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阪神、理想と現実の大きすぎた落差

秋はプロ野球チームの明暗がはっきり分かれる季節。日本一を目指して戦う上位チームを見上げながら、阪神は寂しく来季へ向けた世代交代を進めている。いくつもの誤算が重なった末の低迷ではあるが、和田豊監督が自覚していた理想と現実のギャップが、そのまま結果となって表れたシーズンでもあった。

4番不在、欠ける機動力

「まだ選手たちはクライマックスシリーズ(CS)に向けて必死に頑張っている真っただ中なので、具体的なことには触れたくないが……」。9月6日の記者会見で、新設のゼネラルマネジャー(GM)に就任した中村勝広氏はそう前置きしながらも、来季に向けたチームの課題を次々と口にした。

「真の4番が不在」「1、2番の機動力が欠けている」。Bクラスが確定したわけでもないのに、やや気の早い総括と敗因分析という趣だった。

そもそもシーズン終盤という時期に新GMが就任すること自体、すでに球団が来季への準備に取りかかっている証しだ。

球団と対照的な和田監督

GM就任会見当日の6日の試合を終えた時点で、5位・阪神と3位・広島のゲーム差は7.5。大きく離されてはいたものの、シーズン終了まではまだ1カ月あり、大きく連勝すれば巻き返しの目もあった。

妙に物分かりよくBクラスを受け入れる球団に対して、「僅かでも可能性がある限りチーム一丸となって戦う」と繰り返し、仮に建前としてもファイティングポーズをとり続ける和田監督が孤軍奮闘しているような構図に映った。

もっとも、その和田監督も心中に葛藤や矛盾を抱えながらの采配だった。昨年10月、所信表明で掲げたのは「広い甲子園という器に合った守りの野球」。昨年の統一球導入によって、一段と守備の重要性が増す中では当然の方針だが、それは「現有戦力を考えると、すぐ明日からというわけには……」というただし書き付きだった。

攻撃偏重型の主力選手

チームの背骨となる主力は最年長の金本を筆頭に、城島、新井貴らベテランばかり。いずれも捨てがたい長打力を備えながら、故障の影響で守備に難があるという「攻撃偏重型」の選手たちだ。

彼らの守備力を今から鍛えるわけにもいかず、かといって代わりがいるわけでもない。前年まで選手、コーチとして27年間、縦じまのユニホームを着続けてきた和田監督だから、若手・中堅がいまだ力不足ということは重々承知だ。早急なチーム再編は弱体化に直結する。

坂井信也オーナーが「ぜひとも優勝するという目標で戦ってもらいたい」とハッパをかけたように、2003、05年のリーグ優勝の味を忘れられない周囲からの重圧は強迫観念のように指揮官を縛った。

下降期のチーム率いる難しさ

プロスポーツであれば勝利を目指すのは当然としても、下降期にあるチームを率いて、優勝という目標からの逆算で考えなければならない難しさ。

「勝つことでチームを変えて、自分の理想に近づけていきたい。勝つためには、ひとまず自分を抑えるところもある。やりたい野球をやって負けるくらいなら、我慢してでも何とか勝ちたい」

そう開幕前に語ったように、スタートの時点でいきなり自分を抑えて、理想を捨てざるをえなかったところから和田監督の苦悩は始まっていた。

もちろん、初めから負け戦を覚悟していたわけではないだろう。打線がしっかり打ってくれれば、上位に食い込む力はある。そのもくろみは開幕当初こそ当たったが、ベテラン頼みのチームの勢いは長くは続かなかった。

打力に懸けたチームが打撃不振

3割打者どころか、主力は軒並み打率2割5分前後を行ったり来たり。本塁打はリーグ最少の53本。監督が口癖のように「あと一本が……」と嘆いた通り、勝負強さにも欠いた。

昨年の成績と比較すると、マートンは3割1分1厘→2割5分7厘。鳥谷は3割→2割6分1厘。平野が2割9分5厘→2割4分3厘(いずれも24日現在)。采配うんぬんという以前に、打力に懸けたチームが打撃不振に陥ってしまっては戦いようがなかった。

加えて、ある程度織り込み済みとはいえ懸案の守備の綻びも相次いだ。右肩の故障でめっきり守備力の落ちた金本だけでなく、打撃で悩むマートンがたびたび集中力を欠いた拙守を見せてチームの足を引っ張った。

「打倒巨人」を胸に前進

理想を捨てて勝ちにいき、勝てなかった1年。背伸びをして優勝をつかみにいった結果、足場から転げ落ちたシーズンだった。選手の側に目を向ければ、衰えゆくベテランの力に、ようやく伸び始めた若手・中堅の力が追いつかなかったともいえる。

巨人が圧倒的な強さでリーグ優勝を決めた21日の夜、和田監督は「東京ドームでは1勝しかできない屈辱のシーズンだった。『打倒巨人』を胸に前へ進む」と再出発の決意を述べた。中村GMは「常勝チームとしての再建は待ったなし」と意気込みを語る。常勝チームなどという遠大な理想にたどり着くためには、まずBクラスに定着しつつある現実に目を向けることが出発点となる。

(本池英人)

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