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孫氏の後追う三木谷氏

「勝算がなかったら始めないでしょ。(なかったら)バカじゃないですか」。2月27日、スペイン・バルセロナで開催された世界最大の携帯見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)2018」。楽天の三木谷浩史(53)は講演直後の囲み取材で、携帯事業について問われた際、語気を強めた。

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楽天の三木谷氏は携帯インフラの構築を目指す(2月、スペイン・バルセロナ)=ロイター

MWCでの三木谷は上機嫌だった。講演では楽天の事業内容を説明、「(携帯電話の)ゲームチェンジャーになる」と息巻いた。前日に、日本で総務省が実施した携帯電話向け周波数の取得を楽天が申請。「第4の携帯会社」になるべく動き始めたのが、上機嫌の理由だ。

三木谷は携帯電話事業を何年も前から温めていた。楽天は12年に当時のイー・アクセスの買収を検討。14年には電波を大手に借りる仮想移動体通信事業者(MVNO)として「楽天モバイル」ブランドの格安スマートフォン(スマホ)事業を始めた。三木谷は「自前の電波でビジネスをするのがあこがれだった」という。その理由のひとつに、彼のビジネス上の"アイドル"、孫正義(60)の存在がある。

日本興業銀行(現みずほ銀行)時代、三木谷は孫のアドバイザーとして海外企業の買収に携わった。興銀を退職して楽天を興してからも、孫が通信インフラを手中に収め次々と事業を拡大する姿を横目で見続けてきた。

携帯電話事業はNTTドコモが新規参入企業と競った1990年代を攻防戦の第1幕、06年のソフトバンク(現ソフトバンクグループ)による英ボーダフォンの日本事業買収を第2幕、多数の格安スマホ事業者とNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3社が競う現在は第3幕といえる。

第3幕の主役は非通信企業の楽天だ。三木谷は通信と電子商取引(EC)、金融・決済などのネットサービスが融合した市場で勝負しようとしている。

「甘すぎる」。3月、楽天が総務省に提出した厚さ10センチメートルに及ぶ事業計画書を見た関係者はこうつぶやいた。仮に常識外れの低コストで通信インフラを整備できたとしても、ネットワークの常時監視やシステム保全の負担は重いからだ。

6000億円規模の資金調達額が「少ない」と批判される通信インフラへの投資額についても、三木谷は意に介さない。

「世界的に見ても、第4のキャリアは4G(第4世代)しかつくらない。だからバックボーン(基幹網)も効率的につくれる。大手3社にいたような経験値の高い技術者も集められる」からだ。

三木谷は「(携帯事業は)今までは先行者利益といわれていた。これからは後発者利益。過去の技術や遺産を引きずっていないことが強みといえる」とも指摘する。携帯の基地局の数や契約数を競うのではなく、通信を含めたサービス全体の勝負にゲームのルールを変えることで勝ち残るのが狙いだ。

楽天のECを軸とする会員数は世界で12億人。国内ECの流通総額の76%、訪問者の86%がスマホなどモバイル端末経由という。

ドコモなどが構築を急ぐ「携帯以外のビジネス」は楽天の本業。既に携帯電話で買い物をしたり、金融取引をしたりする契約者数を国内で9500万人抱えている強みがある。数字だけで比べれば、ドコモの契約者数は17年12月末時点で7500万人にすぎない。

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政治との関わりでも三木谷は特異な存在感を示す。1月末、三木谷が代表理事を務める経済団体「新経済連盟」の新年会。ゲストとして招かれた安倍晋三(63)は、ひとしきり官僚批判をした上で三木谷を持ち上げた。「ここにいるのはリスクをとる経営者ばかり。三木谷さんもリスクが大好きだ」

04年の楽天のプロ野球新規参入、12年の新経連立ち上げなどで三木谷がうかがわせる「政商」の側面を警戒する通信業界幹部は少なくない。

「当社はこれまで金融庁とよい関係を築かせていただいてきました。総務省さんともよくさせていただけるものと思います」。楽天幹部は2月の電波割り当て申請を前に、総務省幹部にこう語ったという。

リスクが大好きな三木谷の「次の一手」は何か。各社の警戒は続く。

(敬称略)

国民の2人に1人がスマホを持ついま、携帯電話サービスは暮らしに欠かせないインフラになった。攻防戦第3幕の主役に躍り出た楽天はどう動くのか。大手3社など競合企業は、いかに迎え撃とうとしているのか。

[日本経済新聞朝刊2018年3月19日付]

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携帯攻防第三幕

国民の2人に1人がスマホを持ついま、携帯電話サービスは暮らしに欠かせないインフラになった。攻防戦第3幕の主役に躍り出た楽天はどう動くのか。大手3社など競合企業は、いかに迎え撃とうとしているのか。

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