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総合格闘技UFC 岡見、初の日本人王者へ「強さ見せる」

米国を中心に世界的なブームを呼んでいる総合格闘技大会の最高峰、UFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)。日本のエース、岡見勇信(30)が27日にブラジル・リオデジャネイロで開催される大会で、初の日本人王者に挑む。格闘技界の"メジャーリーグ"で日本人が頂点に立てば、快挙そのもの。岡見は「チャンピオンにならなければ何の意味もない。日本人の強さを見せたい」と固い決意で大一番に臨む。

UFC、名だたる強豪が続々参戦

UFCは1993年に米国で産声を上げた大会。「オクタゴン」と呼ばれる八角形の金網リングで、打撃も寝技もありの「何でもありの」戦いが繰り広げられる。反則などのルールは最小限しか定められず、「究極の格闘技」といわれる。

かつて日本でも、エメリヤエンコ・ヒョードル(ロシア)やミルコ・クロコップ(クロアチア)らが出場したPRIDEが2000年代に一世を風靡したが、07年に消滅。

総合格闘技界におけるUFCへの一極集中が進み、現在は世界の名だたる強豪選手が続々と参戦している。ボクシングをしのぐほどの人気があるUFCは、将来の五輪種目の採用を狙っているともされる。

ミドル級のタイトル挑戦

出場することすら難しいUFCの舞台で、勝ち続けるのは至難の業。海を渡った多くの日本人も、なかなか思うような成績を残せなかった。その中で、7つある階級の最激戦区の一つ、ミドル級(83.9キロ以下)のタイトル挑戦まで上り詰めたのが、岡見だ。

06年にUFCに参戦すると快進撃を続けた。日本ではほぼ無名に近かった岡見にとって、負けが込めばすぐに契約解除となる厳しい世界。当時を振り返り、「勝って自分の存在を証明しなければならなかった。1敗しただけでも、今後どうなってしまうのかと思った。(契約解除の)恐怖との戦いだった」と実感を込める。

試合運びは巧みだ。豪快なKO勝利もあるが、寝技に持ち込んでから主導権を渡さない安定した戦いが持ち味である。強豪相手に白星を積み重ね、昨年11月のドイツ大会のメーンでは10勝目(2敗)。ついに挑戦権をつかんだ。

新日本プロレスの入門テストを2度不合格

高校から始めた柔道は神奈川県大会32強が最高。卒業後に夢だったプロレスラーを目指したものの、新日本プロレスの入門テストを2度不合格となる憂き目を見た。

素質が開花したのは格闘技ジムの和術慧舟會(わじゅつけいしゅうかい)に入ってからだ。類いまれなる格闘技センスと187センチの恵まれた体格を武器に、相手を投げてから上をとり、パンチを振り下ろすスタイルで02年のデビュー以降は連勝街道をひた走った。

「自分は強いという感覚、変なプライドがなかったから逆によかったのかもしれない。毎日毎日練習するのがすごく楽しかった」という。

負けたときに、どう変われるか

デビュー8戦目となった03年のロシアでの大会で、相手選手に恐怖心すら覚えてTKO負けを喫した。それでも岡見の強みは、その敗戦をしっかり受け止めて、きちんと課題を修正して今後に生かせる点だ。

「こうすれば勝てたかとか、次からはこういう練習をしていこうとか、いい風に切り替えていく」。その姿勢はUFCに出場するようになってからも不変だ。

「特に負けたときは、その後、自分が変われるかどうか。変われなかったらまた負けるから」。自分の戦い方を改めるのは容易なことではない。それでも、岡見はさも当然とばかりに言い切る。

打撃、寝技、レスリング……。あらゆる競技が絡み合う総合格闘技。UFC発足当初の90年代は、試合内容は未成熟で野蛮な一面もあったが、最近はルールも整備され、競技として確立された。寝技などの細かい動き一つとっても、めざましいスピードで進化を遂げている。岡見も米国で練習すると肌で競技の進化を感じるという。

いかにリスクを減らして、自分が攻めるか

「日々考えて、新しいことにチャレンジして、向上心がないと、置いてきぼりにされる」。体幹を鍛え、打撃や瞬発力、寝技の細かい動きなど、一つ一つ磨いて成長を遂げた。

「理想の試合は」と問うと、岡見は次のように答える。「相手から一発ももらわずに攻め続けて、最後はKOか一本で取る(勝つ)というのが理想。いかにリスクを減らして、自分が攻めるか。それが本当に強い人だと思う。そこが究極の目標なんです、絶対に」

では、そのためにどうすればいいのか。「お互いにパンチを出して、当たった方が勝ちますという練習をしていたら強くなれない。いかに自分が先に当てるか、いかに自分が当てられない距離をとるか。そうやって自分が勝つ方法を見いだしていくのが、本当の練習だと思っている」。岡見の理想は一段も二段も、高いところにある。

防衛本能が備わっている

岡見の強さの秘密はどこにあるのか。UFCやPRIDEなどで活躍した高阪剛氏は「気持ちのブレがないのが岡見の強さ。平常心のまんま。UFCのタイトルに挑戦するという状況になっても、おごるところも気負うところもない。それは初めて出会った10年前から変わらない」と話す。

技術面については「防衛本能が備わっている。自分が攻めることのできる場所、逆に攻められない場所もよくわかっている。(試合中に)この場面でいってはいけないというときには、自分の形を崩してまで攻めていかない。攻撃面でも試合の組み立て方には信念を感じる。ジャブが正確で、相手の距離をつぶせる」と解説する。

岡見が今回挑むのは、ミドル級の"絶対王者"に君臨するアンデウソン・シウバ(ブラジル)だ。「最強の格闘家」の呼び声が高く、長いリーチを生かしたパンチやキックでKOを連発。UFCでは無傷の13連勝中と、圧倒的な強さを誇る。

5年前はシウバの反則で白星

実は岡見は5年前にシウバと一度戦い、勝ったことがある。ただ白星といってもシウバが反則行為をしたことによるもので、内容が伴っていなかった。

岡見はシウバ戦を「強くて、恐怖心があった。人間と戦っているというより、獣と戦っている感覚。気持ちの上でも負けていて、自分の中では完全な敗北というイメージしかない」と振り返る。

今回のタイトルマッチも下馬評では王者の優位は動かない。ただ、わずかな勝機を見いだして相手を寝かせ、岡見のペースに持ち込めるかがカギになる。

岡見は言う。「格闘技の素晴らしさや日本人の強さを自分が伝えられると思っている。総合格闘技を知ってもらう意味でも、自分が起爆剤になりたい」。一世一代の大勝負。勝利をつかめば、大きく道が切り開ける。

(金子英介)

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