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五輪サッカー、メンバー発表から浮かぶもの

サッカージャーナリスト 大住良之

ロンドン・オリンピックのサッカー競技がいよいよ25日に始まる。その男女代表チームのメンバーを2日、日本サッカー協会が発表した。男女とも18人。さらに男女とも4人ずつのバックアップメンバーも選ばれ、大会中もチームに帯同することになる。

「23人」、少なくとも「21人」が必要な大会だが…

オリンピックのサッカーは、男子が16チーム、女子が12チームが出場して行われる。決勝あるいは3位決定戦まで進むと、男女ともグループステージ3試合、準々決勝以降のノックアウトステージも3試合、計6試合を16あるいは17日間という短期間のうちにこなさなければならない。

この大会を18人の選手でこなせというのは、非常に無理がある。選手たちが力を出し尽くせるきちんとしたトーナメントにするためには、理想をいえば男子ワールドカップのように23人(GK3人、フィールドプレーヤー20人=各ポジションに2人)、少なくとも女子ワールドカップのように21人(GK3人、フィールドプレーヤー18人)が必要だろう。

U―23五輪代表
GK権田 修一FC東京
安藤 駿介川崎
DF徳永 悠平☆FC東京
吉田 麻也☆VVVフェンロ
山村 和也鹿島
鈴木 大輔新潟
酒井 宏樹ハノーバー
酒井 高徳シュツットガルト
MF清武 弘嗣ニュルンベルク
村松 大輔清水
東 慶悟大宮
山口 蛍C大阪
扇原 貴宏C大阪
宇佐美 貴史ホッフェンハイム
FW永井 謙佑名古屋
大津 祐樹ボルシアMG
斎藤 学横浜M
杉本 健勇東京V

「プレーヤーズ・ファースト」にはほど遠い

18人という少人数になったのは、巨大化する一方だったオリンピックの規模を抑えようという国際オリンピック委員会(IOC)の方針によるもの。

だが、サッカーの理念のひとつである「プレーヤーズ・ファースト(競技者第一)」からはほど遠く、選手に無理を強い、負傷や故障の危機にさらさせる危険性をはらんでいる。

4人の「バックアップ」をチームに帯同させ、けが人が出た場合にはすぐに登録変更ができるが、バックアップ選手にかかる費用(航空運賃、食費、宿泊費など)はすべてその国のサッカー協会あるいはオリンピック委員会がもつことになっている。

このため、出場全チームがバックアップを帯同できるわけではないだろう。国際サッカー連盟(FIFA)は何らかの改善策を練り、IOCにぶつけていかなければならない。

とはいえ、目の前に迫った大会の規約を変えることはできない。

男子U-23日本代表の関塚隆監督も、日本女子代表(なでしこジャパン)の佐々木則夫監督も、複数のポジションをこなせる選手を重視し、いろいろな状況を想定してメンバーを選んだはずだ。

オーバーエージで徳永と吉田を招集

「23歳以下」、すなわち1989年1月1日以降の生まれの選手に限られる男子だが、オリンピックの本大会では18人のなかに3人までこの年齢制限を超えた選手(オーバーエージ)を加えることができる。

1996年のアトランタ大会以来、5大会連続となる男子のオリンピック出場。過去4回の大会では2大会(2000年シドニー大会と04年アテネ大会)でオーバーエージを使ってきた。

96年大会では西野朗監督が「23歳以下だけで出場」と決断した。08年北京大会においては、反町康治監督はオーバーエージを使う意向だったが、予定選手がコンディションを崩すなどしたため実現しなかった。

今回、関塚監督はDF徳永悠平(FC東京)とDF吉田麻也(VVVフェンロ)の2人の起用を決めた。6月に発表された35人の「予備登録」メンバーにはGK林彰洋(清水)も入っていたが、バックアップメンバーとなった。

