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黒田、松井、斎藤、福留…日本人FA選手はどこへ

スポーツライター 杉浦大介

米大リーグはカージナルスが5年ぶりの世界一になって2011年シーズンの全日程が終了し、ストーブリーグに突入した。これから先は有力選手の去就と、各チームの補強策の動向が注目となる。

日本人選手は黒田博樹(ドジャース)、松井秀喜(アスレチックス)、斎藤隆(ブルワーズ)、福留孝介(インディアンス)の4人がフリーエージェント(FA)となり、今季所属した球団による2日までの独占交渉期間内に契約がまとまらず、全球団との交渉が可能になった。それぞれ立場の違うこの4人は、どの程度の契約条件で、来季はいったいどのチームのユニホームを着ることになるのだろうか。

[黒田博樹]

今オフのマーケットに出ている4人の日本人選手の中で最も評価されているのは、11年シーズンにドジャースで自己最高級の成績を残した黒田である。

32戦に先発して13勝(16敗)防御率3.07という数字は、投手有利のドジャースタジアムを本拠地としていることを差し引いても立派なもの。この時期に大手メディアが軒並み発表する「FA選手ランキング」でも、ESPN.comとYahoo.sportsが13位、スポーツイラストレイテッド電子版が24位と、黒田には総じて高い評価が与えられている。

「勝利数、防御率、投球回数のすべてで自己最高の数字を残した黒田はどのチームにも歓迎される投手だろう」(スポーツイラストレイテッド電子版)

「来季開幕時には37歳になるが、200イニングを投げてくれて、四球は少なく、多くの内野ゴロを打たせてくれる。最高レベルの3番手先発投手がほしいチームにとって、2年契約を与えるに最適の存在だ」(Yahoo.sports)

このように、各媒体に記載されているコメントは好意的なものが多い。実際に過去4年間にわたってドジャースのローテーションをしっかりと守ってきた黒田は、メジャーリーガーとしてリスペクトされる投手になったといってよい。

だとすれば、優れた先発投手が少ない今オフのマーケットではもっと注目の的になってよい気もしないではないが……。

しかし、その実力の高さとともに、黒田のドジャースに対する愛着が、メジャーに知れ渡ってしまっている。今年の夏のトレード期限間際にヤンキースやレッドソックスといった有力チームから高い評価を受けながら、トレード拒否権を行使して下位に低迷するドジャースに残留した。

それほど忠誠心の高い黒田が、今オフに日本球界に復帰することはあり得ても、ドジャース以外のチームへの移籍を考えることはまず考えられないというのが一般的な見方である。

黒田は残留か、日本球界に復帰か

「黒田の持ち球は強打線ぞろいのア・リーグ東地区でも通用すると、ヤンキースはみている」と伝えたニューヨークの地元紙もある。CC・サバシアに次ぐ2番手先発がほしいヤンキースにとって、黒田は願ってもない投手で、本来ならかなりの好条件をオファーしそうな存在ではある。

だが、現実的に移籍の可能性は極めて低く、最近は東海岸のチームの補強候補として名前が挙がることもなくなってしまった。

緊張感に満ちあふれたア・リーグ東地区で投げる黒田の姿を見てみたかったという声は少なくない。しかし、1チームに忠誠を尽くすというのも、朴訥(ぼくとつ)とした黒田らしい選択ではある。

あとはドジャースにもう1年残留するのか、日本球界へ復帰するのか、周囲は再び黒田の決断を待つことになる。

[松井秀喜]

メジャー9年目の11年は、松井にとって自他ともに認める渡米以来最低のシーズンになってしまった。打率(.251)、本塁打(12本)は、もう「強打者」とはいえないレベルの数字。その結果、スポーツイラストレイテッド電子版のFA選手ランキングではベスト50から漏れてしまうという屈辱的な低評価だった。

「残された力はもう少ない。あと1年はいけるかもしれないが、来年の春季キャンプで(レギュラーの座を)勝ち取らねばならないだろう」

ESPN.comのジム・ボウデン氏が寄せたそんなコメントは、もう必ずしも定位置は保証されていないという今の松井の厳しい立場を表している。

とはいえ、松井が前半戦は打率.209、出塁率.290、長打率.327と低迷したが、後半戦は打率.295、出塁率.353、長打率.425と復調したことから、Yahoo Sportsは「負担(出場試合数)を減らすことによってジム・トーミ(インディアンス)、ジェイソン・ジアンビ(ロッキーズ)のようになれるのではないか」と記述し、起用法によってはまた貢献できることを示唆している。

松井の契約は長期戦も

ジアンビは昨季は64戦のみの出場ながら13本塁打を放ち、長打率はなんと.603をマーク。トーミはツインズに所属していた10年シーズンに108試合出場で25本塁打、ツインズからインディアンスにシーズン途中で移籍した11年も計93戦で15本塁打を放っている。

