/

延長十回にスクイズ…「強い東大」、優勝はなったか

東京六大学軟式野球

0-0のまま延長戦にもつれこんだ十回裏、東大はサヨナラを狙って賭けに出た。スクイズ。一塁側に転がった打球は……。"もうひとつの東京六大学野球"ともいえる軟式野球リーグで、2年(4季)ぶりの優勝を目指す東大と慶大の優勝決定戦が14日、町田市民球場で行われた。白熱した勝負の行方はどうだったのか。

ともにリーグ最終戦と同じ先発

7日のリーグ最終戦で東大が慶大に敗れ、7勝3敗の同率で並んだため行われた優勝決定戦。先発は東大が佐伯遼(22、経済学部4年、麻布高)、慶大が加藤智貴(22、文学部4年、神奈川・川和高)でリーグ最終戦と同じ顔合わせとなった。

リーグ最終戦では東大は引き分けでも優勝という条件だった。一度は優勝杯に手をかけながら敗れたことを考えれば、決定戦でのプレッシャーも東大の方が大きかったかもしれない。

立ち上がり、東大ナインの動きが硬い。失策と安打、死球で一死満塁のピンチを招いた。しかし、大黒柱の佐伯が、後続を浅い左飛、三振に仕留め、事なきを得た。その後は0-0で延長に入った7日の試合をなぞるかのようなジリジリした展開が続いた。

0-0の展開の中で、激しい駆け引きの応酬

一見淡々とした試合運びのなかにも、両軍ベンチの激しい駆け引きの応酬があった。

佐伯、加藤、いずれ劣らぬ好投手からどうやって1点をもぎとるか。両校ともテーマは絞られている。

慶大の佐藤龍ノ介主将兼監督(21、環境情報学部4年、慶応湘南藤沢)は待球作戦をとった。中6日、若い体とはいえ、前の試合で151球を投げている佐伯は後半へばるはず。「3回で50球、5回で80球を投げさせるのが目標」

佐藤監督がたてた数値目標に近い形で試合は進行し、試合後半は安打にこそならなかったが、芯でとらえた打球が増えた。

一方、東大は徹底したカーブ狙いに出た。凡打に終わろうが、振り遅れて三振しようが、直球は捨てて、緩い球を待つ。

十回裏一死満塁のチャンス

どちらも工夫を凝らしながらの試合運びだったが、十回裏に東大がチャンスをつかんだ。

先頭の五番井上翔介(22、工学部4年、兵庫・白陵高)が左前打で出塁。代走の槙原亮吾(19、文学部2年、神奈川・栄光学園)がすかさず二盗を決めて無死二塁になった。

そこからの送りバントがポップフライとなって、サヨナラの機運もしぼみかけたが、そこで執拗(しつよう)に繰り返してきたカーブ狙いが当たった。七番の押田遼太郎(23、経済学部4年、駒場東邦)がおっつけて右前に運び、一死一、三塁に。

慶大は満塁策をとって一死満塁。ここで東大の副監督である松田諭(21、法学部4年、栄光学園)が打席に入った。

3球目にスクイズ敢行、迷いはなし

失敗すればもっとも惨めな形になるのがスクイズだ。タッチプレーの要らない満塁の局面では、ますますとりずらい作戦だ。

しかし、1点を守り切って勝つ野球をしてきた東大の塩田英史監督(22、工学部4年、栄光学園)に迷いはなかった。「成功の確率は7-3くらいかな、と。はずされる確率も3割くらいあったが、三塁走者は足の速い槙原だし、はずされても松田は何とか当ててファウルにしてくれるはず」との計算があった。

慶大の佐藤監督もどこかでスクイズがくる、と踏んでいた。カウント1-1。「ここかもしれない」と思いつつも、ピッチドアウトするだけの判断材料も持たなかった。もし相手が動かなかったら、カウントを悪くするだけだ。

1-1からの3球目、三塁走者の槙原がスタートを切る。松田がヒッティングからバントの構えに移る。低めのスライダーに当てると、打球は高く弾んで一塁前へ。一塁手が捕球したとき、槙原は2年ぶりの優勝を決めるホームへ滑り込んでいた。

2004年秋、09年春、10年春に続く、4度目の優勝だ。

「佐伯の復調、そして冬の間にみんなでバットを振り込んだこと。それが勝因だと思う」と塩田監督はいう。

この試合でも123球で完投した佐伯だが、昨年春からほぼ1年、肩痛で投げられなかった。今年の春のキャンプでも「救援ぐらいしかできないかもしれない」(塩田)と見通しは厳しかった。それがリハビリの甲斐あってか、奇跡的に回復した。

歓喜の輪の中でエース号泣

佐伯自身も「去年一年悔しい思いをした。春の合宿まではこんなに投げられるようになるとは思ってもみなかったので、泣けました」。優勝が決まったとき、控えの選手もスタンドから飛び入って歓喜の輪ができた。そのなかに号泣する佐伯の姿があった。

敗れたとはいえ、慶大も優勝を争うにふさわしいチームに仕上がっていた。リーグ戦での東大との2戦は4-3、2-0といずれも延長の末、競り勝っている。最後の最後だけ勝ちきれなかった。

佐藤監督は「外の変化球は捨てる約束で臨んだのに、どうしても振ってしまう。そうした1球1球の積み重ねがこの結果になった」と自分を戒めるように話したが、試合内容にそこまでの差があったとは思われない。

4年生の現役生活は"延長戦"に

硬式野球の東京六大学リーグでは各大学とも優勝するとパレードや盛大な祝賀会が待っている。

地味な軟式ではOBをまじえたつましい祝賀会があるだけだが、塩田らが望むご褒美はほかにあった。

春季覇者として参加資格が与えられる全日本大学軟式野球選手権だ。今年は8月、秋田県で開催される。「前に出場した2度の大会はいずれも初戦で負けているので、なんとしても勝利したい」と塩田監督がいえば、松田副監督も「全国大会の1勝を目標にやってきた」と気合を込める。

この春で引退するはずだった4年生たちの現役生活は願ってもない"延長戦"に突入した。

(篠山正幸)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン