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国際大会なくして日本球界に未来なし

ロンドン五輪では、たくさんの感動があった。水泳、レスリングやバレー、眠い目をこすりながらもファンをテレビにかじりつかせた男女サッカーの活躍。国を代表する選手が、国の名誉や誇りをかけて戦うということが、こんなにも人々を魅了するのか、と改めて思った。そして、五輪という舞台で輝いた各競技から、日本のプロ野球に目を戻したとき、何とも不安な気持ちになったのだ。「これからの日本球界に未来はあるだろうか」と……。

五輪から外れて世界へ広がりなくなった野球

プロ野球の選手会が来年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)への不参加を決めた。選手会の主張には一理あって、大会の事実上の主役である日本への収益の配分が少なすぎるというのはもっともな意見だ。

ただ、このような国際大会に参加しないとなると、ますます日本の野球界の衰退につながるのではないか、と危惧(きぐ)する。

アメリカという国を考えると、アメリカ主体の考えは変わりそうにない。だったら、WBCにとって代わるような大会を日本が中心になって開催したら、どうだろうか。国内だけに目を向けず、グローバルな視点で考えないと日本の野球界に未来はない。

サッカーは五輪、欧州選手権、クラブワールドカップ、そして、何といってもワールドカップがあり、毎年、大きなイベントがある。それに対して野球は五輪から外れて以来、世界への広がりが全く無くなっている。

小さな世界に閉じこもることの弊害

小さな世界に閉じこもることの弊害は日本国内でも出ている。その最たる例がクライマックスシリーズ(CS)だ。セ・パ12球団中6チームが進出できるという制度に疑問を感じる。144試合を戦い、その半分のチームがプレーオフに出られるという悪しきシステムをプロ野球はつくってしまったのだ。

米大リーグでは東、中、西の各地区優勝チームに、各地区2位のうちの最高勝率チーム(ワイルドカード)を加えた4チームでア、ナ両リーグのプレーオフを行う。ここでリーグ優勝が決まる。このリーグ優勝チーム同士がワールドシリーズを戦うという、実にシンプルなプレーオフ制度だ(今年から各地区の優勝チームを除いた勝率上位の2チームが1試合戦って、勝者が地区シリーズに進出する)。

くどいようだが、米大リーグではポストシーズンに進む8チーム中6チームは各地区の優勝チームであるということに注意したい。

2010年の日本シリーズは、レギュラーシーズン3位のロッテが制して日本一になった

レギュラーシーズンの価値は…

メジャーのレギュラーシーズンは162試合。ワールドシリーズを目指す戦いはトーナメントになるが、その参加資格はあくまでレギュラーシーズンの長丁場の戦いの結果が尊重されるということなのだ。

日本の球団はどんなビジョンがあって、この制度を採用したのだろう。各リーグの3位までがポストシーズンに進めることにしたため、「史上最大の下克上」が話題になった一昨年のロッテのようにレギュラーシーズン3位から日本一というケースも出てくる。ロッテの健闘はたたえられるが、そういうシステムがいいかどうかは別問題だ。

例えば、レギュラーシーズンを負け越しても、3位に入り、日本一になる可能性もある。五輪では敗者復活戦から勝ち上がっても銅止まり。プロ野球は敗者復活戦から金メダルもあり、という不可思議なことになってしまったのだ。

プロ野球の視野の狭さ

私が現役のころはシーズンの優勝が第一の目標であって、2位以下はみんな敗者だった。「3位以内」などという目標設定はあり得なかった。

秋季練習から自主トレ、キャンプ、オープン戦。なんのためにこれだけの準備を重ねるかといえば、リーグ優勝を果たして、日本シリーズに進むというただ一つの目標のためだった。

日本のレギュラーシーズンは144試合。その結果をいとも簡単にひっくり返してしまうやり方は、自分たちで自分たちのシーズンの値打ちを下げることになるという点に、どうしてだれも言及しないのだろう。

自己完結してしまっているプロ野球の視野の狭さが露呈している。

また、もう一つこのCSのマイナス点をあげるとすると、現在低迷する阪神のようなチームは、昔なら目標設定を来年に定め、若手育成や来季をにらんだ選手起用をするはずだが、3位ならまだ可能性があるために、勝ち負けにこだわらざるを得ない状況になっている。

中長期的なチーム作りということを考えた場合、負けが負けでなくなるCSは、危険な制度だといえる。

責任の所在もボヤけたものに

3位までならOKというシステムでは、責任の所在もボヤける。そして明確な「負け組」とならずに責任者が責任を回避できる。

プレーオフをやるなら、かつてのパ・リーグのように前後期制にする方がまだ理にかなっている。交流戦やオールスターまでを前期、それ以降を後期とし、前期の優勝チームと後期の優勝チームがリーグ優勝を争う。その勝者が日本シリーズで戦う。

また、別な案だが、セ・パの前後期覇者の4チームがたすきがけで戦うのもいい。

結果的にどちらかのリーグだけが勝ち残ってもそれはそれでいい。前期であれ後期であれ、とにかく優勝チームだけが日本一を手にする権利を持つというところが肝心だ。

前後期の優勝チームが同じ場合などの扱いについては別途考えればいいのである。

一時の利益を追いかけるのが得策かどうか

3位に入ったら、とりあえず合格点というやり方は本当の勝負とはいえない。今は盛りあがっているようにみえるファンもやがてはペナントレースの薄っぺらさに気付き、プロ野球から離れていくと私は思う。

もちろんCSにも消化試合を少なくするといった利点はある。ただ、長期的視点に立ったとき、CSであがる一時の利益を追いかけるのが得策かどうか。

コミッショナーはじめ、プロ野球を経営する方々に大きなビジョンを持った方がおられるかどうかというところにかかっている。

改革なくして、昔のような魅力あるプロ野球にはならない。

今、ビジョンを持ったリーダーが求められている。現在のプロ野球界は"大相撲化"するかどうかの分岐点に立っていると思う。

東南アジアでも野球は不毛なわけではない

日本という島のなかでは"メジャー"かもしれないが、国際的にはまったく孤立している、という意味での大相撲化だ。

大相撲は文化的な背景を担っているからそれでも廃れないかもしれないが、野球の場合は衰退への道をまっしぐら、ということになりかねない。非常に心配している。

皆さんは、知らないかもしれないが、東南アジアでも野球は不毛なわけでなく、この地域の11カ国中、少なくとも9カ国は形だけでなく、ナショナルチームがあり、マイナーなスポーツだが活動している。

その他、オーストラリア、中南米の国々、イタリア、フランス、カナダ、韓国、台湾、そして日本。 こんなにも、野球をしている国がある。アメリカを除く国で 国際試合を開催したらどうだろうか?

アメリカが我が国も参加させてくれ、というような国際大会を日本が中心になって催したら、どんなに素晴らしいことだろう。野球をする子供たちに どんなに夢を与えることができるだろうか、と思う。

子供たちに夢を与えられないスポーツは衰退

子供たちに夢を与えられないスポーツは衰退する。プロ野球がもっともっと魅力あるものになり、子供たちにもっと夢を与えられるものにするには、五輪への競技復活と子供たちが目標にするような国際大会の開催が絶対に必要不可欠だと私は考える。

そのためにも、明確なビジョンを持ったリーダーがプロ野球界には必要なのである。 球界にそんなに時間は残されていない。

(野球評論家)

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