2017年12月18日(月)

「出稼ぎ大国」フィリピン 家政婦が見たニッポン
論説委員 太田泰彦

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2012/6/3 7:00
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「どうして、この国にはエリザベスが大勢いるの?」

 当時、幼稚園児だった子供に、そう聞かれたことがある。10年ほど前、ドイツに駐在していた時のことだ。ちょっとした事情があって自宅で家政婦を雇い、週に一度、掃除や洗濯などの家事を手伝ってもらっていた。その家政婦の女性がエリザベスという名前だった。

■1分も無駄にしない「家事のプロ」

世界中で活躍するフィリピン人家政婦。写真は「未来世紀ジパング」(テレビ東京系列)から

世界中で活躍するフィリピン人家政婦。写真は「未来世紀ジパング」(テレビ東京系列)から

 エリザベスはフィリピン人だった。年齢は30代だろうか。細身で姿勢のいい人だった。苗字は知らない。話しかければ笑顔で言葉を交わすが、それ以外は黙々と働き続けた。約束の時間ちょうどにチャイムがなり、玄関に姿を現す。「おはようございます。きょうはよい天気でよかったです」。

 家の中に入ると、挨拶もそこそこに、エプロンをつけてきびきびと動き始める。1分も無駄にしないその姿は精巧で強力なマシンを思わせた。まさに「家事のプロ」だった。

 うちの子供は、遊びに行った友達の家でも、働くエリザベスの姿を見たという。自分の家で見るのと全く同じ姿、同じ表情で、せっせと働いていたそうだ。そして、また別の友達の家にもエリザベスがいた。子供が興奮して語る話だ。果たして本当に同一人物かどうかは分からないが、どの家庭でも勤勉に家事をこなすフィリピン人家政婦の姿が、「エリザベス」として、子供の目に焼き付いたのだろう。

 当家の家政婦は、キリスト教のミッションの関係で、ドイツに住んで働いていた。聞けば、同じように欧州で家政婦として働く仲間はフランスにも英国にも多いという。東京に駐在する外国の大使館員が外交官の特権を利用してフィリピン人女性を家政婦として雇うのはよく知られた話だが、アジアから遠く離れたドイツやフランスにまでフィリピン人家政婦が進出しているとは驚きだった。東欧やアフリカの出身者など、出稼ぎの人材は欧州には多いはずなのに、いったい、なぜフィリピン人なのか……。

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