「ネット長者」が名門雑誌を買うワケ
奥平和行編集委員に聞く

2018/9/24 10:00
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ニュースを詳しく解説する「フカヨミ」コーナー。米セールスフォース・ドットコムのCEO夫妻が雑誌「タイム」を買収するニュースについて、日本経済新聞の奥平和行編集委員に聞きました。

水原アナウンサー

水原アナウンサー

奥平和行編集委員(9月17日出演)

奥平和行編集委員(9月17日出演)


▼ニュースの骨子
 顧客情報管理(CRM)最大手の米セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ最高経営責任者(CEO)が夫人リン・ベニオフ氏と共同で、老舗ニュース雑誌「タイム」を買収したことが分かった。同誌を傘下に持つ米メディア大手メレディスが16日に発表した。買収額は現金で1億9千万ドル(約212億円)。ベニオフ夫妻は日々の編集活動に関与せず、タイム誌の運営は現在の経営陣が引き続き担うという。

奥平編集委員の解説要旨は以下の通りです。

■ネット広告の台頭が背景に

「『タイム』は1923年に世界初のニュース雑誌として創刊し、日本でも毎年発表される『パーソン・オブ・ザ・イヤー(今年の人)』などでお馴染みだと思います。タイムの経営を巡る歴史は、まさに米国のメディア史そのもの。90年に映画・音楽のワーナー・コミュニケーションズと合併し、その後にインターネット企業のAOLと統合、そして分離しました。2014年に不振の出版部門を切り離し、それをメレディスが買収。さらに今回、セールスフォースのベニオフCEOと夫人が買収するわけです」

「こうした経緯をたどった要因にはネットの台頭があります。媒体別広告費の推移をみますとネット広告が急増し、雑誌の広告は低迷の一途をたどっています。雑誌の経営は苦しい。しかし歴史のあるメディアですから、ある程度のステータスがあります。純粋な投資先としては必ずしも魅力的ではありませんが、名誉を得るためにネット業界で成功した経営者が買収に乗り出すという流れがみてとれます。ベニオフ夫妻だけでなく、13年にはアマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス氏が『ワシントン・ポスト』を買収し、17年にはアップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏の夫人が老舗の雑誌『ジ・アトランティック』を買収しています」

■「報道には口を出さない」もろ刃の剣

「ただ、こうした買収がうまく進んでいるかというと、そうでもありません。12年にフェイスブックの創業者の一人、クリス・ヒューズ氏が雑誌『ニューリパブリック』を買収しましたが、4年ほどで売却しています。ベゾス氏がデジタル投資を加速させたワシントン・ポストの経営は軌道に乗っていますが、トランプ政権に批判的な報道を続けるため、アマゾンは報道に関与していなくても、結果的にトランプ氏はアマゾンを目の敵にしています。メディアの買収はもろ刃の剣という面もあり、手綱さばきが見どころとなりそうです」

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