2019年9月20日(金)

ジョブズ氏に仰天させられ続けたマックユーザーの幸福
デジモノNAVI

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2011/8/31付
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アップルのパーソナルコンピューター「Macintosh(マック)」を昔から使っていたユーザーは、スティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)の辞任報道に接し、多かれ少なかれ「未練」を感じたに違いない。もちろんアップルはジョブズの個人商店ではなく、後任CEOのティム・クックがうまくやる限り、「我らが愛したマック」の未来に大きな変化はないだろう。頭ではそれを理解しながらも、心の中で一抹の寂しさを消せないのは、マックが「とてつもない工業製品」であり続けるのは難しいかもしれないと予感しての寂しさだ。(敬称略)

マックのシェアは世界では5%前後、日本では最近ようやく10%を超えたという程度でユーザーの数は少ない。しかし、スマートフォン「iPhone」で多くの人が知ったように、アップル製品は外観やパーツだけでなく画面内の書体にいたるまで美しいデザインが魅力だ。

それは直感的な操作性にもつながっていて、だいたいの部分が「ここを押すとこうなるだろう」という想像の通りに動く。だから使っていて気持ちがいい。半面、マックユーザーでいるのは忍耐力の修業をしているようなところもあって、「何でこんなこと(仕様、構造)になっているんだろう」と首をかしげたくなることもあれば、長い間には「どうして過去を切り捨てるんだ」と裏切られた気持ちになることも多々あった。しかし、それも含めてがジョブズの先進性の魅力であり、「とてつもない製品」という所以(ゆえん)なのである。

初期の例は、フロッピーディスクドライブ(FDD)のイジェクトボタンを「美しくない」と言って取ってしまったことだろう。ジョブズは1976年に共同創業者のスティーブ・ウォズニアックと最初のマシン「Apple I」を作ってから85年9月に退社するまでおよそ10年アップルに在籍した。しかし、一時期社内失業状態のようになり、81年には"勝手に"マックのプロジェクトに参加していろいろと取り仕切ったという。

初代マックの「Macintosh 128K」は84年に完成し、2495ドルで売り出された。これにはフロッピーを取り出すイジェクトボタンがなく、オートイジェクト方式で前面がフラットだった。FDDにはイジェクトボタンなり開閉するラッチがあるのが「常識」だったのだが。

■初めて手に入れたマック

今見ても背面まですっきり整ったデザインの「Macintosh SE/30」。このマシンは形もさることながら、大きさの設定が絶妙だった

今見ても背面まですっきり整ったデザインの「Macintosh SE/30」。このマシンは形もさることながら、大きさの設定が絶妙だった

ジョブズが去った後、89年に発売された「Macintosh SE/30」もイジェクトボタンはなく、実にすっきりとしたデザインだった。当時マックは非常に高く、「パソコン界のポルシェ」とも言われていた。SE/30も動作周波数が16MHzのモトローラ製CPU「MC68030」を搭載し、感覚としてはやはりポルシェのような高級機だった(今から見れば人力車か牛車のようなスペックだ)。

ローンを組んで50万円近くで初めて手に入れた憧れのマックは、実際に使ってみるとこのオートイジェクトが結構遅かった。フロッピーを取り出す時はマウスでつかんでゴミ箱に重ねるのだが、昔のビジネスソフトはフロッピー数枚分もある。ソフトを起動するたびに、モーターが回って貴族のようにしずしずとフロッピーが排出されるのを何度も待つのにはイライラさせられた。

また、フロッピーを飲み込んだままフリーズしてしまうと、強制排出のためにイジェクト・ピンというものでFDDの近くにある小さな穴を突いてやらなければならない。ジョブズの主張した優美さの代償に、多くのユーザーがそんな苦労をしていたのだ。

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