守備ラインに必要だった経験豊富な選手

個性的なタレントがそろっている攻撃陣と比較すると、守備ラインの選手たちの経験不足が懸念されていたU-23代表。

強化の一環として5月に参加したフランスでの国際大会では、トルコに0-2、オランダに3-2、そしてエジプトに2-3と、3試合で7失点を喫し、修正が迫られた。

徳永と吉田の選出は、関塚監督が守備ラインに経験豊富な選手が必要と考えた結果だった。

このため、昨年6月から今年3月にかけての予選ではレギュラーとしてプレーしてきた左サイドバックのDF比嘉祐介(横浜M)とセンターバックのDF浜田水輝(浦和)が外れた。

徳永は今季のFC東京では右サイドバックとしてプレーしているが、昨年までは左サイドバック、センターバック、そしてボランチとしてもプレー、複数のポジションをこなす能力も選考の理由だったのではないか。

吉田はA代表でもレギュラーとして活躍するセンターバック。189センチの長身で、得点力もある。

GK権田(控えは安藤駿介=川崎)、DFは右サイドバックが酒井宏樹(ハノーバー)、センターバックが吉田と鈴木大輔(新潟)あるいは山村和也(鹿島)、そして左サイドバックが徳永という形になるのではないか。サイドバックの控えには、左右両サイドをこなす酒井高徳(シュツットガルト)がいる。

中盤から前はタレントの「宝庫」

「底上げ」が必要だった守備陣と比較すると、中盤から前にはA代表のアルベルト・ザッケローニ監督が「宝庫」というほどのタレントがそろっており、関塚監督としては選考に「うれしい悲鳴」を上げたに違いない。

ボランチは扇原貴宏(C大阪)を軸に、守備力のある山口蛍(C大阪)、村松大輔(清水)がからむ。

4-2-3-1システムの前線の4人は清武弘嗣(ニュルンベルク)、宇佐美貴史(ホッフェンハイム)、大津祐樹(ボルシアMG)のドイツ組の3人と、東慶悟(大宮)、永井謙佑(名古屋)、斎藤学(横浜M)、杉本健勇(東京V)の国内組4人が競う。

「攻守に連動した一体感のあるサッカー、ピッチ内が生き生きとした躍動感のあるサッカーというものをずっと目指してやってきたが、そのサッカーを引き出せる組み合わせを考え、またそのバリエーションを考えていきたい」と関塚監督。前線4人の組み合わせは、大会直前まで試行錯誤が行われそうだ。

宮市(アーセナル)は選出されず

だが、この「U-23日本代表(プラスα)」は「最強メンバー」というわけではない。何よりも、A代表ですでに中心的メンバーである攻撃的MF香川真司(マンチェスター・ユナイテッド、1989年3月17日生まれ)は、日本代表のザッケローニ監督を含めた話し合いの末、35人の予備登録メンバーにも入れられなかった。

「2011年にケガをしたことがあり、この夏に移籍もするので外した」(原博実・日本サッカー協会強化担当技術委員長)

さらにオリンピックが行われるロンドンの名門アーセナルに所属するFW宮市亮(1992年12月14日生まれ)は35人の予備登録には含まれていたが、最終メンバーからは外れた。

「コーチングスタッフと話し合った末、チームが機能する18人を選んだ」(関塚監督)

左サイドで破壊的なスピードを見せ、すでにA代表デビューも果たしている宮市だが、6月のワールドカップ予選のためにA代表に招集され、5月のフランス遠征に帯同できなかったことで、「合わせる時間がない」という判断だったのだろうか。

守備さえ安定すれば…

グループステージではスペイン、ホンジュラス、モロッコと対戦する男子日本。金メダル獲得が現実的な目標である女子の「なでしこジャパン」と比較すると、国内での期待感が低いのは否めないが、関塚監督の狙いどおり守備が安定すれば、攻撃陣はどんな相手でもチャンスをつくり出す力を持っているので、グループステージから勝ち上がる可能性は十分ある。

さらに、「なでしこジャパン」が昨年成し遂げた女子ワールドカップ優勝という「刺激」もあり、準々決勝に進出したことだけで満足してしまうこともないだろう。

なでしこ五輪代表
GK福元 美穂岡山湯郷
海堀 あゆみINAC神戸
DF近賀 ゆかりINAC神戸
矢野 喬子浦和
岩清水 梓日テレ
鮫島 彩モンペリエ
熊谷 紗希フランクフルト
MF沢 穂希INAC神戸
宮間 あや岡山湯郷
川澄 奈穂美INAC神戸
阪口 夢穂日テレ
田中 明日菜INAC神戸
FW安藤 梢デュイスブルク
丸山 桂里奈大阪高槻
大野 忍INAC神戸
大儀見(永里) 優季ポツダム
高瀬 愛実INAC神戸
岩渕 真奈日テレ

厳しい戦いになるのは必至だが、チームが一丸となって戦い抜き、6試合(決勝あるいは3位決定戦まで)を戦いぬいて、飛躍につなげてほしいものだ。

佐々木監督の「総括の大会」に?

