「ガンダム駅」なぜできた アップル地図騒動の真相

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2012/10/17 7:00
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■古いデータを結合した疑い

古橋氏は、「OSMのデータを調べたところ、アップルは2年以上も前に取得した地図データを更新せず、そのまま利用している痕跡があった」と指摘する。

古橋氏が調べたところ、使われていたのはなんと「2010年以前に入力された公園の敷地データ」。日本以外の地図についても、同様に古いデータが使われていた。10年ごろにOSMのデータをコピーして独自のデータセットを作り始め、以後最新データを取得することなくそのままリリースしたのではないかと氏は推測している。

デジタル地図は複数のデータを結合して作られることが多い。仕様によっても異なるが、日本地図の場合は道路などの広域データ(縮尺2万5000分の1)に建物などの都市の詳細データ(2500分の1)、ナビゲーション用の道路ネットワークデータなどを結合して1つの地図にするのが一般的だという。今回のアップルの騒動で疑われるのは、この結合作業時に複数のミスが起きたのではないかということだ。

測地系の変換や名寄せをせず、重複した「東大前」と「とうだいまえ」(参考:笹田忠靖氏作成「ここがヘンだよ!iOS6MAP」)

測地系の変換や名寄せをせず、重複した「東大前」と「とうだいまえ」(参考:笹田忠靖氏作成「ここがヘンだよ!iOS6MAP」)

まず考えられるのが「測地系」の変換ミスだ。日本では02年まで、緯度経度を日本独自の基準(日本測地系)で表示してきたが、全地球測位システム(GPS)などに対応した国際基準(世界測地系)と450メートル程度のずれがあった。国土地理院は02年4月1日から「世界測地系」に移行することを決めたものの、国内の地図データはかつての日本測地系をもとに作られているものもある。

異なる測地系のデータを結合する場合は、経緯度を変換する処理などであらかじめずれを補正する必要がある。複数枚のセルを重ね合わせて、1枚の地図を作るとイメージしてみてほしい。それぞれのセルの経緯度を示す基準(測地系)が異なれば、重ね合わせたときに正しく重ならず、バラバラの位置にマッピングされてしまう。

アップルの地図はこの処理を怠り、旧日本測地系の経緯度のまま、正しい位置から450メートルほどずれて表示される駅などが散見される。他の世界測地系のデータにもその駅の情報が入っていたのか、「東大前」と「とうだいまえ」など、1つの駅が重ならず2カ所(世界測地系の経緯度と旧日本測地系の経緯度)に表示されてしまうこともあるようだ。

さらに読み仮名と漢字などの重複データの名寄せや、駅と商業施設のカテゴリー分けについても誤りが見られ、デジタル地図の知識を持ったエンジニアが担当していない可能性もあるほどの「初歩的なミス」(古橋氏)が重なっているという。

青梅線上にある「パチンコガンダム駅」

青梅線上にある「パチンコガンダム駅」

インターネット上で騒がれた「ガンダム駅」の場合はさらに複雑だ。数百メートル離れた場所にある「パチンコゴールドエックスあきしま」によると、同店は2006年ごろまで「パチンコガンダム」という名前で営業していたという。6年ほど前の古い建物データが使われている可能性が高い上、何らかの原因で位置が線路上にずれた。「駅」という公共施設と「商業施設」の属性は大きく異なるが「何らかの自動処理などで『線路の上に配置される施設情報は駅』と置き換わってしまった可能性もありうる」(古橋氏)。他にも「マクドナルド駅」など、同様に店が駅に置き換わる事例が見られた。

万が一こうした処理がされてしまった場合でも「通常は主要都市のサンプリングチェックで気づくはず」(森社長)。今回はそれすらされていない可能性が高く「ありえないエンジニアリングプロセスだ」(同社長)。

■「唯我独尊」で広げた傷口

エンジニアリングのプロセスだけが問題だったわけではない。森氏や古橋氏は、アップルの「唯我独尊」的な態度にも問題があったと指摘する。

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