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錦織、憧れのフェデラーに近づいた1年 プレーで我慢も

6日まで行われた男子テニスのスイス室内で今季2度目の準優勝を飾った錦織圭(21、ソニー)だったが、次週のマスターズ・パリ大会は1回戦で世界ランク63位のセルジー・スタホフスキー(ウクライナ)にストレート負け。錦織の2011年シーズンは終わった。年初の世界ランキング98位から24位(7日現在)まで駆け上がった今年、何が変わってきたのか。

マスターズ・パリ大会は1回戦負け

1回戦負けしたパリ大会は、こうなるような気がしていた。好結果を残した翌週は、疲れもあったりして、成績があまりよくない傾向がある。ベスト4だったマスターズ・上海大会と、準優勝だった次戦のスイス・バーゼルの大会の間には約2週間あった。

今回は6日午後にスイスのバーゼルでロジャー・フェデラー(スイス)とスイス室内の決勝を戦い、翌日パリへ飛び、8日にスタホフスキーとの初戦だったから疲れも当然あっただろう。

男子テニスは100位を切ると、数字ほど力に差はない。錦織も現在は世界ランク24位でも、9月までは50位台。今後、トップ20台を維持、そしてランクを上げるには、ケガがあっても、調子が悪くても、勝ちきる強さが必要だ。さらにトップ10に入るには、どの大会でも平均してベスト8に残れるくらいでないといけない。

「20位台…もういい訳はできない」

本人もその点は分かっているのだろう。ブログの中で、「20位台……、うぉ」と驚きながらも、「もう引き返せません。もういい訳はできないということです」と書いている。

スイス室内の準決勝で世界ランク1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)に勝ったことが注目されるが、錦織が本当に実力が一段上がったと感じられたのは、完敗した決勝のフェデラー戦の方だ。

先制パンチを浴びせるかのように、フェデラーに第1ゲームから前へ前へとグイグイ攻め込まれると、すべてが後手後手に回った。「テンポの速さとアグレッシブなプレーについていけなかった」と錦織。しかし、第2セットの中盤くらいから、競り合える部分が出てきた。

「今の僕にはお手上げのプレー」

しかし、フェデラーも分かっていた。このテンションで攻め続けることは第3セットまでできないこと、最終第3セットに持ち込まれると、もつれる可能性も高くなることを――。

第2セット5-3とリードしてのサービスゲーム、30-40とブレークポイントを握られたところで、「もう死にかけている奴に、トドメを刺すようなこともしたよな」(錦織の父・清志さん)。思わずのけ反るようなパッシングショットを決めて追いつき、最後は強烈なスマッシュを決めて勝利した。「ちょっと、今の僕にはお手上げのプレーだった」と錦織は振り返る。

フェデラーも錦織を「強くなった」

フェデラーは今季、1月に勝って以来、優勝がなかった。しかも、故郷・バーゼルでの大会。どうしても勝ちたかったフェデラーは、錦織をよほど警戒していたのだろう。

「ジュニアのころから才能があると思っていたけれど、強くなってここまで来てくれてうれしい。スピードとパワーがあるから、数年後は中心にいると思う」。試合後のコメントは決してリップサービスではないと思う。

清志さんもうれしそうだった。「(フェデラーは)圭のことをよく知ってる。圭がやられたら嫌なことを、全部してきたし、まったく隙を見せなかった。自分に似ているから、分かるんだと思う」

錦織はフェデラーと似ているとはよくいわれる。08年の全仏テニスの決勝前、"仮想・フェデラー"として、ラファエル・ナダル(スペイン)が練習相手に錦織を指名したのは有名な話だ。

錦織はフェデラーのことを「何でもできるので、見ていて楽しい。どこからでも打てる。ああいう選手になりたい」と話している。錦織も「何でもできる」の域までは至っていないが、ストロークのうまさ、ショットの多彩さ、何より「見ていて楽しい」ところは似ている。

プレーの発想が豊か

テレビの地上波で放送される機会がほとんどないのは残念だが、錦織こそ実際に試合を見てほしい選手だ。他競技を含めて日本人選手は器用さを生かし、テクニックで世界と伍(ご)していくケースが多いが、それに加えて錦織はプレーの発想が豊かなのだ。

ここでこんなところに打つんだ。このタイミングでこのショットを選ぶのか……。

07年秋、プロ転向後の初戦を見たとき、「日本からこんな想像力のある選手が出てきたのか」とワクワクしたものだ。「強引」という面も多々あったが、まだ17歳。そこも、それはそれで魅力的だった。

コート外での責任にも気づきはじめる

しかし、強引なプレーをいつまでも続けていてはライバルにつけ込まれる。昨秋、「最近の課題はリスクを冒さない(で我慢する)ことですかね。試合後、コーチには『このポイントではリスクを冒しちゃだめだろ。ディフェンス力を上げて、もうちょっとミスせず相手にプレッシャーをかけるようにしろ』といわれる」と、話していた。今季の飛躍は、サービスの向上に加え、この点が改善されてきたからだ。

日本では想像しにくいが、テニスツアーはコート内の競争は激しいけれど、コート外はゴージャスで華やかだ。それだけファン、大会主催者、スポンサーの期待があり、トップ選手になるほど責任、社会的にも適切な振る舞いが求められる。

フェデラーやナダルはそれらを背負った上で勝ち続けている。そういうトップ選手のすごさを、錦織も気づきつつあるという。

昨年のこの時期、上海大会は初戦負け、その後下部ツアーを3大会転戦して102ポイントを稼ぎ、世界ランク98位で新年を迎えた。現在は24位にジャンプアップしたが、1500ポイントのうち、上海とスイスのバーゼルで660ポイント稼いだ。

22歳の誕生日も機中で

このポイントが失効する前に、ある程度勝っておかないと、ランキングはガクンと落ちる。来年はそういうプレッシャーもかかってくる。

24位は勢いでなく、錦織の真の実力なのか……。来年は、それが問われる年になる。

11月中旬、錦織はオフを過ごすために日本に戻るが、スポンサー関係の仕事もあり、松江の実家には3日いるかどうか。11月末にはトレーニングのためにシカゴに渡り、22歳の誕生日(12月29日)は例年通り、米国から来季初戦の開催地(豪州・ブリスベーン)へ向かう機中で迎えるはずだ。

(原真子)

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