昨年の女子ワールドカップで優勝し、「金メダル」の期待もかかる「なでしこジャパン」。しかし佐々木監督は「6月にスウェーデンで行われた試合で米国に1-4の敗戦を喫したことが、いまのわれわれの実力」と、オリンピックでもチャレンジャーとして戦うことを宣言している。

08年に就任して5シーズン目。2回目のオリンピックに臨む佐々木監督だが、「5シーズンの総括の大会」と表現した。

次の世界大会は3年後、2015年にカナダで開催される女子ワールドカップになるので、このオリンピックを最後に退任する可能性もあるようだ。

大きな期待をかけられていた18歳のFW京川舞(INAC神戸)が5月に左ひざの大けがを負ったこともあり、今回の18人は昨年の女子ワールドカップに参加した21人からGK山郷のぞみ(浦和)、DF宇津木瑠美(モンペリエ、けが)、MF上尾野辺めぐみ(新潟)の3人が抜けただけという形になった。

メンバー入りした19歳のFW岩渕真奈(日テレ)については「将来への布石」と表現したが、それ以外にも才能ある若手は豊富にいながら、「なでしこ」の高度なチームプレーになかなか加われないジレンマを表す結果となった。

懸念される4人のコンディション

最も懸念されるのはDF岩清水梓(日テレ)、MF沢穂希(INAC神戸)、FW丸山桂里奈(大阪高槻)、そしてFW岩渕と、けが、あるいは病気から回復したばかりの選手が18人中4人も含まれている点だ。

「9日からの国内キャンプでコンディションを上げられると思う」

メンバー発表の会見で佐々木監督は何回もこの言葉を繰り返した。しかし、ただでさえ18人しか登録できないオリンピックで6試合をフルに戦う可能性が高いなか、選手に無理をさせる結果になるのではないかと心配だ。

女子選手は男子ならプレーができないほどの痛みがあっても平然とした顔でプレーをしてしまう傾向がある。この4人を含め、全員のコンディションを慎重に見極める必要がある。

準々決勝でトップフォームに

女子はグループステージでカナダ、スウェーデン、そして南アフリカと当たる。12チーム(4チーム×3グループ)での大会であるため、グループ3位でも3チーム中2チームは準々決勝に進むことができる。8月3日に行われる準々決勝でトップフォームにもっていくような調整が必要かもしれない。

昨年のワールドカップ時と比較すると、なでしこジャパンの攻撃は明らかによくなっている。全員が自信をつかんでパスにも落ち着きができたこともあるが、何よりFW大儀見(旧姓永里)優季(ポツダム)の急成長が大きい。

なでしこジャパンも、課題は守備ということになる。カバー能力にたけたDF岩清水、そして中盤で相手の攻撃の芽を摘む沢のプレーがカギとなるだけに、今後1カ月間のコンディショニングが今大会の成否の大きな分かれ目となるに違いない。

オリンピックに向け、男女の代表は11日にダブルで強化試合を行う。東京の国立競技場で17時10分からなでしこジャパンがオーストラリア女子代表と、そして19時55分からU-23日本代表がU-23ニュージーランド代表と対戦する。

この試合が終わると、女子はフランスで合宿して19日にフランス女子代表と、男子はイングランドで合宿して18日にU-23ベラルーシ代表、21日にU-23メキシコ代表と親善試合を行う。

そして女子は25日にコベントリーでカナダと、男子は翌26日にスコットランドのグラスゴーでスペインとの初戦を迎える。注目される男女のサッカー、持てる力を存分に発揮して戦ってほしい。

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