除染が本格化 旧ソ連からフクシマに集う研究者たち

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2012/2/12 7:00
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日本列島を異例の寒波が覆い尽くした2月上旬、大陸から外国人が続々と東京に集結した。ロシアやウクライナ、ベラルーシの政府要人や研究者らだ。3月から本格化する除染で福島第1原発の事故処理が新たな段階に入るのを機に、1986年のチェルノブイリ原発事故で得た経験を伝えに来たという。福島県を中心とする除染や、廃炉の作業は、技術と予算を総動員した巨大プロジェクトになる。旧ソ連の一行のアドバイスは、これから日本に待ち受ける長く険しい道のりと、コストの重さを改めて連想させる。

チェルノブイリ原子力発電所では今も事故処理が続く(ウクライナ科学アカデミー・原子力発電所安全問題研究所の資料から)

チェルノブイリ原子力発電所では今も事故処理が続く(ウクライナ科学アカデミー・原子力発電所安全問題研究所の資料から)

2月3日、都内で開かれた「除染・環境修復技術」に関する国際シンポジウムは、さながら旧ソ連各国の除染や廃炉技術のショーケースとなった。壇上には放射線化学や環境修復、原子力安全工学などの一線の研究者が次々に登壇。チェルノブイリから得た除染や廃炉の知識をまとめてプレゼンした。

数百人を収容するスペースは立ち見も出るほどの盛況ぶり。日立製作所や東芝、清水建設など大企業の関係者もかけつけた。

「チェルノブイリの経験を、フクシマで生かしてほしい。協力させてほしい」。登壇者は、異口同音にとなえた。

チェルノブイリの災禍と引き換えに、この四半世紀で原発事故処理に関する様々なノウハウを蓄えた旧ソ連勢。しかし、2011年3月に福島原発が事故を起こした直後の段階では、出番は少なかった。チェルノブイリ原発は黒鉛減速炉で、福島原発を含め西側の標準となっている軽水炉と構造が全く異なるためだった。

旧ソ連各国が参加した除染技術のシンポジウムには多数の参加者が詰めかけた(3日、都内)

旧ソ連各国が参加した除染技術のシンポジウムには多数の参加者が詰めかけた(3日、都内)

存在感を示したのは米国や、フランスを軸とする西欧の専門家や企業。放射性物質の放出は回避できなかったものの、日本がてこずった原子炉への注水や汚染水の浄化を助け、11年末にはなんとか「冷温停止状態」を達成した。

原子炉内部の状態が落ち着いたことで、状況は変わった。どうやって原発の外にまき散らされた放射性物質を減らし、壊れた原子炉そのものを処理するか――。チェルノブイリの「遺産」を活用する余地が出てくると、ロシア人らは日本に向かった。

これから本格化する除染は、一大プロジェクトだ。日本政府は昨年夏、国際放射線防護委員会(ICRP)の2007年勧告などを踏まえて、追加の被ばく線量が年間20ミリシーベルト以上の地域の「段階的かつ迅速な縮小を目指す」との基本方針を打ち出した。年間20ミリシーベルト以下の地域では、追加の被ばく線量を年間1ミリシーベルト以下に抑える目標を掲げた。

年明けには国が担う福島原発周辺の除染工程表を発表。たとえば、年間放射線量が50ミリシーベルト以下の地域(174平方キロメートル、森林除く)は2年後の2014年3月末までに除染を終えるとしている。ただ、一定の汚染が見られる地域は福島県を中心に100を超える市町村にのぼり、除染の完了時期や費用の全容は判然としない。除染に関連する経費は2012年度予算だけで4513億円を計上した。

最近は、比較的低い放射線量での発がんリスクなどの増大を証明するのは難しいとして、現行の基準を緩和方向で見直すべきだと指摘する学者も増えている。しかし、いったん示した基準を引っ込めるのは、政治的に困難だ。

掛け値無しで「年1ミリシーベルト」などの目標を達成しようとすると、予算が兆円単位で膨らみ、瀬戸際にある日本の財政状況を圧迫しかねないとの懸念も出ている。

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