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イップス克服へ苦闘 プロゴルファー・ 佐藤信人(上)

ゴルフの金言に「パット・イズ・マネー」がある。繊細なタッチが要求される1打に賞金、生活のかかるプロゴルファーには短いパットで思うように手が動かなくなるイップスに苦しむ選手が少なくない。先月の日本オープンで3位に入ったプロ19年目の佐藤信人(41)は、この10年間"宿病"と格闘を続けている。

欠場・棄権を繰り返し一時は鬱状態に

ストローク写真を見て「発病」

病の萌芽(ほうが)は2002年。日本ツアー選手権など3勝をマーク、谷口徹と賞金王を争い自己最高のランク2位に入ったシーズンだった。雑誌の取材で、パットをどんな軌道でストロークするか撮影された。

後で写真を見たら、フォローで思ったより内側に打ち出している。「いけない。真っすぐ打たないと……」。パットに定評のあった佐藤が初めて打ち方を気にするようになり、じわじわとあり地獄に落ちていった。

パターの握りをクロスハンドにしたり長尺・中尺パター、あれこれ練習器具を試したりと悪戦苦闘。それでも予選会を突破、04年に念願の欧州ツアーに参戦した。2月のカタール・マスターズの2位で翌年のシード権も獲得し、「最低2年はやりたい」と勇んだが、出場の半分以上で予選落ちしてすっかり自信を失い、05年の半ばでしっぽを巻いて欧州から撤退した。

出社拒否症のような状態に……

国内ツアーに戻ってもイップス病は悪化の一途。翌06年には腰痛が追い打ちをかけた。練習日は何ともないのに、試合の始まる木曜日になるとベッドから起き上がれない。

レントゲンや磁気共鳴画像装置(MRI)検査をしてもたいしたことはなく、医者も首をひねった。欠場や棄権も再三。本人いわく「出社拒否症みたいで、鬱状態に」。

まじめな完璧主義者がはまりやすい落とし穴。試合前の練習で10球なら10球ともいいショットができないと、不安でたまらない。インパクトで体が沈む自分のスイングが嫌いで、プロ入り当時からコンプレックスを抱いていた。腰痛の原因はスイングが悪いからに違いないと思い込み、ますます落ち込んだ。

練習ラウンド時、ティーインググラウンドで詰まって後続組が来ると「他のプロに見られるのに耐えられず」ティーショットを打たずに歩きだし、第2打地点から打つこともあった。

マイナス思考のスパイラルに

当時の帯同キャディー、佐々木裕史によると「予選通過した試合でも、大きく曲げたり一つミスをすると『俺はもうダメだ。帰りたい』と言ったりした」。

欧州転戦に同行、バッグを担いだこともある妻の裕子はこう話す。「プライベートで回っても、ゴルフがつまらない、コースへ行きたくない。人に自分のゴルフを見せたくないって。試合会場で練習するのが嫌で、街の練習場で打ってからコースへ行ったり」。詳しい話はしないが、暗い表情をすることが多かったという。

「マイナス方向へ一生懸命自転車をこぐみたい」という悪循環にほとほと疲れ果てた。国内メジャー3勝(通算9勝)の実力者が、02年を最後に優勝から見放され、09年にはシードを失った。ツアー出場権をかけた予選会にも失敗、試合から遠ざかっていった。

(敬称略)

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