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欧州CL制覇…バルサは「伝説のチーム」になりつつある

編集委員 武智幸徳

今季のサッカー欧州チャンピオンズリーグ(CL)はスペインのFCバルセロナの圧勝で幕を下ろした。5月28日、英国・ロンドンで行われたCL決勝で、1-3で完敗したマンチェスター・ユナイテッドのファーガソン監督をして「私が対戦したチームの中で最強」と言わしめたバルサ。歴戦の名将が最高の賛辞を惜しまないくらいだから、われわれもこの偉大なチームと同時代に生きる喜びをもっとかみ締めた方がいいのだろう。

過去にも傑出したチームはあるが…

過去にもケタ外れの強さを誇ったチームはある。バルサの永遠のライバルで、CLの前身であるチャンピオンズカップを1955-56年シーズンから5連覇したレアル・マドリード。革命児クライフを擁し未来のサッカーを切り開いたとされるオランダのアヤックスも70-71年シーズンから同カップを3連覇した。

そのアヤックスと同時期に覇を競ったドイツのバイエルン・ミュンヘンも皇帝ベッケンバウアー、爆撃機ミュラーら傑出した個性を押し立てて73-74年シーズンから3連覇している。

フリット、ファンバステン、ライカールトのオランダ3人衆とバレージらイタリア代表組をサッキ監督がプレッシング・サッカーの旗印の下に融合させたACミランも1990年前後に栄華を誇った。現在のバルサはそれら「伝説」と肩を並べ、追い越しうる存在といえるだろう。

ケチの付けどころがほとんどない

バルサに参ってしまうのはケチの付けどころがほとんどないことである。あら探しにはそこそこ自信がある記者もバルサに限っては腕組みをしてうなるばかりだ。

例えば、これが「銀河系軍団」と呼ばれたころのレアル・マドリードだったらツッコミどころは満載だった。ジダン、ロナウド、ベッカムら超ド級のスーパースターを大枚はたいて買いあさったレアルには「カネの力にモノをいわせただけだろう」と言えた。

圧倒的な個の力を自由に泳がせて相手をたたきのめすレアルのスタイルも「世界最強のサークル」という感じで笑えた(それはそれで魅力的だったけれど)。成熟期から選手として晩年にさしかかるビッグネームが多くて意外にチームとしての賞味期限は短かった。

選手を自前で育てる

主要なポジションに当代随一とされる選手を配置する強化方法は補強に膨大な資金を要するからクラブ財政を危機にさらす、などなど……。

その点、バルサは健全だ。「カンテラ(石切り場の意)」と呼ばれる育成組織に投資を惜しまず、選手を自前で育てるポリシーを貫く。

現在のバルサの主役たち、スペイン代表の顔でもあるシャビ、イニエスタ、プジョル、ピケ、ブスケツ、ペドロ、そしてアルゼンチン代表のスーパースター、メッシもこのカンテラ出身。カンテラはプロ選手養成機関であると同時に教育機関の色も帯びていて、ごく自然な形でバルサへの忠誠心も刷り込まれていく。

他チームからのオファーがあっても

バルサへの愛と同時に培われるのがボールをチーム全体でキープし、テンポ良く動かして敵陣を崩すスタイルである。これには選手自身が一番の虜(とりこ)になる。その気持ちの良さはバルサで、あうんの呼吸が成立する仲間同士でプレーすることで保証されるから、長じてプロとなりバルサの一員になり、名声を得て高額なオファーがあちこちから舞い込むようになっても、ほとんどの選手が自ら進んで柵から出ていこうとしない。

これはチームを強化、維持、向上させていく上で、とてつもなく大きなアドバンテージだろう。

今季のバルサは国内リーグで38試合戦って2敗しかしなかった(30勝6分け)。2位のレアルも29勝5分け4敗と食い下がったが、あまりにも強すぎるバルサにリーグ3連覇をなさしめた。

得点95はレアルの102に劣ったが、失点21は断トツの少なさ(レアルは33)。ボールを保持して攻め続けることで相手の攻めの時間と機会を削り取るという「攻撃は最大の防御」を、どこを相手にしても実践できる唯一のチームが今のバルサである。

2敗は油断と疲れ

国内リーグの2敗は、開幕間もない昨年9月11日にエルクレス(2部降格決定)にホームで喫した黒星と、レアル・マドリードとのCL準決勝の死闘(4月27日と5月3日)の間に行われた4月30日のレアル・ソシエダ戦の黒星である。

完全に油断と疲れによるもので、今のバルサなら戦後初のリーグ無敗優勝も可能ではないか。

CLの方も1次リーグから決勝まで13試合戦って黒星はベスト16のアウェー戦でアーセナル(イングランド)に喫した1敗のみ。4月20日のスペイン国王杯決勝は宿敵レアル・マドリードに延長で敗れたが、これも試合内容は押していた。

バルサに勝つ方法はあるのか

無敵のバルサに勝つ方法はあるのか。それは世界中のクラブの会長や強化担当者や監督、選手が考えていることである。心情的にはアンチになりにくいチームだが、バルサの試合がほとんど一方的になるのを繰り返し見せつけられると「どこか、このチームをへこませるところは出てこないのか」と記者も思ってしまう。

サッカーだから、どこかがバルサに試合で勝てることはあるだろう。サッカーは最後にゴールにボールを入れないと得点にならない競技だから、相手のシュートミスに助けられ、こちらが起死回生の1発を入れれば勝つことはある。

そこにラグビーとの違いがある(シュートとトライという行為を比べたとき、行為として難しいのはもちろんシュートだ。ラグビーという競技に番狂わせが少ないのは得点につながる最後の行為がラインを越えてボールを置くだけという動作だからだろう)。

ただ、そうやって勝ってもバルサは「負けた」とは思わないだろう。「試合に負けただけでサッカーには勝っていた」と。実際、試合に負けたバルサの選手が一番口にするセリフがこれである。このチームに心底「参りました」と言わせるのは本当に至難の業だ。

シャビの高齢化の問題はあるが…

戦力的に考えたとき、プレーメーカーのシャビの高齢化という問題に早晩突き当たる。ここで一つのピンチを迎えるという見方があるが、これとて同じカンテラ出身で今はアーセナルにいるセスクを呼び戻せば解決できないことはない。

代えが利かないのはメッシだろう。CLでバルサが挙げた30得点のうち12点はメッシが挙げた。準決勝でレアル、決勝でマンUに見舞った強烈なパンチはメッシにしかできない芸当だった。ボールポゼッションで相手を圧倒した上、仕上げのところに最高の選手がいるのだから鬼に金棒である。

手段を問わずということであれば(ピッチの中では手の施しようがないので)、そのメッシをバルサから強奪できれば、バルサに大きなダメージを与えることができる。

メッシはバルサにいるメリット知る

サントスから出ようとしないブラジルの王様ペレに白紙の小切手を用意したクラブがかつてあったといわれるが、現在なら中東資本の入ったどこかのクラブが天文学的な移籍金を積んでバルサから連れ出すことができれば、がぜん状況は変わってくる。

ただ、これも望み薄に思えるのは、メッシ自身がバルサにいるメリットを骨の髄まで知っているからだ。「なぜ、バルサではできて、アルゼンチン代表では同じことができないのか」とはメッシになされる最大の問いだが、答えはその質問の中に入っている。「バルサだからできる」のである。

メッシがそのメリットを享受しているうちは、バルサから出ることはない。ということは、バルサの栄華も続くのではないだろうか。

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