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「広がるネット中継、五輪の楽しみ方は転換点」

商業五輪の父・ユベロス氏に聞く

ロンドン五輪が27日に開幕する。テレビとインターネットを併用して本格的に放送され、ソーシャルメディアが世界中に普及して初めての大会となる。五輪の運営環境はどう変わるのか。1984年ロサンゼルス五輪を大会組織委員長として成功させ、「商業五輪の父」と言われるピーター・ユベロスさん(74)に話を聞いた。

IOCとの調印文書を披露するユベロス氏。84年ロス大会で商業五輪の基盤を築いた

放映権の担い手、クロスボーダー化

――ロンドン五輪では米英でネット中継が一般化する。五輪ビジネスはどう変わるか。

「メディアの権利を収入の軸とするモデルは引き続き堅固だ。放映の担い手は多様化しており、今後はそれらがクロスボーダーしていくだろう。放映権の再販市場が広がっていくかもしれない。グループで地域の放映権を購入し、必要な部分を小分けにして販売していく、といった形が想定できる」

「五輪の楽しみ方には転換期が来ている。ロンドン大会では携帯電話やほかの個人端末でネットを介して見る人が飛躍的に増える」

「技術の進化はすさまじく速く、誰にも止められない。何事にも飽きっぽい若年世代への対策も重要となる。ただ、これらもメディアの一部。事業モデルの構造自体を変える要素になるとは考えにくい」

ロンドン五輪開会式の予行演習を終え、五輪スタジアムを後にする出演者ら(19日)=共同

排他的な権利を提案し、競争を生み出すこと

――オリンピックビジネスの本質はどこにあるのか。

「五輪ビジネスのポイントは、価値のある排他的な権利を提案し、その席を巡る競争を生み出すことにある」

「収入の柱はスポンサー権とテレビ放映権だが、より強い企業になりたければ五輪への参加を選択する、と思わせるモデルを確保することが重要だ」

「ロス大会は最終的に2億ドル以上の余剰金を出したが、大赤字だった76年モントリオール五輪からの改革は簡単ではなかった(80年モスクワ五輪は米国など西側諸国がボイコット)。米国とオーストラリアのテレビ放映権がうまく売れ、計画は軌道に乗った。モントリオール大会で数百社あった協賛社は20社以下に絞り込み、成長力のある国際企業に限定した」

ロンドン五輪の開閉会式や陸上競技が行われる五輪スタジアム=共同

――ロスモデルを国際オリンピック委員会(IOC)が引き継ぎ、五輪は成長した。どこまでを見通していたのか。

「カーター大統領が80年モスクワ五輪のボイコットを表明したとき、我々は行き詰まった。米国民に五輪開催を歓迎するムードはなく、政府も州も財政支援を拒絶した。このため、公的資金に頼らないモデルを作るしかなかった。費用もそうだが、混乱が起これば州兵を雇うためにお金を払わなければならなかった。収入源の確保に頭を巡らせた」

「成功を引き出す道がないか、とにかくアイデアを出し合った。例えば、開会式と閉会式はロスで行い、卓球は中国、水球は東欧など競技ごとに人気のある国で行えばどうか、といった案すらあった」

「試行錯誤の中で、今のモデルに近い形が動きはじめた。競争を引き出す方法がようやく見つかったわけだ」

ロンドン五輪は非常に評価できる

――収入拡大を下支えしているのは米国向けの放映権料だ。4大会40億ドル規模となった米放映権の水準をどう見るか。

「ロンドン五輪は整備した施設を大会終了後も完璧に活用するため、非常に評価できる」と語るユベロス氏

「2016年のリオデジャネイロ大会がとりあえずのピークではないか。ただ今後、北米で五輪が開催されれば、さらに高騰する可能性はある。今春、MLBのロサンゼルス・ドジャースが20億ドルで買収されたが、現オーナーはその半分近くを8~10年の放映権料で回収できる。米国でのスポーツ放送への関心は相変わらず高い。需要がある限り、先行きは明るい」

――五輪ビジネスの今後で懸念されることは。

「収入面というより、支出面をコントロールできるかだ。開催する都市や政府が(大会を大きく見せるために)余分な施設を作っていると機能しなくなる」

「その点、ロンドン五輪は非常に評価できる。五輪のために整備した施設を大会終了後も完璧に活用するからだ。"無駄"な施設が見受けられた過去3大会からの大きな前進で、ロンドンモデルといっていい」

(聞き手は北西厚一)

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