ゴルフが突然うまくなる頭の使い方(1)

佐久間 作家の方はいつも締め切りに追われて、なかなかゴルフをする時間が作れないというイメージがあるのですが、池井戸さんの最近のゴルフの調子はどうですか?
池井戸 いやもう絶不調です。ここ数回のラウンドでは100をたたくこともありました。
佐久間 今回のテーマの「頭を使うゴルフ」というと、池井戸さんはどのようなイメージが浮かびますかね。
池井戸 頭を使う? うーん、スイングでは頭を動かすなといいますけど(笑)。一般には刻むゴルフ、というイメージかな。
佐久間 ドライバーを使わずに7番アイアンで打てとか。そんなの、つまらないよね。

池井戸 佐久間さんもそう思うんですか?
佐久間 それはそうでしょう。ドライバーはゴルフの醍醐味だもの。それを使うなといったら、自動車レースでスピード出すな、というようなものでしょう。
池井戸 意外でした。僕は最初からアイアンを使えとか言われたらイヤだなと(笑)。
佐久間 前半のハーフは45でしたね。ご自分では今日のゴルフはどんな印象ですか?
池井戸 いつも調子よくないんですよ。
佐久間 ゴルフはだいたいそうです。いつも調子いいです、という人はまずいない(笑)。
池井戸 いつも同じパターンのゴルフで、自分のゴルフに飽き始めているんです。僕のゴルフは、あまりパーオンがない。

ナイスショットしても2打目がバンカーに入ったりする。もともとパーオンを狙っていないところもあるんですけどね。
■ダブルボギーやトリプルボギー、徹底して避ける
佐久間 無理にパーオンを狙わないのは90を切る1つの方法ではあるんですよ。前半のゴルフで、ダボが1つありましたね。
池井戸 はい。
佐久間 頭を使うゴルフでは、スコアを大きく崩すダブルボギーやトリプルボギーを打たないことをまず考えます。
戦略的にディフェンスとオフェンスを使うということ。たとえば2打目でグリーンを見たとき、手前にアゴの高いバンカーがあって、ヘタをするとダブルボギーになるぞ、というイメージが湧く。
でも、その裏側にバーディーのイメージがあるから、つい狙っちゃうんだけど、結果、バンカーに下りて行って目玉の状況を見たときに「ああ、やっぱり」と気がつく。
2打目を打つ前に気づくとよいのですけど、欲があるからつい行ってしまう。
池井戸 状況は見るんですよ、一応。
佐久間 でも、だいたいピンしか見ていないですね。きちんと景色を見ていないし、見ても深刻に考えていない。
「うまくいけばピンハイにつく」とか、「バンカーに入ってもなんとかなるだろう」と、その程度にしか考えていない人が多いですね。
池井戸 ただ、バンカーは実際に行ってみないとわからないでしょう?
佐久間 僕は事前にチェックしておきます。スタートホールの脇には9番ホールとか18番ホールがありますね。
そのグリーン周りのバンカーを見て、砂の量は多いか少ないか、目玉になりやすい砂質かを確認しておく。それだけでもバンカー越えを狙うときの心構えが違ってきます。

池井戸 そこまで見ておく?
佐久間 はい。ほかにも考えることはあります。たとえばプロのトーナメントを開催したコースは砂の量が多く、ふかふかの砂になっている場合が多い。
逆に経営の思わしくないコースはバンカーの砂が薄いことが多い。
ふかふかの砂のバンカー越えのピンをショートアイアンで攻めるとき、アゲンストの風が吹いていたら、ピンが手前でもギリギリを狙わない。
風に戻されて真上から落ちてくると、目玉になる確率が高いからです。
池井戸 なるほど。
佐久間 そうしたことにちょっと気をつけると、いまの池井戸さんのスイングなら十分80台前半で回ることは可能です。
■打つまでの状況観察、情報収集が大切
池井戸 そうはいっても僕は3回に2回はミスショット。佐久間さんは5回に4回はナイスショット。頭のゴルフを論じる前に、それを何とかしたいですよ。
佐久間さんのゴルフはうますぎて盗めない。ウエッジの距離感が絶妙で、あのウエッジがあれば僕だってと思っちゃう。
佐久間 それだって打つ前にしっかりボールのライやグリーン上の状態を観察しているからできるんですよ。
ボールは芝生の上に浮いているか沈んでいるか、芝生は逆目か順目か、ラフだったらヘッドが抜けるかどうか、グリーンは受けているか、さまざまな状況をよく観察してミスの出にくい打ち方とクラブを選択しているから成功の確率が高いんです。

同じことは2打目のクラブ選択についてもいえます。2打目地点に到達するまでに上空の風向き、風の強さはもちろん、周囲の木の高さ、ボールのライ、足元のアンジュレーション、どこに打ってはいけないか、グリーンを外したときにどこならパーを取りやすいか? ありとあらゆる情報を収集してインプットしておく。
「頭を使うゴルフ」とは事前によく観察をし、風も含めて状況をよく見て、さまざまな想像を膨らませることなのです。
ショット以前に、そういうことにどこまで気を配るかが大前提になります。ある意味で打つまでの状況観察、情報収集が8割を占めると言っていい。
大たたきするゴルファーは、残り距離だけでクラブ選択をしている。あとは参考にするとしても風向きくらいでしょう。
打つという動作は皆さんあまり違わない。打つ前にどれだけ頭を使うか、その違いが大きいように思いますね。
池井戸 僕の場合、好調だったころは100ヤード以内で事件が起きていた。いまは10ヤード以内で起きる。判断ミスもある。9番アイアンで転がせばいいのに、PWで打ってトップしている。
佐久間 僕は、こんなふうに打つとミスが出ない、という工夫をしながらアプローチしています。だからミスをしないだけですよ。
(次回掲載は11月8日 文:高橋健二 撮影協力:飯能ゴルフ倶楽部)