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IPv6への世界一斉対応、NTTは乗り遅れ

フレッツ加入者のv6接続は遮断

編集委員 小柳建彦

世界の主要なインターネット・IT(情報技術)企業が、次世代インターネット規格「IPv6」への対応を6月6日に一斉に始める「ワールドIPv6ローンチ」が2カ月後に迫ってきた。米グーグル、米フェイスブック、米ヤフーなど主要なウェブサービス企業や、米シスコシステムズなどのネットワーク機器メーカー、米AT&Tや日本のKDDIなどの通信会社が一斉にv6による通信に標準で対応するようになる。長年、v6普及の旗振り役をつとめてきた日本は本来なら、ここでもリーダーシップを発揮して当然なはず。ところが実際には、日本のネット利用者の多くが世界一斉ローンチの蚊帳の外に置かれる公算が大きいことがわかった。

「未来は永遠に」をスローガンにIPv6恒久対応を宣言するワールドIPv6ローンチのウェブサイト

一斉ローンチの対象外になることが確実な情勢なのが、NTT東日本とNTT西日本の光通信網である「Bフレッツ」と「フレッツ光ネクスト」に加入している約1600万回線だ。そもそも約980万回線のBフレッツ加入者にはv6を使ったネット接続サービスが一切提供されていない。フレッツ光ネクストの650万回線については、末端利用者がネット接続事業者(ISP)とNTT東西に、わざわざ改めて申し込まないとv6によるネット接続サービスは提供されない。しかもその際、原則として2100円の初期費用がかかる。このため、大多数の加入者はいまだに従来技術であるIPv4でネットに接続している。

逆にいうとフレッツ光ネクスト加入者の一部はすでにv6を使ったネット接続サービスを利用している。ところが、これらの利用者も6月6日以降は当面の間、v6接続が利用できなくなる公算が大きくなっている。話が入り組んでいてわかりにくいが、事情はおおむね以下の通りだ。

実はフレッツ光ネクストのすべての加入者は、同サービスの加入者同士の通信用にv6を使っている。ただしその際に使うアドレスはあくまでフレッツ内専用のため、そのままでは(改めてv6接続の申し込みをしていない状態では)外部のインターネットとの接続には使えない仕組みになっている。これまでは世界のほとんどのウェブサイトがv6によるアクセスに対応していなかったので、フレッツ光ネクストの加入者でも外部のウェブサイトへのアクセスには最初からv4が使われてきた。しかし6月6日以降、世界の主要サイトがv6にも対応するようになると、フレッツ光ネクストの内部専用のv6アドレスを使っている大多数の加入者にとって困った問題が発生する。

フレッツ内部専用とはいえ、普段はv6のアドレスを使っているため、加入者が見たいウェブサイトがv6対応になっていると、加入者のパソコン端末はまずv6のアドレスを使ってアクセスしようとしてしまう。しかし、そのアドレスは外部インターネットでは無効なため接続に失敗する。そこで、加入者端末はもう一度v4による接続を試みる。この間、1秒~数10秒の接続遅延が発生する。

ウェブサイト側からみると、このような利用者に対してはサービス水準が低下することになるほか、その人に対する広告表示の機会も減る。そんなケースが数百万人規模で発生する事態はどうしても避けたい。NTT側からみると、せっかくv6にも対応するようになった内外主要サイトに対して、大きな迷惑をかけることになる。

この問題をどうするか。NTT東日本の関係者にたずねたところ、フレッツ加入者の端末がv6を使って外部インターネットへの接続を試みることを一律に遮断してしまう対策をとる方針を明らかにした。より厳密にいうと、フレッツ光ネクスト加入者の外部インターネット接続を担っているISPのところでv6による外部との通信を遮断する「AAAA(クワッドエー)フィルタ」と呼ばれる措置を取ってもらう。その結果、せっかく申し込みをしてv6によるネット接続に移行した末端利用者も、6月6日以降はv4による接続を強制されるようになってしまう。仮にこの遮断措置を実行しなければ、グーグルなど内外主要サイト側は日本からのアクセスをすべてv6対応から除外する措置を取ることを検討してきた。

なぜこんなことになるのか。日本では、NTT法によってNTT東西が直接インターネット接続サービスを提供できない。このため、フレッツは直接ネットにつながっていない閉じた通信網になっている。フレッツ加入者がネットに接続するために、別途ISPと契約しなければならないのはこのためだ。最初から外部ネットでも通用するv6アドレスをフレッツ内部でも使えるような仕組みにしておけば今のような問題は発生しなかったはずだ。しかし「次世代通信網(NGN)」として鳴り物入りで始めたフレッツ光ネクストは、開始時、むしろ外部インターネットを経由しない高品質通信を売り物にしようとした。このため、v6技術は導入したものの、ネットワーク内部専用という位置づけにしてしまった。これがボタンの掛け違いとなったといえそうだ。

現状を放置しておくと、日本の通信網の末端接続回線の大きな部分を担っているフレッツはインターネットのv6化からどんどん取り残されていく。潮目を変えるには、加入者自身による能動的な申し込みが必要になっている現状を変え、「加入者が知らないうちにv6による外部ネット接続を可能にする措置を取るなどの抜本対策が必要」(ワールドIPv6ローンチの日本の幹事役を務める松崎吉伸・IIJシニアエンジニア)だ。

現行の通信方式であるIPv4で利用するネット上のアドレスは、発行元の国際団体で昨春に枯渇。今はISPや企業が持っている在庫アドレスでやりくりしており、その在庫もあと数年で尽きるといわれている。NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクなどの携帯通信サービスでは、ひとつのv4アドレスの内線番号にあたるプライベートアドレスを大量に発行して、スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレットといったネット利用端末の急増に対処しているが、その処理には難易度の高い通信制御が必要。このまま利用者が増えれば、通信障害などのトラブルが頻発するような事態になりかねない。ネット利用の需要拡大に応え続けるためには、早期のIPv6への移行が必要だ。

日本はブロードバンド(高速大容量)通信の普及で世界の先頭を走り、インターネット先進国を自他共に認めてきたが、このままでは遅れをとるばかりか差がどんどん開きかねない。通信会社とISPは、コストや作業を分担する協力体制をいかに構築するか、知恵と覚悟が問われている。

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