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高橋大輔「25歳…まだ成長できるって感じてる」

 11月のグランプリ(GP)シリーズNHK杯で優勝、高橋大輔(関大大学院)は2005~06年トリノ五輪シーズンから、ケガをした08~09年シーズンを除き、通算6回目のGPファイナル(9日から、カナダ)進出を決めました。25歳はフィギュア界ではベテランですが、「自分ではベテランという感じはしない。去年より、(気持ちも体も)すげえ若いです。若い選手にはまだまだ負けません」と話しています。
「自分に『余白』を感じる」という高橋選手

昨季の自分は「ご隠居さん」

昨季は気持ち的に引いていたというか、自分が出場しているのに、なんとなく試合を遠くから見ていているような感じで、いうならば「ご隠居さん」みたいな感じでした。

09~10年のバンクーバー五輪シーズンは「やるしかない」と、あれこれ考える余裕はありませんでした。しかし、昨季は「成長できるのかな?」と、表現はちょっと難しいですが、自分に「余白」というものを感じられませんでした。自信がなかったし、試合前はいつも不安。ジャンプも、僕自身が跳ぶ前に「大丈夫かな?」ってドキドキしてしまったくらい。

今は充実していて、体力も去年よりあります。若手選手たちともガチで競り合っています。そんな自分がすごく楽しいですね。僕、負けず嫌いだから。

ただ、以前は試合後の2日間くらい完全にオフにしても(勘が狂わずに)体は動いたのですが、さすがにそれはできなくなりました。そこは年齢を感じます。今季は試合翌日でもなんだかんだと氷には乗っています。

4回転ジャンプだけでは点数が出なくなった

今季は点数の出方が変わったなと感じます。昨季は4回転ジャンプを跳べば、技への加点も、(芸術性を評価する)演技構成点も出ましたが、今季はちょっと違う風に感じています。

4回転は4回転、それ以外はそれ以外とはっきり分けて、評価するような流れ、総合力を求められていると感じます。いい傾向ですよね。もっとも、僕ら選手は大変ですけれど。

僕自身、まだ試合では4回転は跳べていないけれど、イチかバチか、というジャンプではなくなりました。トーループ(左足のつま先をついて、右足で踏み切るジャンプ)、フリップ(右足のつま先をついて、左足のインサイドエッジで踏み切るジャンプ)の2種類で練習しています。

4回転フリップの方が4回転トーループより基礎点が2点も高いです。フリップ自体は得意、やろうと思えばいつでもできると思うけれど、フリップはきっちり4回回らないといけない。一方、トーループは順回転しながらジャンプ体勢に入るので、4回きっちり回らなくてもいい。だからトーループの方が体は楽だし、靴への衝撃も少ないです。

すぐなじむ靴もあれば、1週間以上かかる靴もある

スケート靴は1足15万円

新しい靴をなじませるには時間がかかります。そして、すべての靴がいい靴とは限らないし、1足がブレード約7万円超と靴約7万円超で、合わせて約15万円。今でも毎月1足、下ろしているというのに……。(4回転フリップに挑戦するのは)懐にも負担です。

今季は成長できる――。そんな手応えというか、自分に可能性を感じています。スケーティングを見直して、フィギュア選手がよく口にする「伸びる」というか「滑る」っていう感覚がよみがえってきました。言うならば「抜け感」があるんです。

言葉で説明しにくいんですが、今まで体の中心にギュっと固まっていたものがスッと抜けて、リラックスしている。でも、中心に一つ芯は通っているという感覚です。

スケーティングにストレスがなくなったから、ジャンプやスピンに集中できています。滑り出すと気持ちいいから、練習のリズムもいいんですよ。調子が悪くても毎日、4回転ジャンプの練習ができています。

ケガをしてから昨季まで、ジャンプにパンク(フィギュア用語で3回転が2回転になるなど、「回転が抜ける」という意味)が多く、そうしたところでつまずいていました。今はそれがなく、ポンポンポンって進む。だから技術練習だけでなく、プログラムを通したり、追い込んだ練習もできています。

ケガする前は無意識でできた

ケガをしてから昨季まで、ずっとスケーティングに気持ち悪さというか、不快感がつきまとっていました。滑ること自体が嫌で、練習でも朝の一歩を踏み出すのが苦痛だったこともあるくらいです。

「自分はこんなに下手くそだったっけ?」「手術したから、仕方ないのかな?」と思っていたけれど、どんどんどんどん悪くなっていく。理由が分かりませんでした。「何でできないんだ」って、本当にイライラしていました。

