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活気づくニッポンの鉱山 本当に「資源小国」なのか

編集委員 後藤康浩

坑道を進むと黒光りする炭層が現れた。釧路の炭鉱で石炭を手にする筆者

「日本は資源小国だから、資源を輸入する必要がある。そのためには良い製品をつくって世界に輸出し、外貨を稼がなければならない」。子供のころから、こんな話を刷り込まれてきた記憶がある。こうした言葉の後には当然ながら「だからしっかり勉強しなければならないよ」というお説教もついていたが、「資源小国」の切なさや危うさは心に残った。戦後、日本が焼け跡からの復興、高度成長、経済大国への道を疾走してきたのも「資源小国」という恐怖感に駆り立てられた面があるのは間違いないだろう。

ただ「本当に日本は資源小国なのか」という検証はあまり聞いたことがない。今回はそこにこだわってみた。金、銀といえば、豊かさをもたらす希少な資源の代表のように感じるが、日本は歴史的にその大産地であり、世界への供給地だった。佐渡金山(新潟県)、石見銀山(島根県)はその代表であり、16世紀から18世紀にかけ、ともに一時は世界最大の金鉱山、銀鉱山だった。石見銀山の銀供給がアジアから欧州にかけての銀本位制を支えたともいわれるほどだ。

「宝」のような金山

実は、金山は日本にもまだあった。しかも鉱石の金含有量が世界最高水準という優良金山。それが菱刈鉱山(鹿児島県)だ。山間にのどかな田園が広がる農村だが、その地下には総延長130キロの坑道がアリの巣のように張り巡らされ、年間7.5トンもの金が採掘されている。金は世界で年間2400トン前後生産されており、それからみれば小粒だが、1トンあたり世界平均の10倍の40~50グラムの金を含有している、まさにお宝のような金山だ。

金鉱石といってもイメージしにくいが、石英などを含んだ白っぽい石の中に数ミリ幅の黒い筋があり、その中に金が含まれているという。それを砕いて金を分離し、その後、精錬して99.99%、いわゆる「フォーナイン」といった純金に加工していくわけだ。その起点は地中奥深い坑道の切羽(岩石を切り出す最先端)に顔を出す数十センチの白い帯のような鉱脈だった。それを見つけ出すのが鉱山技術者であり、自然が創り出した「神からのプレゼント」を理論と経験、直感で探し出す人々だ。

北の大地にも活気

石炭を満載した専用列車が走る。釧路コールマインで

一転、北の大地の釧路では「黒いダイヤ」と呼ばれた石炭に挑む男たちが活躍していた。釧路コールマイン。2002年に閉山した炭鉱を地元が協力して引き継ぎ、石炭を掘り続けてきた。坑内掘りでは日本で唯一の鉱山。こう聞けば、先行きのない事業のように響くが、実態は正反対だった。世界的なエネルギー資源の価格上昇で国内炭も十分な価格競争力を持つようになり、増産も検討されるような活気があった。

釧路コールマインの特徴は海底に炭層が広がっていること。「人車」と呼ばれるトロッコで海面から250メートルあたりの場所まで行き、そこから坑道を20分歩くと、ようやく黒光りする炭層に対面した。細い金の鉱脈とは違い、炭層は3メートルほどの幅があるが、炭層を求めてより奥深く掘り進む点は同じだ。最先端の設備で安全かつ効率的に石炭を掘り出しているのが印象的だったが、「きょう掘った場所の形状が地下の圧力によってあしたには変わっている」(現場責任者)というほどの自然との戦いの場でもあった。

採炭には最新鋭のドラムカッターが使われている

菱刈金山、釧路コールマインに共通しているのは、資源量はまだまだ豊富だという点と、生産を続けることに重きを置いている点だ。資源を長期的視点で計画的、経済的に掘り出すとともに、生産現場を維持することで次の世代の技術者を育てる目的があるからだ。

実は、日本にはまだ多くの資源がある。海洋にはエネルギー資源になるメタンハイドレートや希少な金属を含有する熱水鉱床もある。日本の排他的経済水域(EEZ)の面積は世界第6位で、中国やインドを上回る。地中の資源や海洋、海底の資源を考えれば、日本は資源大国になれるチャンスがある。それ以上に日本には菱刈、釧路の鉱山、炭鉱で働く人材という資源もあるのだ。

「私が見た『未来世紀ジパング』」はテレビ東京系列で毎週月曜夜10時から放送する「日経スペシャル 未来世紀ジパング~沸騰現場の経済学~」(http://www.tv-tokyo.co.jp/zipangu/)と連動し、日本のこれからを左右する世界の動きを番組コメンテーターの目で伝えます。随時掲載します。後藤康浩がコメンテーターとして登場する「沸騰!ニッポンの鉱山」は1月30日に放送します。

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