津波は対抗せずやり過ごせ 名取市・閖上の箱舟構想

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2012/3/3 7:00
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 2011年3月11日に起きた東日本大震災から早くも1年になる。マグニチュード(M)9.0の巨大地震は津波を誘発。東北地方沿岸部の多くの町が壊滅的な被害を受け、福島第1原子力発電所は深刻な事故を起こすに至った。多大な代償と引き換えに得た教訓で、安全をいかに再生するか。宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)地区では、住民の生命を守る新たなまちづくりの一案として、「箱舟構想」が浮上している。

名取市閖上地区の「五差路」にかかる歩道橋
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名取市閖上地区の「五差路」にかかる歩道橋

 2月24日、宮城県名取市の中心部から約7キロほど離れた閖上地区を訪れた。がれきは跡形もなく片付けられ、町中から水平線が見渡せるほどだ。快晴の空の下、見渡す限りの更地にわずかに残った家々の土台がむき出しになっていた。

 かつては赤貝の産地として知られ、約6000人、2100世帯が暮らす港町だった。しかし、東日本大震災で人口の1割を超える700人以上が遺体で見つかった。閖上は、今回の津波でもっとも深刻な被害を受けた東北沿岸部の町の1つといえる。

 町を襲った大津波の高さは、閖上漁港付近でおよそ8.5メートルに達したという。津波は内陸部までさかのぼり、仙台平野に広がる平たんな町に逃げ場はほとんどなかった。

 浜辺から500メートルほどの距離に位置する数少ない高台、「日和山」の高さは約6メートル。その上にあった富士主姫神社は、跡形もなく流されてしまった。

 漁港から2キロメートルほど離れた「五差路」にかかる歩道橋では、多くの人々の生死が交錯した。高さ約5メートルの橋桁すれすれまで波や漂流物が到達。最上部に上れた20人ほどの人々は九死に一生を得たが、「あと1段、階段を登りきれなかった人は流されてしまったと聞いた」と地元タクシー会社の運転手、高橋健二さんは話す。タクシーを止めてこうべを垂れた高橋さん自身も、津波で叔母を亡くした。

 震災から1年を経てなお、閖上に生活音は戻らない。3人が殉職した名取市消防署閖上出張所、引き取り手が見つからないアルバムや写真が保管される閖上小学校体育館――どこに行っても奇妙な静寂が支配している。時おり、ダッシュボードに「災害派遣等従事車両」の標章を掲げたトラックが、乾いた音を響かせて通り過ぎるのみだ。

 東北大学大学院の越村俊一准教授によると、東日本大震災で津波の被害を受けた地域の総面積は561平方キロメートルに達した。

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