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大胆・心配り…日本ハム・栗山采配の妙

栗山新監督率いる日本ハムが、ここまで26勝19敗2分け(28日現在)のパ・リーグ2位と好調をキープしている。大黒柱だったエース、ダルビッシュの抜けた穴を埋めるべく先発・救援陣が踏ん張り、12球団トップのチーム打率(2割5分7厘)を誇る打線がきっちり援護。勝負どころでの用兵、采配もぴたりと決まるなど、栗山流の戦術がうまく機能している。

自らの言葉で選手を鼓舞

現役引退後は球界を離れていただけに、栗山監督の就任にあたっては現場での指導力を不安視する向きもあった。だが、シーズンが始まってみると、自らの言葉で選手を鼓舞し、やる気と潜在能力を引き出すという点で、スポーツキャスター時代に培った経験を存分に発揮しているように映る。

栗山監督の下で開花した最たる例が、今季すでに5勝(2敗)を挙げている6年目左腕、吉川だろう。

ルーキーイヤーに4勝を挙げながら、3年目以降は勝ち星ゼロ。栗山監督から「今年駄目ならおれがユニホームを脱がせる」と厳しい言葉を投げかけられた今季、先発の一角に定着。もともと定評のあった真っすぐの威力が増し、150キロに迫る直球を軸に安定した投球を見せている。

登板翌日には話し合いの場

その左腕に「今までの悔しさを晴らすためには一球一球、魂をこめて投げるしかない。走者を1人でも出したら代えられるぐらいの意識でやってほしい」と栗山監督。登板翌日には、外野の一角で話し合いの場を持っている。

前日の投球の課題、反省点を口に出させることで、次回への修正点をはっきりさせるのが狙いだ。

吉川は5月23日のDeNA戦で5勝目を挙げたものの、5回0/3を1失点でマウンドを降りた。中盤は毎回、先頭打者を安打で出し、「ふざけんなっていう感じ。あそこで代えたことに何かを感じてくれるはず」。監督は試合後、厳しい言葉を発した。

栗山監督がこうしたプレッシャーをかけ続けるのも期待が大きいがゆえ。それは吉川本人も十分に自覚しているようで、自己最多の勝ち星をマークしたにもかかわらず、浮かない表情で「野手やリリーフに勝たせてもらった。7回ぐらいは投げないといけない」と口元を引き締めた。

頼れる救援陣が今季も健在

とはいえ、僅差の展開で早めにバトンを託せるのは、頼れる救援陣が今季も健在だからともいえる。

昨季のセーブ王、武田久を5月初めから右膝の炎症で欠く誤算を、セットアッパーの宮西から新クローザー増井(7セーブ)につなぐ形でカバー。実績のある榊原らに加え、2年目左腕の乾、昨年の都市対抗野球で完全試合を達成したルーキー森内といった中継ぎの新戦力も台頭し、重要な役どころを担う。

新たな勝利の方程式を築こうという新監督の執念が垣間見えたのが、5月17日の阪神戦だった。

4点リードの六回、まだ無失点の先発ウルフが2死満塁を招くと、すかさず乾にスイッチ。左腕が期待に応えてブラゼルを空振り三振にしとめると、七回は森内、八回は宮西とつないだ。

熱っぽい口調で発破

しかし、九回に送り出した抑えの増井が連打を浴びて無死一、二塁のピンチを招くと、栗山監督はベンチを飛び出し、就任以来初めてマウンドに向かった。

「高校のときにここ(甲子園)を目指して野球をやってきて、大人になってここでプレーできる喜びを感じてくれ」。キャスター時代をほうふつとさせる熱っぽい口調で発破をかけると、新守護神は本来の姿を取り戻し、後続3人をきっちりと抑えた。

対戦数の少ないセ・リーグ球団との2連戦が続く交流戦は「負けたら終わりのトーナメントのような戦い方をする」と栗山監督。その言葉を裏付けるように、早めの仕掛けは継投策だけでなく攻撃でも目立つ。

同17日の阪神戦では積極的な代打起用も功を奏した。六回、2点をリードしてなお2死一、三塁で遊撃手、飯山に打順が回った場面。レギュラーの金子誠をけがで欠き、スタメン出場した今浪もすでに退いて、控えの内野手が薄くなっていたにもかかわらず、代打にスレッジを送った。

結果は、試合の流れを完全に引き寄せる走者一掃の適時三塁打。勝負どころと読んだ采配がずばり的中した。

思い切った大胆な作戦をとる陰で、プレーヤーに対する細やかな心配りも見逃せない。指名打者制度のないビジターの交流戦で代打出場の続いたスレッジ、スレッジとの併用でスタメン機会の限られるホフパワーに対しては「状態がいいのでどっちも使いたい。2人とも腐ることなく、よくやってくれている」。メディアに発する言葉からも、選手のモチベーションを高めようとの意識が感じ取れる。

糸井と陽の守備位置入れ替えも成功

「代打で打席に立つのは何よりも難しい。そのためにできることをやって準備するしかない」と殊勝な態度だったスレッジは、指名打者で先発に復帰したホームの22日のDeNA戦で早速、逆転満塁弾。左のホフパワー、右の二岡が中心の代打陣は、リーグ屈指の勝負強さを誇っている。

守備、攻撃陣の組み替えでも今のところ、栗山流の見立てが全てうまく働いているといえそうだ。中堅だった糸井と右翼の陽岱鋼の守備位置を入れ替えたことで、外野陣はより鉄壁に。

中堅・陽が守備範囲の広さでたびたび投手の窮地を救えば、強肩自慢の右翼・糸井は周囲を驚かせるレーザービーム返球で、三塁や本塁への進塁をやすやすとは許さない。

悩みの種は4番・中田

スイングが大きくなって一時不振だった糸井を、3番から1番にしてから打線も総じて上向きだ。出塁率リーグトップ(4割1分2厘)の糸井を、3番に座る打率リーグ4位(3割2分2厘)の田中、2000安打を達成した今季、打率と打点(3割3分3厘、34打点)の2部門でトップを快走するベテラン稲葉のバットで返す理想的な流れが生まれている。

栗山監督にとって目下の悩みの種は、28日の巨人戦で2ランを放ったものの、打率1割台半ばに低迷し続ける4番・中田だろう。1試合、1試合に根を詰める栗山野球が夏場にかけて息切れしないためにも、若き大砲が辛抱強く使われている大きな期待と信頼に応え、奮起することが欠かせない。

(常広文太)

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