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サッカー日本、タジク戦で本田の穴を埋める手は…

サッカージャーナリスト 大住良之

アルベルト・ザッケローニ監督率いる日本代表は10月7日、神戸でベトナムとの親善試合をこなした後、11日に大阪でFIFAワールドカップ2014ブラジル大会のアジア3次予選第3戦のタジキスタン戦を迎える。ここまで1勝1分け、勝ち点4でウズベキスタンと並んでC組首位に立っている日本。ホームで迎えるタジキスタン戦は、3次予選勝ち抜きへ向けて「50%」の比重を占めるといっていい重要な一戦だ。

あとどれだけ勝ち点を積み上げればいいか

「大きな海も一粒から」――。

9月2日、DF吉田麻也(VVVフェンロ)の「ロスタイム弾」で北朝鮮を下した後の記者会見で、ザッケローニ監督はこんなイタリアのことわざを紹介した。

一足飛びに出場権を獲得できるわけではない。3次予選の6試合、最終予選の8試合を着実に戦い、勝ち点をひとつずつ積み重ねていくことが、「ワールドカップ出場」という難事業の達成につながるというのだ。

ウズベキスタン、北朝鮮、タジキスタン、日本の4カ国で構成されている3次予選のC組。では、ここで上位2チームに入るには、どれだけの勝ち点が必要なのだろうか。

「2位以内」のめどは勝ち点10

同じように4チームのホームアンドアウェーで行われているAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループステージの過去5年間の結果を調べてみた。

ACLのグループステージは08年まで7グループ(28チーム)で、以後は8グループ(32チーム)。07年から11年までの5年間で総計38グループとなるが、07年と09年には棄権が出て3チームになった組がそれぞれ一つずつあったから、対象は36グループとなる。

この36グループで2位となったチームの平均勝ち点は10.4、3位は6.7である。そして2位の最多勝ち点は13、最少勝ち点は7、3位は最多が9、最少が3だった。

ちなみに前回、10年大会の3次予選全5グループの結果を見ても、この傾向は変わらない。2位の勝ち点平均が11.2、3位が7.2。2位の最多が15、最少が8、3位の最多は8、最少は6だった。

重要なのは、ACLの過去5年間でも、前回のワールドカップ3次予選でも、勝ち点10を上回った3位チームが一つもないという事実だ。

タジキスタンに勝てば「王手」

現在1勝1分けで勝ち点4の日本。残り4試合で勝ち点を6積み重ねれば勝ち点10となり、最終予選進出が極めて有力になる。勝ち点6を取るのにに必要なのは、2勝するか、1勝3分けである。

大阪でのタジキスタン戦を「3次予選突破の50%」と書いたのは、そうした理由による。この試合でしっかりと勝利し、勝ち点3を積み重ねることができれば、日本は最終予選進出に向け「王手」をかけることができるのだ。

チームとして成長し、これまでの2戦より良い内容で、得点数も多く取ることができれば、それに越したことはない。しかし、ここで何より大事なのは「勝ち点3」であることを忘れてはならない。

「昇竜」の勢いはない

9月に右ひざの手術をしたMF本田圭佑(CSKAモスクワ)はまだ合流できない。9月の2試合で堅実な守備を見せたDF内田篤人(シャルケ)は所属クラブの練習中に負傷して、招集することはできなかった。

そして北朝鮮戦、ウズベキスタン戦と交代出場して活躍したMF清武弘嗣(C大阪)は、オリンピック予選との過密日程のなかで足を故障。10月3日のチーム集合日に離脱し、代わってU-22日本代表の右サイドバック酒井宏樹(柏)が招集された。

昨年10月にザッケローニ監督が就任して以来、「昇竜」の勢いで伸び続けてきた日本代表。しかし、8月に韓国を3-0で下したときのような雰囲気は現在ない。強力な守備力をもつタジキスタンを相手に、ザッケローニ監督はどんなプランで戦うのだろうか。

イスティクロルの選手が中心のタジキスタン

タジキスタンは7月に行われた2次予選でシリアに敗れたが、その後シリアが出場資格のない選手(スウェーデン代表歴のある選手)を出場させたことがわかって失格になり、繰り上げでの3次予選出場となった。ちなみにシリアとの2戦は、アウェーで1-2、ホームで0-4だった。

