勢いづく「ジャパニーズ文具」
斜陽を跳ね返す"プチハッピー" 異業種の人材も参入

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2011/10/27 7:00
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10月中旬の夜、比較的若い30人ほどの男女が東京・銀座の美術サロンにそぞろ集まった。針なしのホチキスに、消せるボールペン。昨今のヒット商品から大正時代のホチキス、ドイツ製のハサミまで、スライドに次から次へと文具が映し出され、壇上でマイクを握る「文具王」がうんちくを添える。「LOVE文房具!」と題されたトークイベントだ。

「文具王」が文具のうんちくを語ったイベント

「文具王」が文具のうんちくを語ったイベント

文具王こと高畑正幸氏(37)はテレビ東京の番組「TVチャンピオン」の全国文房具通選手権に出場し、3連続で優勝した経歴の持ち主。本職は大手文具メーカー、サンスター文具のマーケティング部だが、今年に入って文具王としての活動が増えたという。週末を利用したイベントなどでの講演は10月だけで5回。合間をぬってテレビやラジオ、雑誌などの取材にも対応する。

イベントに参加した1人、文具好きだという女性(29)はこう話した。「仕事の鬱憤を文具で晴らしているんです。ちょっとの支出で楽しい気分になれるし、同僚とのコミュニケーションのきっかけにもなる」

「斜陽」といわれていた文具がいま、なぜか活気づいている。一部の好事家だけの現象かと思いきやさにあらず。文具をとりまく話題は尽きることがない。文具業界に何が起きているのか。

■大型出店に文具あり

この10月、矢野経済研究所は「文具・事務用品市場に関する調査結果」を発表し、2010年度の国内文具・事務用品の市場規模を前年度比1.5%減の4805億円と推計した。「本格的な景気回復には程遠い中で、法人は文房具・事務用品などの経費削減を続けている」としており、不況のあおりを受けた右肩下がりのトレンドは変わっていない。

景気低迷や少子化に加え、ITの普及も逆風だ。オフィスではペーパレス化が進み、メモやスケジュール管理は携帯電話やスマートフォン(高機能携帯電話)で事足りるようになった。ますますアナログの文具は行き場を失ったかに見える。しかし……。

小売りの現場に目を向けると、文具の存在感は増すばかりだ。今年8月末にオープンしたレンタルチェーン「TSUTAYA」グループの「蔦屋書店前橋みなみモール店」。平均的な店舗の約3倍とTSUTAYA最大の広大な売り場で、文具・雑貨は3分の1以上の1000平方メートル以上も占める。運営するのはフランチャイズ最大の加盟社、トップカルチャーだ。

TSUTAYAの本部、カルチュア・コンビニエンス・クラブは出版市場やレンタル需要が国内全体として落ち込むなか、文具を書籍、CD・DVDに並ぶ柱に据える方針。既存店舗でも、文具売り場を順次、増床していくとしている。そのために今年7月、文具販売のノウハウを持つトップカルチャーと共同で、文具売り場の提案やオリジナル商品の開発を手がける新会社を設立した。

10月、伊東屋とユナイテッドアローズが共同で「阪急メンズトーキョー」に初出店した「イトーヤ ウィズ ユナイテッドアローズ」

10月、伊東屋とユナイテッドアローズが共同で「阪急メンズトーキョー」に初出店した「イトーヤ ウィズ ユナイテッドアローズ」

新店ラッシュに沸く東京・有楽町でも文具は勢力を増している。9月にオープンした大型雑貨店「有楽町ロフト」は文具売り場を目玉とし、約2万5000点をそろえた。10月、「有楽町阪急」の全面改装で誕生した「阪急メンズトーキョー」の地下には、老舗文具店の伊東屋とユナイテッドアローズが共同で、新手のセレクトショップ「イトーヤ ウィズ ユナイテッドアローズ」を初出店した。手袋やベルトなどの小物も並ぶが、中心は文具。伊東屋が約6割の商品を用意した。

■相次ぐ「文具本」の出版ラッシュ

一方、10月28日、旧西武有楽町店跡にオープンする「有楽町ルミネ」にも文具を中心としたセレクトショップ「エディト・トロワ・シス・サンク」が登場する。出店するのはデザイン文具のメーカーで直営店も展開するマークス(東京・世田谷)。「365日をステキに演出する」というコンセプトの新業態店で、自社製文具に加え、小物・雑貨や海外製のレターセットなども取りそろえる。有楽町ルミネで唯一の文具扱い店として、注目を集めそうだ。

こうした小売り業界の動きに同調するかのように、メディア各社も文具にわき立っている。

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