/

日本ラグビー強化へ「中学生から海外へ行こう」

元代表・四宮氏が後押し

ニュージーランド(NZ)で開催されたラグビーワールドカップ(W杯)で、日本は1分け3敗という結果に終わった。目標の「2勝以上」は果たせず、2019年のW杯自国開催へ強化に課題を残した。特にこれから若い世代の育成が急務。南アフリカやNZ、イタリアと強豪国のチームを渡り歩いてきた元日本代表の四宮洋平氏(32)も日本のラグビー界が発展するためには「もっと若いうちに海外でプレーする選手が多く出てこないといけない」と主張する。

10月下旬、12人の中学生がフランスへ

子どものころから世界のラグビーを体験すれば日本のレベルも上がる――。10月下旬、東日本大震災の復興支援として、フランス・ラグビー連盟から招待された中学生12人に同行してフランスを訪れた四宮氏はその思いを強くした。

遠征ではU-15(15歳以下)の7人制大会に出場。12人は強豪国の同世代の選手と一緒にプレーし、その体の大きさやコンタクトの激しさを身をもって体験した。

「練習ではできていたことが、試合になったらひるんでしまった。やはり外国人と相対したことがないから圧倒されたんでしょう」

小さいころから海外選手のパワーを知ればプラス

「なかなかこんな機会に恵まれないから、今回の子どもたちは運がいい。逆にいえば、こういった機会の少なさこそ日本の最大の課題なんです」

四宮氏の持論は「強化するなら中学生から海外に出て行け」。ラグビーが好きで伸び伸びとできる中学生時代から、海外の選手のコンタクトの激しさやパワーを知ることは世界と戦う上で重要と力説する。

なぜ中学生なのか。それは日本の高校でのラグビー環境に要因があると四宮氏はみている。高校進学時に一部の私立校に行かない限り、大学、トップリーグ、代表と上のレベルになかなか進めないのが現状だ。

中学校のラグビー部は野球やサッカーに比べて圧倒的に少なく、クラブチームもほかのスポーツに比べて未熟。日本協会もようやく昨年から全国中学生大会を創設したが、実践形式での経験がなかなか積めないという問題は以前から指摘されていた。

今後、開花するかもしれないのに…

「中学生は人間としても、選手としても成長段階で、体つきも変わってきている最中なのに、体が小さいことなどを理由に強豪校に進学できず、ラグビーをあきらめてしまっている子どもが大勢いる。高校や大学で開花するかもしれない芽を摘んでしまっている」

ただでさえ近年ラグビー人気に陰りが見え始め、少子高齢化と相まって競技人口の増加が見込めない中、早い段階で道が閉ざされてしまう状況は、本人にとっても、ラグビー界にとってももったいないというのだ。

「高校進学自体が選抜になっている。しかも強豪校でも、ごく一部のレギュラークラスの選手しか強化できていない。漏れたら終わり。もっと上を目指したいと意欲を燃やす選手は行き場を無くしてしまう。その子たちを救っていかなければいけない」

海外へ行きたい子どもたちの仲介役に

だが、こうしたシステム自体を変えることは困難なこと。「現役でもある私が1人で何かやろうとするにも限界がある」

だからこそ四宮氏は海外へ出ることを薦め、アカデミーで経験を積みたい子どもたちの仲介役を果たしたいと強い思いを抱く。自分が同じ経験をして、ラガーマンとしても、人間としても成長できたという自負もあるのだ。

南アフリカやフランスなどはアカデミーを創設して中学生からトップチームまで「一貫指導体制」を敷いており、世界のラグビーの潮流を知るには最も適した環境。「そこに身を置けばタフな人間になれる」。今後その懸け橋になるべく、賛同してくれるスポンサーを募って、意欲のある子どもたちを1年に数人、各国へ連れて行きたい考えだ。

サッカーの三浦知良氏のように

サッカーでいえば三浦知良氏が高校を中退してブラジルに渡って技術を磨き、その後日本でスーパースターとなったように、若い時期に海外でプレーして自国に帰ってくれば日本でやっている同世代をしのぐ実力はつく。

四宮氏自身はラグビー強豪校の桐蔭学園高(神奈川)で花園出場を果たし、関東学院大では大学一に3度輝いた。

桐蔭学園中時代に現スーパー15のコーチから指導を受け、大学1、2年時には第1回W杯で優勝したNZ代表(オールブラックス)のトライ王から指導を受けるなど海外のラグビーに触れる機会にも運良く恵まれ、次第に海外志向が強まったという。

「海外で多くのことを吸収した」

大学3年時にNZへ単身武者修行。「海外へ行って自分の実力を試したかった。大学をやめる覚悟もできていた。でも『卒業しろ』と知人から助言を受けて(海外に本格的に行くのは)少し後になりました」

「私は学生時代にいい出会いをたくさんした。そして海外で多くのことを吸収した。同じ思いを若いうちから多くの人にさせてあげたい」

数々の国でプレーしてきた四宮氏から見て現在の日本のラグビーは内向きな印象を受けるという。トップリーグで外国出身選手が多数在籍し、数年前に比べてレベルは確実に上がったといわれる。

厳しい世界で学ぶべきことは多いはず

だが、「国内でも強化できると思っている人が多い。日本選手もトップリーグに行けばレベルアップできると思って海外に目がいかなくなっているのではないか」

実際、日本人が1人しかいない環境で仲間とコミュニケーションをとり、プレーすることがどれほど大変か。厳しい世界で学ぶべきことは多いはずだ、とも指摘する。

小さい子どもたちが「大リーグに行きたい」「バルサやインテルでサッカーがやりたい」と夢を語るように、ラグビーでも海外に目を向けることが珍しくない時代へ――。

「自分をここまで育ててくれた日本のラグビーに恩返しするつもりで行動していきたい。現在、協会もラグビーW杯を開催する19年を1つの目標にして強化し始めているが、世界と戦える日本になるためには、その先も見据えた持続的な発展が必要。そこに貢献できたら」と四宮氏。新たな目標に胸を膨らませている。

(渡辺岳史)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン