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プロサッカー諦め東大へ ビジネスコンテスト運営に熱

KING代表 平河大斉さん(東京大学文科二類1年)

Business Contest KING代表の平河大斉さん

サークルやボランティア、起業などさまざまな分野で挑戦を続ける若者を紹介する「チャレンジャ-」。第1回はビジネスコンテストの学生団体「Business Contest KING(以下、KING)」の代表を務める東京大学の平河大斉さん(20歳)。IT(情報技術)の進化や企業による学生・学生団体への投資が盛んになるなか、大人顔負けの活動をする学生の一人だ。1年生で複数のインターンを経験するなかで見えてきた平河さんの挑戦とは。

高校まで米国でサッカー 世界の壁を知る

KINGは年に1回、全国から100人の学生を集め、4泊5日の合宿を開催。提示された課題を解決するビジネスプランを策定し、優勝を競い合うイベントを企画・運営している。1996年の第1回開催から24期を迎える今年の代表に就任したのが平河さんだ。

流ちょうな日本語と、「偉そうに聞こえたらすみません」と繰り返す謙虚な応答からは、「18歳までアメリカで育った」とはにわかに信じがたい。現地の学校に通いながら日本人学校にも籍を置き、日本人としてのアイデンティティーを大切にしてきたのだという。

終始穏やかな雰囲気をまとう平河さんだが、アメリカでは2歳から始めたサッカーを高校まで続けていたスポーツ少年だった。名門リバプールの下部チームに所属し、一時はプロを目指していたが、「ブラジルから転校してきた同級生のプレーを見て、世界に自分は通用しないと思い知らされて」、高校の最終学年で集中して勉強に打ち込んだという。

サッカーの名門リバプールのユースチームに所属=平河さん提供

日本の大学への進学を選んだ理由について、帰国子女枠の入学試験面接では「労働経済学に興味があり、脱・長時間勤務へと転換期を迎えた日本社会の課題解決に貢献したい」と答えたが、根底にある本音は「日本人が好きだから」。

東大に入学して3カ月ほどは、「日本の生活文化を知る」ための目的で複数のサークル活動やアルバイトを掛け持ち。その後、インターンシップへの参加のみに活動を絞った。「アメリカでは高校生から企業インターンに参加するのが珍しくないので、早過ぎるとは思いませんでした」。当初は「就活に有利になるだろうという打算的な動機だった」と振り返るが、これが平河さんにとって大きな転機となる。

1年生で6社のインターンに参加 ぶっ飛んだ同世代との出会い

通信、飲食、システム、医療など多業種6社の短期インターンシップを経験する中で、「"自分革命"とも言えるくらい大きな収穫があった」のが、ソフトバンクグループの地方創生プログラム「TURE-TECH(ツレテク)」だ。東京から離れての4泊5日の宿泊型で、参加倍率50倍ともいわれる人気プログラムには、全国からツワモノが集まる。

18歳までアメリカで暮らした=平河さん提供

平河さんが共に課題解決に取り組んだグループの学生メンバーは、国際ポーカー大会出場経験者やハンター、アイドルプロデューサー、気象予報士資格最年少ホルダーなど"ぶっ飛んだ人材"だらけ。初日から意見の衝突が起きるという事態だったが、平河さんは年上のメンバーを相手に冷静に議論を整理し、課題解決のプロセスを進める役割を果たすことができた。ディスカッションやディベートを重視する、アメリカの学校教育を受けたバックグラウンドが生きたのだろう。

大勢の人の前に立って話すことにも抵抗はない。「小学生の頃からプレゼンテーションの機会がたくさんあったんです。今でもよく覚えているのは、小学5年生の地理の授業で、パワーポイントを使って『石の成り立ち』について発表したこと。アニメーションも使って結構凝って。日本では大学に入ってようやくパワポを覚える人が多くて驚きました」

議論のまとめ役に向くという自分の強みを知る一方で、「平河君は、もう少し人の気持ちを考えたほうがいい」と指摘されたこともあった。「正論を言ったつもりでも、相手を納得させられない場面はたしかにあって。"他人を動かせる人"が備えているものは何か?と考え続けた結果、エートス=人格の魅力だというのが僕なりの答えでした」

インターン終了後は、エートスを鍛えることを目標に据えて、その機会を探った。そしてその"鍛錬場"としてチャレンジしたのがKINGの代表への立候補だったのだ。「自分を責任のあるポジションに置くことで、人格を鍛えたいと思いました」

選挙を経て代表となった今、掲げるビジョンは"ぶっ飛んだ人材への第一歩"。「ツレテク」で出会った仲間のように個性豊かな人材を輩出することが、面白い世の中につながると確信している。

メンバーの持ち味を生かすリーダーを目指す

8月のビジネスコンテスト開催に向け、意欲の高い参加者の発掘、スポンサー企業との折衝など、やるべきことは山ほどある。しかし、全部自分で抱え過ぎないようにしている。よりよい組織運営に向けた改革を地道に進める。「楽しませる相手は、参加者と協力企業だけじゃない。運営側のメンバーが心から楽しめる活動にすることが大事だし、代表選挙の際の公約としても宣言しました」

「ビジネスコンテストでは運営側のメンバーが心から楽しめる活動にすることが大事」と平河さんは話す

32人の運営メンバーのモチベーションを高めるため、独自にワークシートを作って、一人ひとりと面談して目標をすり合わせることから始めたという平河さん。そこで気づいたのは、KINGの活動によって何を得たいかは人によって違うということ。仕事ではないKINGに求めるインセンティブは、人によってかなりバラつきがあったのだ。「この5カ月の試行錯誤を通じて、まずは代表である僕のゴールを明確に示すことが大事なのだと気づきました。そのゴールに合わせて、各メンバーが持ち味を生かせる采配をしていきたいと思っています」

人のモチベーションをどう高めるか。AIには簡単に置き換えられない技能を身につけられる、貴重な学習機会を得ていると実感している。1月には起業支援コミュニティー「ベンチャーカフェ」の代表者による、ビジョン策定の手法を学ぶセミナーを姉妹団体と共に開催。3月末に予定する1日完結型ビジネスコンテスト「KING MARCH」では、学生向けプログラミング講座「GeekSalon(ギークサロン)」と組むことで、アイデアをすぐにコード化できるような実践的な場を企画している。

進路についてはまだ悩み中だ。「戦略系コンサルに興味はあるのですが、ネックは長時間労働。アメリカでエンジニアとして働いている父は早ければ15時に帰宅して、家族で夕食を囲むのが当たり前で、その姿が僕の仕事観にとても影響しています。面白い企画ができそうな事業会社に進むか。将来的には、労働時間を短縮化するコンサルティング会社を自分で起業するかもしれないですね」

広い視野で周囲の状況に目を配り、自分の立ち位置や出すべきボールを見極め、しなやかに動く。チーム全体で目指すゴールは見失わない。サッカーで培ったそんな感覚は、今のKINGでの活動でも発揮されているのかもしれない。

チャレンジャー 平河さんへの質問



Q10年前の自分にアドバイスしたいことは?
A自分と相手の感情を大事にしなさい

Q10年後の自分に約束したいことは?
A周りの人を大切にしてください

(ライター 宮本恵理子)

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