「繰り上げ」が決まったのは、3次予選スタートのわずか2週間前。2次予選を戦った監督はすでに解任されていたので、国内リーグのチャンピオンで、代表に多くの選手を送り出している「イスティクロル・ドゥシャンベ」のアリミヤン・ラフィコフ監督が代行に指名された。

ラフィコフ監督は初戦のウズベキスタン戦(9月2日、ホーム、0-1)では9人、第2戦の北朝鮮戦(9月6日、アウェー、0-1)では10人ものイスティクロルの選手を先発に並べ、"単独チーム"らしい堅固な守備を見せた。

ロシアで活躍する選手は入ってくるのか

GKトゥイチェフとFWラビエフの30歳代の両ベテランが攻守の中心。ラビエフは昨年のタジキスタン・リーグの得点王でMVP、タジキスタン代表でも最多記録の15ゴールを記録している。2人ともイスティクロルの選手だ。

その周囲を固めるのは、07年のFIFA U-17ワールドカップ(韓国)でベスト16に進出、ペルーに1-1からPK戦で惜しくも敗れたときの若い選手たちだ。MFダフロノフ(20歳)、ファトフロエフ(21歳)、FWジャリロフ(22歳)。すべてイスティクロルの選手である。

ただ、2週間しか準備期間がなかった9月の試合から1カ月間の準備期間があった今回の日本戦。ラフィコフ監督は、ロシアリーグでプレーする「外国組」を思い切って使ってくるかもしれない。

システム変更はあるか

本田を欠いた攻撃陣をどう組むのか。それに苦しんだのが9月の日本代表だった。北朝鮮戦ではトップ下に柏木陽介(浦和)を使った。ウズベキスタン戦では、本来ボランチの長谷部誠(ウォルフスブルク)をトップ下に上げ、阿部勇樹(レスター)をボランチに使った。

しかし、いずれも機能したとはいえず、後半になって攻撃的MFの清武を投入、香川真司(ドルトムント)をトップ下に動かして攻撃が活性化された。

その清武が使えない今回、ザッケローニ監督はどんな手を使うのだろうか。

ザッケローニ監督は、とくに相手のプレッシャーがきつい前半には香川をトップ下で起用する気はないようだ。かといって、本田に代わるトップ下はいない。そこで考えられるのがシステムの変更ではないか。

3-4-3はサイド攻撃重視

これまではDF4人、ボランチ2人、攻撃的MFに両ウイングとトップ下を置き、FWをひとりにした4-2-3-1システムが主体だった。

変化の一候補は、ザッケローニ監督が「攻撃システム」として何回か試してきた3-4-3システムだ。トップ下を置かず、センターバックを3人とし、サイドバックを通常より高い位置にMFとして配する形。サイド攻撃を強化するシステムでもある。

この場合には、DFは今野泰幸(FC東京)、吉田とともに伊野波雅彦(ハイデュク・スプリト)あるいは阿部が使われ、ボランチは長谷部と遠藤保仁(G大阪)、前線は岡崎慎司(シュツットガルト)、李忠成(広島)、そして香川という形。両サイドのMFには、長友佑都(インテル・ミラノ)と駒野友一(磐田)あるいは酒井となるだろう。

李とハーフナーの「2トップ」

もう一つの変化の可能性が、FWを2人にした4-2-2-2システムだ。北朝鮮戦、ウズベキスタン戦の両試合で交代出場して活躍したFWハーフナー・マイク(甲府)を李と並べてFWに起用する形である。

中央にハーフナーを置くことによって相手守備を引きつけ、両サイドの岡崎と香川をフリーにする効果が期待される。現在「不動の1トップ」といってよい李だが、広島ではトップ下のようなポジションでプレーしており、運動量豊富なスタイルにも合う。私は十分可能性のあるシステムだと思っている。

何より大事なのは「勝ち点3」

だがもちろん、重要なのはシステムではない。この試合がワールドカップ予選で、何より大事なのは勝ち点3であり、それを得ることによってこのラウンド突破に大きく前進することを意識する必要がある。

北朝鮮戦で見せたような90分間の集中力、最後まであきらめず、冷静に戦い抜く精神力が必要になる。

2連敗はしたものの、強力な攻撃を誇るウズベキスタンとアウェーでの北朝鮮にともに0-1。タジキスタンはけっして弱いチームではない。

相手をあなどらず、全力で戦い、勝ち取る価値のある「勝ち点3」を手中にしてほしい。

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