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米ピンタレストは「第2のツイッター」か、画像収集・共有の利用者1800万人

インターネットの画像収集・共有サービス「ピンタレスト」が利用者を急ピッチで増やしている。サイトの訪問者は2月に米国だけで1800万人近い水準に達し、オバマ米大統領も利用を始めた。「史上最速」ともいわれるスピードで勢力を拡大するこのサービスは「ツイッター」との共通点が驚くほど多い。ピンタレストは世界で1億4000万人以上が使うツイッターの再来となるのか――。

オバマ米大統領もピンタレストを利用し始めた

米カリフォルニア州パロアルト市。名門スタンフォード大学にほど近い一角はグーグルやフェイスブックが設立直後にオフィスを構えたことで知られるが、ピンタレストを運営するコールド・ブルー・ラボもここにある。

住所を頼りに探し出したオフィスは平屋のガレージのような質素な構えで、社名が分かる看板などが一切ない。

窓からブラインド越しに中をのぞき込むと、壁面に直接「Pinterest」と書き込んであるので、ここがようやく人気サービスの提供元と分かる。

ピンタレストを運営するコールド・ブルー・ラボのオフィスは質素な構えだ(米カリフォルニア州パロアルト市)

その近くには「Hack(ハック)」という文字の入った額が掛かっており、フェイスブックなどと同様に「ネットを使って世の中を変える」という理念を持つ企業ということが伝わってくる。

ベンチャーイベントで知名度向上

オフィスは30人も入ればいっぱいになってしまいそうな規模だ。実際、同社の広報担当者によると現在の社員数は20人強。だが、周辺にいくらでもありそうな同ベンチャー企業は、この1カ月ほどの間、米メディアの話題をさらった。きっかけは3月上旬に米テキサス州オースティン市で開かれたイベント「SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)」だった。

米調査会社のコムスコアによると、米国におけるピンタレストのサイトの訪問者は今年1月に1170万人、2月には1780万人を突破した。

2010年3月に開設したサイトは11年半ばごろからブログメディアなどに取り上げられ始めていたが、ベン・シルバーマン最高経営責任者(CEO)がSXSWで話したのを機に一気に知名度が高まった。

米国における主要インターネットサイトの月間訪問者数
企業名主力事業訪問者数(人)前月比増減率(%)
グーグルインターネット検索1億8659万▲0.4
ヤフーポータルサイト1億7353万▲2.1
フェイスブック交流サイト(SNS)1億5874万▲2.9
アマゾン電子商取引1億594万▲3.7
ツイッターミニブログ3843万0.1
リンクトインビジネス向けSNS3605万▲2.2
ピンタレスト画像収集・共有サイト1780万52.0
(出所)米コムスコア (注)2012年2月実績、▲は減少

ここ数年、SXSWは「ネットベンチャーの登竜門」として参加者が増え、各社はここで知名度を高めることに血道を上げる。06年にサービスを始めたツイッターは、07年のSXSWで注目を集めて普及に弾みを付けた。ピンタレストも今年のSXSWが知名度上昇の契機になっており、これが「第2のツイッター」と目される理由のひとつだ。

機能にもツイッターと共通点がある。ツイッターは最大140文字の短文を投稿するサービスだが、ピンタレストはその画像版と考えれば分かりやすい。雑誌などから気に入った写真を切り抜いてコルクボードに画びょうで留める要領で、ネット上の画像を自分のボードに貼り付けて広めていくというのが基本的な考え方だ。

ピンタレストを運営するコールド・ブルー・ラボのベン・シルバーマン最高経営責任者(CEO)

貼り付けた画像に自分や他人がコメントを書き込むことができる。他人のボードの画像を自分のボードに複写することを「リピン」と呼び、ツイッターの「リツイート」に相当。他の利用者やその個別のボードを「フォロー」することも可能で、このあたりもツイッターとの共通点を感じさせる。ただ、文字ではなく画像が基本のため、言葉の壁を越えやすいという印象だ。

共同創業者のシルバーマンCEOはグーグル出身で、創業者の出身企業もツイッターと重なる。ただ同氏自身はエンジニアではなく、グーグルでは広告営業などを担当。起業を目指して08年に退社した。

同CEOはエンジニアではないものの「物事を大きく考えることをグーグルで学んだ」と語っており、大きな目標を掲げるグーグル、ツイッターに相通じるものがある。

女性に人気

シリコンバレー周辺で生まれるサービスは技術への関心が高い若い男性から人気に火が付くケースが多いが、ピンタレストは違った。

ピンタレストの画面を見ると目立つのは衣料品やおしゃれなインテリア雑貨、料理などで、洗練されたサイトのデザインと相まって写真が引き立つ。このため利用者の7~8割は女性とみられる。

人気の集め方が通常のサービスとは異なったこともあり最初はベンチャーキャピタル(VC)などのレーダー網に引っかからなかったが、昨年10月に風向きが変わった。

有力VCでツイッターへも出資する米アンドリーセン・ホロウィッツなどが2700万ドルを投資し、この際の企業価値の評価は2億ドルに達したもようだ。現在は10億ドルの価値があるとの見方もある。

課題は「収益化」と「著作権」

SXSWでの評判、機能、創業者の横顔、投資家の顔ぶれのいずれをとっても時価総額が80億ドルに達したといわれるツイッターと共通点があるが、課題も初期のツイッターと相通じる。それは収益化だ。最近のネット企業は利用者拡大を優先し、「収益は後から付いてくる」という考え方が一般的。ピンタレストも同じように考えているフシがある。

ピンタレストでは雑貨や食べ物などの写真が目立つ

ただ、同社はこのほど、フェイスブックで広告事業の立ち上げなどに従事した元マネタイゼーション(収益化)担当ディレクターのティム・ケンドール氏を採用した。ピンタレストは女性利用者の多さなどから電子商取引などとの相性の良さが指摘され、趣味や好みに基づく「関係図」は広告にも応用可能。同氏のもとで取り組みを具体化させる見通しだ。

もうひとつの課題は、著作権への対応だ。ネット上に出回っている画像を自分のボードに貼り付けると著作権侵害になりかねないからだ。3月上旬には米メディアを通じて、弁護士資格を持つ写真家の女性が著作権侵害を懸念してピンタレストの利用を中止したという話が広がり、この問題が注目を浴びる契機になった。

ピンタレストはサイト運営者向けに、サイト上の写真をピンタレストに取り込めないようにするためのコードを公開するなど対策を進めているが、この問題に対する最終的な解はまだ持ち合わせていないようだ。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは3月中旬、「ピンタレストは第2のナップスターか」と題した記事を掲載した。

ファイル共有ソフトを提供していたナップスターは利用者の支持を得たものの、著作権を巡る裁判で敗れて01年にサービス中止に追い込まれた。記事はピンタレストにも同様の課題があると指摘したものだ。大きな期待を集めるピンタレストが第2のツイッターになるためには、ナップスターと同じてつを踏まないことが必要条件になる。

(シリコンバレー=奥平和行)

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