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異国の地でダービー馬生産 ハリー・スウィーニー(上)

残り200メートルで内から先頭に立ったディープブリランテを、外から一歩一歩フェノーメノが追い詰める。息をのむような競り合いの末、2頭がほぼ並んでゴールへ。

親しみやすいよう牧場は「パカパカファーム」と名付けた

5月27日の日本ダービー(東京競馬場)。粘ったディープブリランテがわずか23センチの差で2009年生まれのサラブレッド7572頭の頂点に立った。

2001年に北海道の日高地方で牧場を開く

全ホースマンが目標とするこの特別なレースの表彰式に、かっぷくの良い一人のアイルランド人の姿があった。ディープブリランテを生産したパカパカファームの代表、ハリー・スウィーニー(51)だ。

1990年に日本の地を踏み、2001年に自分の牧場を北海道の日高地方に開いた。何十年と競走馬を生産していても、ダービーとは無縁の牧場が多いことを考えると、短期間での優勝は快挙といえる。異国の地で、英語まじりの日本語を操りながら、11年で目標の一つを成し遂げた。

東京競馬場でレースを見守ったスウィーニーの感想は「アンビリーバブル」。というのもディープブリランテにはダービーの2400メートルは「距離が長いと思っていた」からだ。同馬は前へと行きたがる気持ちが強く、騎手との折り合いを欠きやすい。ダービーの前に走った2000メートルの皐月賞でも、こうした面をみせて敗れていた。

スウィーニーはてっきり、ダービーの3週間前に行われる「(1600メートルの)NHKマイルカップに使うのかと思っていた」という。

ダービー効果…ブリランテの妹は高値で落札

「ほかのG1を勝つのと、ダービーを勝つのとでは、周りの反応が全然違う」とディープブリランテを管理する調教師、矢作芳人が言うように、スウィーニーの周囲にも変化が表れた。

7月上旬の競走馬の競り市、セレクトセールでは、今年生まれたディープブリランテの妹が1億4500万円の高値でオーストラリア人馬主に落札された。ディープブリランテの価格は3年前の同じ競り市で3100万円。「まさにダービー効果ですね」とスウィーニーは笑う。

肉牛を飼育し、小麦を生産する農場に生まれた。動物が好きで獣医の道へ。日本行きの声がかかったのはアイルランドのカラ競馬場で働いていた時だ。北海道の牧場から獣医師として招かれた。

当時は「北海道はローマと同じくらいの緯度だから、暖かいと思っていた」というほど、日本を知らなかった。

日本は「チャンスのある国」

日本で働き、諸外国と比べて高い競馬の賞金などをみているうちに「チャンスのある国」と感じるようになった。欧州トップクラスの競走馬の生産地、アイルランド出身だけに、自らが得た知見や信条に従って馬づくりをすれば、チャンスをものにできると考えた。

日本で馬を買い、海外の競り市で転売するなどして元手をため、11年前に牧場を設立。親しみやすく、いろんな人に覚えてもらえる牧場名にしようと「パカパカファーム」と名付けた。

いまは妻と4人の子供をアイルランドに残し単身、日本で競走馬生産に励む。「寂しい」と漏らしながらも、ジャパニーズドリームを求めるその顔には、充実感がみなぎる。

(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊9月18日掲載〕

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