世界最速の武器「京」で巨大地震から日本を守れ
近未来探訪(4)災害予測技術、東日本大震災の教訓

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2012/1/5 7:00
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 東日本大震災の災禍を目の当たりにして、21世紀のテクノロジーの最前線に立つ多くの科学者や技術者が無力感にさいなまれた。2012年はそこから立ち直り、再び英知を結集して自然の猛威に備える節目の年になる。地震などの巨大なエネルギーの解放を防ぐすべはないし、到来の時刻を予知することも難しい。しかし周期的に発生する地震の規模や、押し寄せる津波の波力などを予測する精度が十分に高まれば、被害は最小限に抑えられる。カギを握るのは高い演算力を持つコンピューターだが、幸いにして、日本には富士通などが開発中の世界最速の「京」がある。出直しを図る学者らは、30年以内に70%の確率で発生するとされる連動型の「南海トラフ巨大地震」の予測に照準を合わせている。

(提供:地震津波・防災研究プロジェクトに参加する東大の前田拓人特任助教、古村孝志教授)
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(提供:地震津波・防災研究プロジェクトに参加する東大の前田拓人特任助教、古村孝志教授)

 1秒間に1京(京は1兆の1万倍)回の計算速度を持つ世界最速のスーパーコンピューター「京」。巨額の開発費を投入しただけに、政府からはそれに見合った成果を出すことを強く期待されている。文部科学省は次世代スーパーコンピューターの「戦略5分野」を決定。その3番目の分野として「防災・減災に資する地球変動予測」が挙げられた。

 この予測活動を担う中心的な組織が、独立法人の海洋研究開発機構だ。2016年をめどに、東海、東南海、南海地震が連動して起こる「南海トラフ巨大地震」などの予測で一定の成果を出すことを目指している。

 「無力だった」。機構の地震津波・防災研究プロジェクトリーダー、金田義行氏は東日本大震災の発生当日を振り返る。くしくもその日、文部科学省では地震調査委員会が開かれていた。高層ビルの16階は激しく揺れ、居合わせた研究者らは3~4時間もその場にとじ込められた。「どこが崩れた」「宮城沖か」――いや、違う。米地質調査所(USGS)からようやく入手した「マグニチュード8.8(のちに9.0に上方修正)」という規模に、がくぜんとするほかなかったという。今は悔しさをバネに、「京」を活用した次世代の予測システム開発をけん引している。

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 最大の目標は、連動型の巨大地震が起こった場合に考えられる被害の詳しいシミュレーション。南海トラフ巨大地震が起きた場合には、東日本大震災と同様、地震と津波による複合型の被害が予想される。「京」を使い、地震による家屋の倒壊や、街中に押し寄せる津波の大きさなどの詳細な予測を目指す。得られた成果を、都市の避難経路などを具体的に書き込んだ実用的なハザードマップの作成などに役立てようとしている。

 2002年に完成、地震シミュレーションに使われてきた海洋研究開発機構のスパコン「地球シミュレータ」は「1ヘルツ未満の地震波しかシミュレーションできなかった」(金田氏)。建物の被害を招きやすい5ヘルツ以上の地震波のシミュレーションは、「京」で初めて可能になる。世界一を誇る計算スピードはもちろん、大まかに言えば「『地球シミュレータ』に比べて100倍はある」(東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センターの今村文彦教授)という「京」の並列処理能力がそれを可能にした。

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