2019年1月17日(木)

混迷深める世界経済 今年のノーベル経済学賞は誰に
日本人では雨宮・清滝氏らが候補

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2011/10/2付
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 10月10日、スウェーデン王立科学アカデミーがノーベル経済学賞の受賞者を発表する。ギリシャ問題に端を発し、再び世界経済に深刻な不況の足音が忍び寄る中で、経済学はどういう処方箋を提示しようとしているのか。今年の有力候補は誰か。気鋭の経済学者2人が大胆予想した(聞き手は編集局次長兼経済解説部長 佐藤吉哉)

祝迫 得夫(いわいさこ・とくお) 一橋大学経済研究所准教授。1966年生まれ。一橋大学経済学部卒、ハーバード大学経済学博士。専門はファイナンス、マクロ経済学

安田 洋祐(やすだ・ようすけ) 政策研究大学院大学助教授。1980年生まれ。東京大学経済学部卒、プリンストン大学経済学博士。専門はゲーム理論、産業組織論、マーケットデザイン

■ノーベル経済学賞の選考基準は

――2008年秋のリーマン・ショックを経て欧米経済、世界経済が混乱するなかでの経済学賞発表です。今年のノーベル経済学賞はどんな展開になると予想しますか。

祝迫氏 「マクロ経済学や金融理論は混乱しているといってよい状態です。やはりこれらの分野の人にはあげにくいのではないでしょうか。マクロ経済学者で受賞に値する人もいますが、例えばかつて米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたハーバード大学のマーチン・フェルドシュタイン教授は最近も『ユーロの実験は失敗だった』と発言していて、それを授賞式で言い出しかねない。財政政策の効果に批判的なロバート・バロー同大教授も『オバマ政権の財政政策は意味がなかった』と言いかねない。ダートマス大学のケン・フレンチ教授との共同研究による株価モデルで有名な、シカゴ大学のユージン・ファーマ教授は有力候補と目されていましたが、リーマン・ショック後はほとんど取りざたされなくなりました。バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長もマクロ金融理論では大きな貢献をした人ですが、このご時勢で選ぶわけにはいかないでしょう」

「ノーベル経済学賞は、まだライフタイムアチーブメント(生涯の功労)に対して時間がたってから授ける色彩が強いですから、現役バリバリというより過去に偉大な業績をあげた"大家"が受賞する傾向が強いように思います」

安田氏 「祝迫さんがおっしゃったように、ある程度、現実経済の動向を受けて受賞分野や、受賞者が左右される可能性はあります。だから逆に伝統的なマクロ、ファイナンスをちょっと違う視点で分析している人は、今年こそチャンスがあるかもしれないと思っています」

「ただ、この先何年かで必ず受賞するのではないかと思われる人は、ほぼもらってしまっています。過去2回、同じようにノーベル賞予想をしたときは、そういう人が残っていたので"命中率"は高かったんですが、今年に関しては"在庫一掃"の感がなきにしもあらずです」

■クルーグマン氏が受賞したのは……

――政治的な思惑も反映されますか。

祝迫氏 「08年に受賞したプリンストン大学のポール・クルーグマン教授はある意味、すごく政治的だったと思います。あのときは米国の大統領選直前で、欧州の知識人はブッシュ米政権にうんざりしていましたから、当時、ブッシュ氏を激しく批判していたクルーグマン氏を持ち上げるような意味合いがあったのではないか、とみています」

「政治的背景で一番分かりやすいのは、99年に受賞したコロンビア大学のロバート・マンデル教授ですね。同年にユーロが導入されたので、その理論的裏付けになった『最適通貨圏』の考え方を生み出したマンデル氏にあげましょう、と。変動相場制下では財政政策より金融政策の方が効果は高いと主張したマンデル=フレミングモデルで有名ですが、授賞理由は最適通貨圏の方でした」

安田氏 「古くはチャリング・クープマンスとレオニート・カントロヴィチ両氏が2人でもらった1975年を思い起こします。クープマンス氏が米国のエール大学に長らく籍を置き、カントロヴィチ氏が旧ソ連のレニングラード大学(現サンクトペテルブルク大学)の教授でした。これは冷戦下にあったという政治的な理由でこの2人になったんじゃないかという話は聞いたことがありますね。その結果、バランスを取るために、関連分野で重要な貢献のあるオペレーションズリサーチ(数学や統計学を駆使して、様々な計画に対して最も効率的になる方法を考える研究分野)の米国人学者が漏れたと噂されています」

「ノーベル賞の場合、どちらかというと分野を切り開くとか、便利なツールを開拓したという人が受賞する傾向があると思います」

祝迫氏 「だから名前が付いた定義とか法則がある人は評価されやすいですよね。スタンフォード大学のジョン・テイラー教授が提唱した、金融政策で金利を上げ下げするのに使われる『テイラールール』とか」

安田氏 「財政では『リカード=バローの中立命題』というのがありますね。19世紀前半にかけて活躍した経済学者リカードの議論を引き合いに、支出の財源は税金でも国債でも経済への影響はまったく同じとバロー教授が論じたものです」

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