。

佐久間 池井戸さんのAWの距離はどれくらいですか?

池井戸 52度のウエッジで100ヤードです。

佐久間 じゃ、50ヤードのときはどうします。AWで加減するでしょう。だったら短いパー4もドライバーを加減すればいい。3Wとかアイアンを使う人がいるけど、それって1つのスイングしかできないってことでしょう。

池井戸 1つのスイングも満足にできないのに、ドライバーを加減して打つなんて……。

佐久間 できないと、皆さん同じことをいいます。私が「曲げるボールを意図的に打てるようにしましょう」というと「真っすぐなボ―ルも打てないのに、曲げるボールなんてとても」とおっしゃる。

でもゴルフボールは曲がるようにできているんです。ディンプルのせいでスピンがかかりやすい。だから初心者は教えなくてもスライスになる。そのスライスを意図的に打てるようにしましょうというだけの話です。

池井戸 理屈はわかるんですけどね。

佐久間 真っすぐなボールは、インパクトのタイミングがちょっとズレただけで右にも左にも曲がる。

だから幅50ヤードのフェアウエーに打っていこうとすると、センター狙いで25ヤードの幅しかつかえない。

対して一方向だけを警戒して曲がるボールを打てば50ヤードのフェアウエー幅を目いっぱい使える。

この差は大きいですよね。自信があるならOB杭の外から曲げていくこともできるんですから。

池井戸 僕はもともとスライサーで、以前はいまよりスコアがまとまっていたんですよ。

池井戸さんは現在の状況について、真っすぐなボールを打てるようになるまでの過渡期と考えている

佐久間 だと思います。それが真っすぐなボールを打とうとスイングを変え始めたら、フックやチーピンも出るようになった?

池井戸 はい。だからいまは真っすぐなボールを打てるようになるまでの過渡期だと考えています。

佐久間 それはスイングを考えるから、そんな話になるんです。スイングではなくてインパクト時のフェースがどうなっているかを考えてみましょう。

インパクトは1万分の5秒の世界、ボールとフェース面が接触しているあいだは2センチくらいしか動いていないのですが、その2センチの幅ですべてが決まる。

あとは空中を飛んで行くボールを見送るだけ。それなのに、ほとんどの人は2センチの世界がどうなっているかに興味がない。

グリップがどうで、トップの位置や体重移動はどうの、という話ばかりしている。もっと2センチの世界をイメージするようにすると、ゴルフは間違いなく変わります。

 いけいど・じゅん 作家。1963年岐阜県生まれ。慶応義塾大学卒。『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞。『鉄の骨』(講談社文庫、NHKドラマ『鉄の骨』原作)で第31回吉川英治文学新人賞。『下町ロケット』(小学館、WOWOWドラマW『下町ロケット』原作)で第145回直木賞。主な作品に、『空飛ぶタイヤ』(講談社文庫、WOWOWドラマW『空飛ぶタイヤ』原作)、『鉄の骨』『BT'63』『不祥事』『銀行総務特命』『銀行狐』(以上、講談社文庫)、『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『シャイロックの子供たち』『株価暴落』『かばん屋の相続』(以上、文春文庫)、『最終退行』(小学館文庫)、『ルーズヴェルト・ゲーム』(講談社)、『ロスジェネの逆襲』(ダイヤモンド社)などがある。11月には最新刊『七つの会議』(日本経済新聞出版社)が発売になる。
 さくま・かおる 1955年生まれ。「ゴルフ科学研究所」主宰。ゴルフスイング解析の第一人者。NLPメンタルトレーナー。科学的にスイングメカニズムを解明し、誰でもパープレーができる「Sメソッドゴルフ」を確立した。また、競技で培った自らの経験を基に、プレー中、100%実力が発揮できる自己対話法「NLPゴルフ」(神経言語プログラミングをもとに開発)を構築した。2010ゴルフダイジェストアワード レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。Sメソッドゴルフ普及協会名誉顧問。 著書に『ナイスショットはいつでも打てる!』『ゴルフはパープレーが当たり前!』(共に日本経済新聞出版社、DVDも発売中)など多数。

(次回掲載は11月15日 文:高橋健二 撮影協力:飯能ゴルフ倶楽部)

書斎のゴルフ VOL.16―読めば読むほど上手くなる教養ゴルフ誌

著者:
出版:日本経済新聞出版社
価格:1,280円(税込み)

ゴルフはパープレーが当たり前!―Sメソッドゴルフ・スコアメイキング編

著者:佐久間 馨.
出版:日本経済新聞出版社
価格:1,575円(税込み)

七つの会議

著者:池井戸 潤.
出版:日本経済新聞出版社
価格:1,575円(税込み)

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