スケーティングに「抜け感」が出て、ストレスが減った

ケガをするまで、アバウトでした。スケーティングはこういうものだっていうのが、頭の中に漠然とあって、考えなくても無意識にできた。だから、ケガをして体が変わってしまうと、どうしていいか分からなくなりました。

今夏のフランスのリヨンでの2週間は貴重でした。スケーティングとステップだけ、毎日4時間。ミュリエル・ザズーイ先生(02年ソルトレークシティー五輪アイスダンス金メダリストコーチ)とロマン・アグノエル先生、オリビエ・シェーンフェルダー(08年アイスダンス世界王者)らが教えてくれました。

アイスダンス世界王者のマンツーマン指導

アイスダンスはユニゾン(一致)が生命線。ある方向に行くにしても、右肩を出していくか、左肩か、いや腰を出していくのか……、2人の動きが合っていないときれいに見えません。だから手足の伸ばし方、体の持っていき方、足さばき、エッジの乗る位置……、アイスダンスはいろいろな点ですごく細かい。オリビエがマンツーマンで1時間半ぐらいだったり、みっちりと教えてくれました。

ホームグラウンドの関大アイスアリーナで。高橋は母校の誇り

こうしたリヨン合宿の後、9月から週2回始めたバレエのレッスンも、発見の連続でした。バレエを習って、体の中心軸について考えるようになりました。当たり前のことですけれど、体の構造を緻密に考えて、バレエの動きって作られているんだって実感しています。「この筋肉をこう使うから、こうなるんだ」って。遅ればせながらやってみて、けっこう面白いです。

こうしたことが融合して、スケーティングが良くなってきているのだと思います。柔軟体操をしているのは、体が柔らかくないと、バレエの動きができないから。毎晩、お風呂につかるようになったのも、体が温まらないとストレッチができないからです。

なんでもっと早くやらなかったのか? それは、ケガをする前は「できちゃってた」からです。人間、追い込まれなければ、なかなかやれないんじゃないかと思います。「(14年の)ソチ五輪まではやる。それ以降はもう選手はしない」。選手としての最後の目標がはっきり見えたから、心の底から、すべてのことをきっちりやりたいって思えています。

だからか、演技も良くなっているんだと思います。昨シーズンは観客から「(反応が)来てる」という手応えをあまり感じられませんでした。僕自身が伝え切れていなかったんでしょうが、滑っていてしんどかったです。でも、今季は感じています。

プログラムはフィーリングで滑る

ファンの方から、ショートプログラム(SP)の「in the Garden of Souls」は「夜の砂漠のイメージ」がするとか、いろいろ言って下さるのですが、よく考えてくれているな、って思います。

僕自身はあまりというか、全くそういうことは考えていないんです。あの曲、無機質ですし、「僕のそのときどきのフィーリングで滑って、表現している」って思ってください。

フリーの「Blues for Klook by Eddy Louis」もそうです。ブルースの意味とかあまり意識しません。自分の直感を信じて、感覚のまま、自然に音楽に乗っているだけです。皆さんの心に響くよう演じているつもりです。僕の演技から何かを感じて、僕に返して頂ければありがたいです。

ニコライ・モロゾフコーチと離れた3年前、「一人でやる」って決断したものの、なかなかできずにいましたが、ようやく自分で練習メニューから、生活もコントロールできるようになりました。

「やることが多くて遊ぶ時間もない」と言う

ニコライのころは、サボると怖いからやっていた感じです。バンクーバー五輪のシーズンは「時間がない! やらなきゃ、やらなきゃ」って追われるようにやっていた。昨季は「やりたくないけどやらなきゃ」という感じでした。今は練習はきつくても、充実しています。

メディアや友人とも上手に距離をとれるようになったと思います。「目標は? 金メダルですね?」と聞かれると、以前はそのプレッシャーに屈することも少なくありませんでした。

もちろん、金メダルは欲しいですし、目指して練習していますが、全力を尽くしても取れないこともある。そして、そういった気持ちをメディアなどに伝えられるようになりました。

「サボっていい」と思うからサボらない

これまでは友達と遊びに行っても、誘われるまま、最後まで付き合っていたし、それが楽しかったのですが、今では「練習あるから、今日はここで帰る」って切り上げるようになった。日常茶飯事だった(長光)歌子先生とのケンカもなくなりましたね。

寝坊や遅刻もなくなりました。あっ、でもサボってもいいとは思ってるんです。「サボってはダメ」と決めてしまって、ストレスを感じたくありません。「サボってもいいや」って思っていると、逆に「(疲れたけれど)ちょっとだけやっとこうかな」って、僕ってサボらないみたいです。

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