ゴルフが突然うまくなる頭の使い方(2)

池井戸 いままでで、いちばんうまくいった練習法は何ですか?
佐久間 最初からあまり練習をしたことがないんですけど、あえて言えばハンズアイコミュニケーションかな。
ボールの位置を変え、目で見て「このくらい」という感覚を養う練習。転がってくる球を打つわけじゃなくて止まっているボールを打つのだから何十発も打つ練習は一切しません。朝イチの練習もしない。1打目から当たるものだと思っています。
池井戸 1番ホールで10メートルくらいのスネークラインをOKに寄せて、楽々パーを取ったでしょう。どこかで1時間くらいパットの練習をしてきたに違いないとささやいていたんですよ(笑)。
佐久間 パットの練習もしません。そのほうが潜在能力を発揮できると思っています。
小学生くらいの子供が小川を跳び越すとき、朝練をして臨むとか、走り幅跳びの砂場で1メートル飛べるようになったから、この小川は跳び越せるという判断をしますか? しないでしょう。

「このくらいなら跳び越せる」と目で見て判断して走り出す。人間にはそんな潜在能力が誰にでも備わっているのです。
池井戸 でもまったく練習をしないで、1発目からあんなふうには寄らないでしょう?
佐久間 寄るものだと思って打つと寄りますよ(笑)。パットはストロークの強さと当て方の問題です。こうやったらこうなるというものがある。
パターヘッドを真っすぐ引いて、真っすぐ当てろという人がいる。それを几帳面にやるには練習が必要かもしれないけど、僕はそんなことはしない。
フェースを被せてストロークすると順回転がかかり、ファーストバウンドが前に転がる。だから球足の長い転がりになる。
フェースを少し開いて上から入れるとスライス回転のボールが出て止まりやすい。それを上りのラインか下りのラインかで使い分けています。
■インパクト時のフェースをイメージ
佐久間 ショットも同じです。ボールの弾道は、スイング軌道とフェースの向きで決まります。

スイング軌道が打ち出す方向を決める。アウトサイドインに振ると左方向に飛び出す。そのときに少しフェースを開いてやればボールにはスライス回転がかかる。
逆にインサイドアウトに振ればボールは右に飛び出す。そのときフェース面を少し被せて当てるとフック回転のスピンがかかる。ごく単純な物理学です。
池井戸 本当に佐久間さんは簡単に打ちますよね。先ほど、最初から刻むなという話が出ましたが、短いパー4でドライバーを打つときは、どのように打つんですか。
佐久間 池井戸さんのAWの距離はどれくらいですか?
池井戸 52度のウエッジで100ヤードです。
佐久間 じゃ、50ヤードのときはどうします。AWで加減するでしょう。だったら短いパー4もドライバーを加減すればいい。3Wとかアイアンを使う人がいるけど、それって1つのスイングしかできないってことでしょう。
池井戸 1つのスイングも満足にできないのに、ドライバーを加減して打つなんて……。
佐久間 できないと、皆さん同じことをいいます。私が「曲げるボールを意図的に打てるようにしましょう」というと「真っすぐなボ―ルも打てないのに、曲げるボールなんてとても」とおっしゃる。
でもゴルフボールは曲がるようにできているんです。ディンプルのせいでスピンがかかりやすい。だから初心者は教えなくてもスライスになる。そのスライスを意図的に打てるようにしましょうというだけの話です。
池井戸 理屈はわかるんですけどね。
佐久間 真っすぐなボールは、インパクトのタイミングがちょっとズレただけで右にも左にも曲がる。
だから幅50ヤードのフェアウエーに打っていこうとすると、センター狙いで25ヤードの幅しかつかえない。
対して一方向だけを警戒して曲がるボールを打てば50ヤードのフェアウエー幅を目いっぱい使える。
この差は大きいですよね。自信があるならOB杭の外から曲げていくこともできるんですから。
池井戸 僕はもともとスライサーで、以前はいまよりスコアがまとまっていたんですよ。

佐久間 だと思います。それが真っすぐなボールを打とうとスイングを変え始めたら、フックやチーピンも出るようになった?
池井戸 はい。だからいまは真っすぐなボールを打てるようになるまでの過渡期だと考えています。
佐久間 それはスイングを考えるから、そんな話になるんです。スイングではなくてインパクト時のフェースがどうなっているかを考えてみましょう。
インパクトは1万分の5秒の世界、ボールとフェース面が接触しているあいだは2センチくらいしか動いていないのですが、その2センチの幅ですべてが決まる。
あとは空中を飛んで行くボールを見送るだけ。それなのに、ほとんどの人は2センチの世界がどうなっているかに興味がない。
グリップがどうで、トップの位置や体重移動はどうの、という話ばかりしている。もっと2センチの世界をイメージするようにすると、ゴルフは間違いなく変わります。
(次回掲載は11月15日 文:高橋健二 撮影協力:飯能ゴルフ倶楽部)