この2人のような起用法は今後、松井が選手寿命を伸ばすためには有効なのかもしれない(本人が納得するかは別問題として)。

来季の所属チームを考えると、やはり「アスレチックス残留」を推す声が圧倒的である。今なら比較的安価で済むこと、出塁率を稼いでくれる打者であること、いまだに経済効果が期待できること、来季に日本で開幕戦が開かれることなどの要因から、確かにアスレチックスがもう1年の起用を決める可能性は低くなさそうだ。

もし移籍があるとすれば、アスレチックスが松井の契約を後回しにしている間に、何らかの事情で指名打者に空きができてしまったチームが、獲得に名乗りをあげる場合に限られるのではないか。

いずれにしても「37歳の指名打者」に対する需要は決して高いとはいえない。アスレチックスはサンノゼへの本拠地移転問題を抱えていて来季の編成に取りかかるのが遅れそうで、来季の契約成立にはしばらく時間がかかりそうな雰囲気だ。

[斎藤隆]

中継ぎという役割ゆえに注目度は決して高くないが、実は斎藤こそが現役日本人メジャーリーガーの中でもトップクラスの安定した成績をマークしてきた投手である。

防御率3点以上のシーズンはこれまでの6年間で1度もなく、クローザーを務めたドジャース時代の3年間では計81セーブを記録。41歳となった今でも力がそれほど落ちていないことは、11年シーズンの2.03という防御率と、ポストシーズン7イニング連続無失点という数字が証明している。

「もしも斎藤が引退しないのであれば、来季もどこかのチームの価値ある貢献者として活躍しているはずだ」

「FA選手ランキング」で斎藤を48位に据えたYahoo sportsはそんな寸評を寄せている。

斎藤、「勝利の使者」はどこへ

年齢以外に問題になる点があるとすれば、中継ぎ投手でありながら、これまでの実績ゆえに「タイプA(注)」のFA選手になっていること。おかげで今オフのマーケット内で実力ほどの人気選手にはならないかもしれないが、それでもブルペン強化をもくろむチームの中で名乗りをあげるところはあるだろう。

スポーツイラストレイテッド電子版が「すぐに勝ちにいきたいエンゼルスが質の高い右投げセットアッパーを狙っている」と記し、斎藤の移籍の可能性を示唆したほか、ドジャース、インディアンスなどのターゲットになりそうだという報道もある。

過去6年で5度も所属チームがプレーオフに進出した「勝利の使者」が、来季はどこにその幸運をもたらすことになるのだろうか。

(注/もともとの所属チームから年俸調停をオファーされた「タイプA」の選手が、調停を却下してFAとなった場合、その選手を獲得したチームは引き換えにドラフト1位指名権を譲渡しなければならない)

[福留孝介]

論議を呼んだ4年4800万ドルの大型契約をようやく終え、結果的には福留もメジャーリーガーとして一定の評価を勝ち得ることはできたといえる。

11年シーズンもカブスでは左投手相手ではほとんど先発起用されなかったが、それでも出塁率は.374と高レベル。トレードで今夏インディアンスに移籍すると、右翼のレギュラーに定着し、抜群の外野守備力で存在感を示した。

「今オフに受け取る新しい契約は、2008年のカブス入団時より小さなものになることは間違いない。この大型契約は重荷となり、福留は入団当初の期待に応えることはできなかった。しかし、塁に出るのが得意な福留は、本来はリードオフマン役に適しているのではないか。その仕事が務まるという意味で、残した数字が示すよりも市場価値はやや高いかもしれない」

福留、出塁率は悪くなく

CBS.Sportsが記載したこの福留に関する解説コメントは、実に的を射たものであるように思える。最初の契約が余りにも大型であったために、福留の獲得は一般的に「失敗」と考えられてしまった。

しかし近年のメジャーリーグで指標とされることの多い出塁率は、実は4年間で通算.361と決して低い数字ではなかった。来季以降も完全なレギュラーは厳しくとも、右投手が先発のときに1番を任せるか、あるいは第4の外野手としてほしがるチームは出てくるだろう。

このCBS Sportsの記事内でも、古巣インディアンスに加え、ホワイトソックス、レッズ、アスレチックス、そして日本球界への復帰が来季の進路の候補として挙げられている。

もし日本球界に戻れば元メジャーリーガーとして注目されることは間違いなく、福留も日本復帰を視野に入れたような発言も残している。

あとは本人の心持ち次第。契約年数、年俸、それぞれのチームからの期待度などをてんびんにかけて、福留はこれから来季の落ち着き先を選択することになる。

(所属は2011年シーズン)

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